「三番瀬埋め立て見直し計画案」の作成で

8団体が要請書を堂本知事に提出

〜埋め立て思想との決別も求める〜




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 堂本千葉県知事がシンポジウムを2回開いただけで三番瀬埋め立て計画見直し案を作成し、9月県議会に提示しようとしている問題で、千葉県内の8団体は2001年8月7日、要請書を知事に提出しました。
 要請書は、わずか20日間くらいで見直し計画案を作成するのは拙速であること。専門家や関係団体・住民などの参加のもとに慎重かつ十分な検討を行うこと。県環境会議や各種委員会で慎重な審議を進めること。従来の埋め立て思想と決別し、わずかに残された干潟・浅瀬はこれ以上埋め立てたりつぶしたりしないこと。──などを求めています。




 

8団体による要請書



2001年8月7日

 千葉県知事 堂 本 暁 子 様

千葉の干潟を守る会
三番瀬を守る会
市川三番瀬を守る会
三番瀬を守る署名ネットワーク
市川緑の市民フォーラム
千葉県野鳥の会
真間川の桜並木を守る市民の会
千葉県自然保護連合


「三番瀬埋め立て見直し計画案」の作成に関する要請書

 ご就任以来、県民との対話などに努力されていることに敬意を表します。
 さて、新聞報道によりますと、知事は、三番瀬埋め立て問題について、シンポジウムを2回開いて住民の意見を聴き、9月県議会に見直し計画案を示す方針を明らかにしたとのことです。
 私たちは、この方針は重大な問題を含んでいると考えています。あまりにも拙速な計画案作成であり、また、関係団体や専門家などの意見が十分に反映されないことや、県環境会議の見解・アピールを無視していることなどです。
 そこで、この方針を見直し、専門家や関係団体・住民などの参加のもとに慎重かつ十分な検討を経て三番瀬の保全策を作成されるよう、下記のとおり要請します。

  1. 三番瀬保全策の検討は期間を十分にとってじっくり進めてください。

     わずか2回のシンポジウムを開き、その後20日間ぐらいで見直し計画案をまとめて県議会に提示するというのは、あまりにも拙速です。暴挙といっても過言ではありません。
     しかも、シンポジウムの開催案内は、新聞とホームページによる発表だけで、県の広報紙『ちば県民だより』には掲載されていません。これでは、県の方策が県民にただしく伝わらず、公正を欠くものです。
     また、シンポジウムの第1回(8月23日)は、意見発表者を公募により20人選ぶとしています。意見発表の申込みが20人を超える場合は、無作為抽選によって選ぶとのことです。第2回(9月7日)は学識経験者や地元市の代表者などがパネルディスカッションをおこなうとのことですが、その直後に見直し計画案をまとめることになります。
     こんなやり方でまともな計画案がつくれるのでしょうか。たとえば、日本における環境アセスメント研究の第一人者である原科幸彦・東京工業大学教授は、「千葉の干潟を守る会」創立30周年記念行事講演会(6月9日開催)で、公共事業などの計画作成にあたっては「きちんとした環境アセスメントが行われることが必要だ」と述べ、三番瀬問題について次のように指摘しました。
       「堂本千葉県知事は、三番瀬の保全策を検討する場として『住民会議』の設置を表明しているとのことだが、保全策の検討は期間を十分にとってじっくり進めてほしい。1年以上は必要だし、場合によっては10年ぐらいかかってもよい」
     こうした視点からみて、今回の方針はあまりにも拙速すぎます。三番瀬は千葉県の大切な財産です。拙速は禁物です。今回の方針を見直し、原科教授が言われるように、期間を十分にとって熟慮のうえ保全策を検討してください。何年かかってもよいのです。



