堂本千葉県知事に面会し、

三番瀬の自然環境保全を要望

〜県内の5団体〜




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 東京湾奥部に残る貴重な干潟・浅瀬「三番瀬」の保全を求めて運動している千葉県内の5団体は2001年4月26日、堂本県知事に知事室で直接会い、以下の要望書を手渡ししました。
 要望書では、従来の埋め立て思想からの決別や、全ての情報の公開、そして研究者、市民を含めた保全のための検討委員会設置、ラムサール湿地登録の働きかけなどを求めています。




 

5団体による要望書



2001年4月26日

 千葉県知事 堂本暁子 様

千葉の干潟を守る会
三番瀬を守る会
三番瀬を守る署名ネットワーク
千葉県自然保護連合
市川緑の市民フォーラム


三番瀬の自然環境の保全に関する要望書

 新緑の美しい季節を迎えましたが、新知事におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、三番瀬埋立て計画の「白紙撤回」を公約のひとつとして掲げた新知事の就任を私たちが歓迎していることは、すでにお伝えした通りです。そこで、今回は三番瀬埋立て問題を今後どのように考え、具体的に何を進めていくべきかということについて、私たちの意見を述べさせていただきます。堂本知事におかれましては、この意見を県民の要望ととらえ、今後の政策に生かしていただきたいと考えております。


1.千葉県環境会議の見解書をどうとらえるか

 堂本さんが当選された直後に、千葉県環境会議は千葉県の見直し計画案(最終計画案)に対する見解書を提出しました。この「見解書」が埋立て計画を容認するものなのかどうかという点については、新聞各紙の評価は異なっていました。確かに、埋立て計画を推進したいと考えていた沼田前知事のもとで、環境会議は最大限の努力をされたと考えられますが、見解書の本文が「玉虫色」となったことは否めないと思います。しかし、それでも「事業が必要最小限度であるかどうか精査が必要」と指摘していますし、見解書の最後に添付された各委員の意見を読めば、見直し計画案も三番瀬の干潟と浅場に少なからず悪影響を及ぼすもの、つまりこの計画をそのまま受け入れることはできないことを表明したものであるととらえることができると考えます。


2.従来の「埋立て」という発想との決別を

 千葉県が3年以上もの時間と、6億円以上のお金をかけて実施した補足調査の結果から考えても、千葉県環境会議が下した結論は当然のことと考えます。私たちは、補足調査の結果を踏まえ、9割以上の干潟浅瀬の失われた東京湾では、少なくとも陸域の問題を解決するために「埋立て」を行うという従来の発想と決別し、三番瀬や東京湾奥部の自然環境の再生を考えるべきときに来ていると思います。「自然と共生する埋立て」あるいは「三番瀬を再生させるための埋立て」という言葉に惑わされないで欲しいと考えます。
 ただし、私たちも過去に浚渫して深くなってしまった海域や人工澪については、それらを埋め戻していくことは必要であると考えていますし、市川側の直立護岸は三番瀬の海域を狭めることなく解消し、生態的にも機能が高く、かつての東京湾を彷彿とさせる「干潟、ヨシ原、湿地」などに復元していくべきであると考えています。したがって、いわゆる「埋立てにより海域を減らす方向での再生や復元」は厳に慎むべきであると思います。
 岩波新書「日本の渚」の著者、京大助教授の加藤真氏が去る4月21日、千葉の干潟を守る会主催の講演会で述べた結びの言葉を銘記させていただきます。堂本知事が今後の政策を検討する上で参考になれば幸いです。「人間の側から見た環境は再生可能かもしれない。しかし、生物の側の生態系や多様性は、一旦破壊されたら回復は不可能である」


3.猫実川河口域は死んだ海域か

 猫実川河口域について、「ヘドロが堆積している」「悪化した海域でそれが広がっている」など、三番瀬の他の海域に比べ、残す意味のない海域であるかのように宣伝されていますが、補足調査では、三番瀬の生態系の中で欠くべからざる一定の役割を持った海域であると述べられています。浄化能力は他の海域に劣りませんし、この海域で発生するドロクダムシ等の底生生物がいろいろな稚仔魚の餌になっていること、スズガモ等の採餌場、休息場になっていることなどがそれを証明しているのです。もともと「汚いから埋めて良い」という自然を差別するような言い方は、人間の側から見た主観的なもので、自然は多様であり自然の中にはきれいな部分もあれば汚い部分もあり、それぞれが生態的には重要な役割を果たしている、すなわち、環境の多様性があってこそ生物の多様性が成り立つということを忘れてはならないと思います。


4.人工干潟、人工海浜は有効な再生の方法か

 今ここにある三番瀬の浅瀬と干潟に砂を入れて、人工干潟や人工海浜を造成して、三番瀬の自然環境を再生させたいとする考え方があります。確かに今の三番瀬は過去の三番瀬から見て変化しているのは事実ですが、それでも自然の干潟と浅瀬をつぶして人工干潟や人工海浜を造成することは、今の生物学で得られた知識から考えても「有効な方法」とは言えません。各地で造成された人工干潟の生物相が貧困であることや、人工干潟の砂の流失問題、必要な土砂を確保するために別の環境破壊を発生させる恐れなど、現状ではリスクが大きすぎるのではないでしょうか。東京湾奥部の自然環境を復元しながら、同時に市民のパブリックアクセスを確保し、さらにより良い漁場としていくためには、現状の干潟と浅瀬に手をつけるべきではないと考えます。


5.「白紙撤回」表明後の展開

 堂本知事には、一日も早く見直し計画案について「白紙撤回」を再度表明していただきたいと考えます。「子孫に残す」ことにこそ、積極的な大きな意味があります。その上で、三番瀬及び東京湾奥部の自然環境の復元について、その具体策を検討することを県民に、そして日本全国に向かって宣言して欲しいと思います。具体策の中身は、補足調査でも不足している三番瀬の現況調査を行うこと、そして、全ての情報を公開することを原則として、復元のために研究者、市民を含めた検討委員会を設置すること、すでに各国で行われている「埋立て地を海に復元する活動」に関する県民のためのシンポジウムを開催すること、国に対して首都東京の身近な海「三番瀬」をラムサ−ル登録地とするよう働きかけること、また、ラムサール湿地「谷津干潟」をはじめ、行徳鳥獣保護区、木更津盤洲干潟とあわせて千葉県側の保全と利用の策を講じること、さらに、東京湾全体の環境保全策をたてるべく東京都、神奈川県にも協力を求め、国には資金提供も含めてこれらの政策を積極的にバックアップするよう要請すること、などを進めていくことではないでしょうか。


 以上、意見であると同時に堂本知事に対する要望であると受け止めていただき、今後の三番瀬の自然環境の保全と復元のための政策に生かしていただきたいと存じます。
 なお、市川緑の市民フォーラムが1999年12月に千葉県と市川市に提出している「三番瀬の自然環境の保全と市川臨海部のまちづくりについての市民提案」を添付します。この中では、千葉県や市川市などの行政と私たち市民が取り組むべき具体策を、「超短期的」から「長期的」というふうに期間に分けて提案しています。参考にしていただければ幸いです。




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