ヘドロと三番瀬

三番瀬を守る会 田久保晴孝



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 市川市は、さきごろ出版した『三番瀬の再生に向けて──地元市川市の挑戦』の中で、あいかわらず、三番瀬の猫実川河口域(浅海域)はヘドロ状になっていると述べています。これは事実と違っており、間違いです。この問題についてふれます。


■ヘドロはどうしてできる

 ヘドロは浮泥・軟泥の黒くブヨブヨとしたかたまり(主に有機物のかたまり)です。硫化水素やメタンガスのにおいがして、嫌われものになってます。
 河口では、陸から固形の有機物、水にとけている有機物、小さなかたまり状(コロイド状)になっている有機物や粒子の小さな粘土が流れこんできます。水に溶けた有機物は、海水と混りあうことで、粘土といっしょの固まりとなって底に沈殿しでいきます。この粘土を含んだ有機物のかたまりがヘドロの元になっています。流れのある場所や酸素が十分にある場所ではヘドロになりません。
 酸素が十分にある場所(干潟や浅海域)では、有機物は好酸素菌(細菌などの分解者)によって分解され、水や二酸化炭素などの無機物になります。有機の窒素化合物は分解され、無機の窒素化合物や窒素ガスになります。また、有機物を含む泥は、動物プランクトンや魚などの餌になります。
 しかし、有機物が多すぎたり、酸素が不十分だったりすると、有機物は嫌気性細菌によってゆっくり分解されることになります。そうすると、さまざまな有機酸や硫化物がつくられます。硫化菌によって硫化水素(たまごのくさった臭いで、有毒)やメタン菌によってメタンガスがつくられます。そこは酸素がないため、動物の生息に不適な環境です。
 ヘドロは、生下水などが流れこむ場所(多量の有機物がある)や、光がとどかない深みのある場所で発生します。


■猫実川河口域にはヘドロ状の区域はない

 東京湾では、下水道などから多量の栄養塩類が流れこんでいるので、春から夏にかけて多量の植物プランクトン(赤潮)が発生します。赤潮によって数メートル以下は光がとどかなくなり、植物(プランクトンや海藻)が育たなくなります。そして、酸素が不足するため、底にたまったプランクトンの死骸などの有機物は分解されずにヘドロ状態になります。
 ところが、干潟や浅瀬は、酸素が十分にあり、多種多量の生物が生息しているため、ヘドロにはなりません。東京湾では、この浄化力がある干潟と浅海域が2万5000ヘクタールも埋め立てられてしまいました。また、埋め立て地を造成するときに海底土砂をとった巨大な穴が埋立地の地先に広大にあり、この穴には貧酸素水(青塩の元)とヘドロがたまっています。
 ヘドロの海といわれている三番瀬の猫実川河口域は泥干潟です。この海域は、一部の澪筋(みおすじ)の深みを除くと、ヘドロ状の区域はありません。むしろ、巣穴を3メートルも掘るアナジャコが1平方メートルあたり50匹以上生息し、三番瀬の中でも特に浄化力が高い地域と考えられます。
 水槽の中のヘドロ状(臭いがする黒い軟泥)を少しとってビーカーに入れ、海水を少し入れて日光にあてて一日おくと、泥の表面が緑色になり、臭いもしなくなりました。これは、有機物が好酸素菌に分解され、植物プランクトンが増えて酸素を多量に出したためです。
 よく行われるヘドロの浚渫(しゅんせつ)は、根源的な解決にはなりません。深みをつくるために、有機物が再びたまり、酸素不足でヘドロ状になってしまいます。そうではなく、入りこむ有機物の量を減らすことや、光が底まで通るほどに浅くすること、さらに水の流れをつくることによって、解決できます。

(2003年5月) 





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