  2. 広範囲の関係者の参加を得て保全策を検討するともに専門家や関係団体・住民などの参加のもとに慎重かつ十分な検討ください。

     長期間にわたって埋め立て計画を審議してきた県環境会議は、今年3月27日に沼田前知事に「見解」を提出するととともに、「東京湾の環境保全に向けたアピール」を発表しました。「見解」では、現行の埋め立て計画にさまざまな配慮や課題を課しています。また、アピールは次のように述べています。
       「三番瀬全体に対する恒久的な環境保全のため、東京湾全体も視野に入れて当該海域の自然環境の保護・保全等に関する総合的な計画の作成を住民を含めた広範囲の関係者の参加を得て検討するとともに、三番瀬を中心に自然変動とその要因に関する基本的データの集積に向けて継続的な調査を実施していくことが望ましい旨の認識に至った」
       「東京湾は、広範な湾岸域を有し、人や生態系等との複雑な関わりを持ち、また経済活動などを通して多様な利用が図られており、その環境保全については、東京湾岸全体の問題として取り組んでいくことを望み、ここに表明する」
     現行の埋め立て計画をいったん白紙にし、新しく計画をつくりなおすのであれば、環境会議のアピールなどを尊重し、広範囲の関係者の参加を得て、そして期間を十分にとって検討をすすめるべきです。また、東京湾全体も視野に入れて保全策を検討すべきです。そして、新たな計画案をいきなり県議会に提示することはやめ、環境会議などで審議しなおすべきです。沼田前知事もそのようにしました。
     環境会議などを無視し、いきなり県議会に計画案提示ということになれば、沼田前知事にも劣る暴挙を犯すことになります。



  3. 初心をつらぬき、埋め立て計画そのものの白紙撤回を検討され、また、真の住民参加を実現してください。

     堂本知事は選挙期間中、埋め立て計画の白紙撤回を公約しましたが、それは埋め立てそのものを中止するようなニュアンスでした。有権者や支援・支持者もそのように受け止めていました。だからこそ、埋め立て中止を求める多くの県民が堂本知事を応援したり支持したのです。ところが、いまは「現行計画はいったん白紙にしたうえで、見直し計画案をつくる」と述べています。それなら、選挙公約でそうはっきり言うべきでした。
     知事は5月25日、新たな計画をつくるために「住民会議」を設置すると表明しました。「住民会議」ではさまざまな考えをもった市民団体、漁協、企業、行政担当者らが一つのテーブルで議論し、今後の三番瀬の保全計画づくりにつなげる、とされていました。5月20日の県議会では、「自然の保全と里海の再生を目指す新たな計画を住民参加でつくる」(朝日新聞、5月22日)と述べました。また5月21日の朝日新聞のインタビューでは、「理想に近づくよう、住民参加のプロセスをつくっていく」と語りました。
     6月下旬になると、「住民会議」はシンポジウムのこと、とされました。シンポジウムも、当初は5回ぐらい開くと言われていたのが、2回に減ってしまいました。
     このようにどんどん後退していますが、こうした姿勢は問題だと思います。初心をつらぬき、埋め立て計画そのものの白紙撤回を検討され、また、きちんとした住民参加を実現されるよう強く要望します。
     


  4. わずかに残された干潟・浅瀬をこれ以上埋め立てないでください。

     私たちは、4月26日に提出した「三番瀬の自然環境の保全に関する要望書」のなかで、次のことを知事に要望しました。

    • 従来の埋め立て思想と決別し、わずかに残された干潟・浅瀬はこれ以上埋め立てたりつぶしたりしないこと。
    • 猫実川河口域は生物多様性が豊かな海域なので、そこを「汚い」などといって安易に埋めないこと。
    • 三番瀬の保全策としては、浚渫跡を埋めもどしたり遊休埋め立て地を海にもどすことをまず考えるべきであり、直立護岸の解消策としては、後ろをけずって傾斜にしたり階段護岸にするなどの方法を検討してほしい。
    • 自然の干潟と浅瀬をつぶして人工干潟(海浜)を造成することは、全国各地で造成された人工干潟の生物相が貧困であることや、人工干潟の砂の流失、必要な土砂を確保するために別の環境破壊を発生させる恐れ、などの問題があるのでやめること。

     三番瀬保全策の検討を進めるにあたっては、こうした私たちの要望を再度ご考慮くださるようお願いします。
     なお、8月3日付けの『北海道新聞』によれば、環境省は来年度から、公共工事などで失われた生態系を回復させる「自然再生型公共事業」に乗り出す方針を固め、2002年度予算の概算要求に100億円程度の事業費を盛り込むとのことです。そして、モデル事業として、東京湾などで利用の進んでいない埋め立て地を干潟として再生させる事業などを予定しているとのことです。こうした自然回復の流れをご配慮くださり、三番瀬についても、「埋め立てによって海域を減らす方向での再生や復元」は厳に慎み、後背地の遊休埋め立て地を原風景にもどすことを基本にして保全策を検討してくださるようお願いします。

以上







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