「人工海浜(干潟)にすべき」の大合唱

〜東邦大シンポジウム「三番瀬の環境再生計画」〜

高木信行


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 東邦大学理学部環境科学シンポジウム「三番瀬の環境再生計画」が(2006年)3月18日、市川市内で開かれました。
 内容は予測どおりでした。猫実川河口域(三番瀬の市川側海域)に砂を入れ、人工海浜(あるいは人工干潟)にすべき、の大合唱です。


■市川市は三番瀬の人工海浜化をめざしている

 まず、あいさつにたった田草川信慈氏(市川市の三番瀬担当幹部)がこう述べました。
     「三番瀬はジリ貧の状況になっている。漁場環境も悪くなっているので、海を離れる漁業者があとをたたない」
     「市川市はこの5、6年、かつての三番瀬をとりもどし、市民が海にふれあえるようにするため、三番瀬再生(人工海浜化)のとりくみをつづけている。堂本知事とも、お互いに“里海の再生”をめざすということを確認してある」
     「しかし残念ながら、県の方は、円卓会議や再生会議で何年も議論されているが、いっこうに進まない。きょうのシンポジウムでは、専門家の間で科学的な議論がされるということなので、期待している」


■「人工干潟をつくれば環境学習になる」

 風呂田利夫氏(東邦大学教授)も、砂を入れて人工干潟にすべきを何度も強調しました。
     「いまの三番瀬の環境は弱っている。手を入れなければダメになる」
     「行徳野鳥保護区には、土砂の流出により“非意図的人工干潟”ができているが、ここにはカワアイやオキシジミなどの希少種やアナジャコが生息している。また、葛西人工干潟の東なぎさは生物保護のために立ち入り禁止になっているが、そこにはたくさんの生物が生息している。このように、人工的に手を加えることにより、干潟特有の生物が生息するも可能になる。三番瀬の議論で欠けているのは、こういうことの検討である。人工干潟をつくることについては、感情的な抵抗がある」
     「三番瀬円卓会議や再生会議では、石積み傾斜護岸が提案されているが、これよりは葛西人工干潟のようなものをつくったほうが優れている」
     「三番瀬の市川側は、人が海に立ち入れないようになっている。人工干潟をつくれば、海に立ち入れるようになり、環境学習になる。また、後世のための人材育成にもなる。人工干潟をつくることが目的ではなく、それを活用し、人材を育成することが大切である」


■「生物多様性が高いことが健全な生態系ではない」

 柿野純氏(千葉県水産総合研究センター)も、持論の人工干潟必要論をなんども強調しました。
     「(猫実川河口域は)潮汐流の流速が遅いため海水が停滞している。このため、市川側海域では品質の良いノリが作れなくなっている。海水交換を促進するためには、(猫実川河口域で)大規模な人工干潟をつくることが必要だ」
     「種の多様性が高いことが必ずしも健全な生態系ではない。漁業が安定して行われるような、かつての三番瀬にもどすべきだ。そのためには人工干潟をつくり、ノリやアサリなどの漁業振興をはかるべきだ」


■「市民が海にふれあえるようにするため、人工海浜をつくるべき」

 西村幸夫氏(東京大学教授)は、市川市主催「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」の座長を務めています。懇談会で猫実川河口域の大規模な人工海浜化を合意させた立役者です。
 そんな立場から、市民が海にふれあえるようにするため人工海浜をつくるべき、と主張しました。

(2006年3月)





《シンポジウムの概要》

 東邦大学理学部環境科学シンポジウム「三番瀬の環境再生計画」   〜沿岸環境関連学会連絡協議会ジョイントシンポ〜  日 時:2006年3月18日(土) 10:30〜16:00  会 場:グリーンスタジオ      (市川市生涯学習センター メディアパーク市川内)  司 会:東邦大学理学部生命圏環境科学科 助教授 朝倉暁生  パネリスト:   ・風呂田利夫  東邦大学理学部 東京湾生態系研究センター教授   ・柿野  純  千葉県水産総合研究センター 東京湾漁業研究所所長   ・吉田 正人  江戸川大学社会学部環境デザイン学科 助教授   ・西村 幸夫  東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻教授  討 論:三番瀬の干潟環境修復計画      三番瀬の環境保全修復、三番瀬の活用と管理体制において、講師間での     意見の相違を明らかにしたうえで、埋立地の海域への復帰、護岸堤の構造、     三番瀬の干潟再生について、東京湾生物と生態系保全ならびに三番瀬の環境     資源としての社会的活用と管理計画について社会的合意形成を目指した議論     を行う。





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