新知事 堂本暁子さんに

〜三番瀬を子どもに残すために〜

三番瀬を守る署名ネットワーク 代表 大浜 清



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 (2001年)3月25日の千葉県知事選挙で当選された堂本暁子さんへ、三番瀬埋め立て反対運動をつづけている「三番瀬を守る署名ネットワーク」の大浜清代表が手紙をだしました。









 堂本さん、御当選おめでとうございます。
 私たちは、金権千葉と言われ、利権や種々の権力のしがらみがしみついた長年の保守県政から解放される日を待っていました。市民は自分たちの手で千葉県の歴史のべージをめくる期待をもやしています。
 あなたは当選第一声に「三番瀬計画白紙撤回」と公約して下さいました。
 戦後延々と続いた開発行政によって山も海もキズだらけとなり、空も水も汚れ、ひたすら金に換えられてゆくこの地を、私たちは痛ましい思いで見つめ、ふるさとを守ってくれる県政を望んで運動してきたのです。
 あなたは「対話」をモットーとして掲げ、市民の心をとらえました。市民はそれを信じてあなたを選びました。市民はどんな知事がほしかったのでしょうか。それは統治する側の代表としての知事ではなく、統治をゆだねる側の代表としての知事です。行政という統治機構を県民の願いを実現する場にしてくれる人です。
 堂本さん、あなたは市民の期待と願望によびかけることができました。障害は大きいでしょうが、その期待と願望を実現する知事になって下さい。そのような政策の担い手こそ、千葉県民は待ち望み、支持してゆくのです。

 三番瀬のことをお話ししましょう。
 「三番瀬」は古来、漁師たちが呼んできた東京湾の奥の海の中の地名の一つです。周りの地名はあらかた埋め立てによって消え、埋め立て地の地名にさえなってしまいました。  私たちは、残された海を埋めつくそうとする「市川二期・京葉港二期地区計画」に反対して、この海を守りぬいて子孫に残したいという気持ちをこめて「三番瀬を守ろう」と呼びかけました。ですから、「三番瀬」という名は単に一点の地名ではありません。漁師から学び、受けついだ祖先からの伝統的遺産であり、未来への意志表示なのです。
 お役所は「三番瀬」という名を使いたがりません。「市川二期地区・京葉港二期地区」とよぶか「三番瀬」とよぶかは、立場の選択だからなのです。

 県環境会議は3月27日に見解を発表しました。その文脈は、この計画に関して、さらに環境保全についての配慮と所要の措置を求めています。
 まず自然環境への配慮については、「今後、事業を進めるに当たっては」という前提で「更に次の配慮が必要である」(以下略)と述べています。
 しかし、土地利用の必要性については、「三番瀬の一部を埋め立ててまでも実施しなければならない必要最小限のものであるかについて、精査した上で事業計画を立てる必要がある」とのべたうえ、「街づくり支援用地」「下水終末処理場」「第二湾岸道路」「公園緑地」のそれぞれについて問題点と疑問をあげています。
 一見、玉虫色の文章です。しかし、これは本来、逆に読むべきです。「この計画は本当に必要なのか」、また、ここには触れていませんが、「計画実施に要する莫大な費用と年月は、はたして県政にとって妥当なのか」、そのうえで「これ以上自然を失ってもよいか」と。
 「白紙撤回」ということは、「もし、これから改めて101ヘクタールの埋め立てを構想するとしたら、それは許されるだろうか」と考えることです。

 私たちが集めた27万人署名者の願いは、簡単明瞭です。「今ある自然をこれ以上傷つけず子孫に残したい」「今ある干潟を魚にも貝にも鳥にも残し、何時までもおいしいノリを味わいたい」。そのためには、必要最小限の自然でなく、ゆとりある自然を残さなければなりません。このことこそ、ラムサール条約が目ざす湿地保全であり、そのワイズユース(賢明な利用)です。私たちは、やがて三番瀬を名誉あるラムサール登録湿地に加えたいと思います。

 沼田知事は、三番瀬計画にあえて結論を下さず去りました。そのことは県環境会議設置とともに次の知事への置き土産と評価すべきでしょう。
 しかし、彼は種々の問題をも残して去りました。まずは利権構造です。
 その一つに、沼田知事の下で19年前に行われた行徳漁協への事実上の漁業権補償事前バラマキ──「転業準備資金融資」問題があります。
 県・漁協・金融機関の密約「三者合意」にもとづく、企業庁予算からの利息支払いについて、私たちは不当支出であると、沼田知事と中野企業庁長を相手どって「支出差し止め」および「損害賠償請求」訴訟をおこしています。新年度予算にも利息支払いはひきつづき計上されており、これも堂本さんに押しつけて、沼田さんは行ってしまいました。元金処理は放置したままです。
 埋め立てを前提としたこの支出は根本的に改め、漁業支援のためのものとすべきです。
 私たちはこの問題の責任をめぐって新知事とまで争いたくはありません。

 「三番瀬白紙撤回要求」のかたわら、私たちはそれを実現するための代替案を勉強しました。そして、埋め立ての土地利用計画は本来、陸域で行うべきものであったこと、埋め立てはやめると決心した時にこそはじめて、陸域の国土計画、都市計画もまた、子孫に残すにふさわしい計画にと改革してゆく出発点になる、と確信するに至りました。
 私たちの代替案は、すでに県および環境会議へ数次の意見として提出してあり(三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県自然保護連合、千葉の干潟を守る会、市川緑の市民フォーラム、三番瀬を守る会などの連名で)、環境会議の見解にもある程度反映されています。
 また、「ミチゲーション」「人工海浜」については、三番瀬破壊の偽装あるいは抱き合わせ計画として反対しました。「干潟の再生」についても白紙撤回、完全保全が前提であると主張し、これまでの破壊を修復する方向で考えるべきである、自然の摂理、自然の力、自然のリズムに依拠すべきである、人間の利用の仕方は謙虚で自然条件に則した多面的なものでなければならない、と唱えてきました。これについても市川三番瀬に関する提案などを行っておりますが、白紙撤回後はさらに具体的な提案と話し合いが可能となります。

 堂本さんが最初、「三番瀬計画白紙撤回」を打ち出すことをためらわれたのは、千葉県政の力関係を顧慮なさってのこととお察しします。しかし、立候補後ただちに「白紙撤回」を掲げられたのは、県民の願いの強さを敏感に察知なさり、それを取り入れられたからではないでしょうか。
 たとえば、私の所に「堂本さんは本当に三番瀬を守ってくれるのだろうか」という問い合わせが九十九里の農民の方からありました。堂本さんのお手元にも行ったかと思います。私はこの方に、公開質問状への御回答を送りました。
 県議会や県庁内部とは、柔軟にねばり強く、しかし筋を通した話し合いをなさって下さい。その姿勢と内容が県民を納得させる限り、たとえ他の面で批判することはあるとしても、県民はあなたをささえるでしょう。
 川口順子環境大臣も、三番瀬保全への協力を約束してくれています。
 私たちは長い間、「これはあなた方が選んだ議会によって決められたことだ。これに従うのが民主主義だ」と言って退けられてきました。しかし、少数でも正しいと思うことを述べ、その実現に向かって屈しないことは、民主主義の基本ではないでしょうか。
 すべては変わる、変えられる、と信じます。

  2001年4月


 






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