鳥類の保全と鳥類標識調査

〜千葉県野鳥の会が40周年記念講演会〜




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 「千葉県野鳥の会」(富谷健三会長)は(2014年)1月25日、「鳥類の保全と鳥類標識調査」と題した40周年記念講演会を習志野市菊田公民館で開きました。

 講師は山階(やましな)鳥類研究所の尾崎清明副所長です。尾崎さんは、研究所で保全研究室(鳥類標識センター)の総括をしています。長きにわたり国内外の鳥類標識調査(バンディング)にとりくんできました。また、アホウドリやヤンバルクイナなどの希少鳥類の生態調査と保全にかかわっています。

 鳥類標識調査は、国際的なネットワークのもとで鳥類の渡りなどを解明し、鳥類の保全を推進することを目的としています。
 方法はこうです。野鳥の一羽一羽を識別するため、記号や番号のついた標識(足環)を鳥につけて放します。その後、標識のついた鳥を見つけ、標識を確認することによって、鳥の渡りの実態や寿命などについて正確な知識を得ます。
 足環の材質はアルミとのことです。鳥への負担を少なく、さびにくいからです。


◆全国で毎年約15万羽を標識放鳥

 鳥類標識調査は、1924年に農商務省によって始められました。1943年に戦争で中断されるまでの20年間に約31万7000羽が標識放鳥され、約1万5000羽が回収されました。戦後は、1961年から農林省が山階鳥類研究所に委託して事業を再開です。1972年以降は環境省がこの事業を受けもち、山階鳥類研究所へ委託しています。

 1961年から2012年までに約520万羽が標識放鳥され、約3万3000羽を回収。最近では、全国で毎年約15万羽を標識放鳥しています。これまでわからなかった日本の渡り鳥の行き先や渡りのコースなどが次第に判明しているそうです。鳥種の増減傾向もわかっています。

 尾崎さんは、標識調査で判明したことや海外の標識標識調査などをくわしく話してくれました。また、福島第一原発事故以降の福島での標識調査のとりくみも教えてくれました。

 標識調査を担っているのは鳥類標識調査員(バンダー)です。調査員は、鳥類の識別について十分な知識を持ち、野鳥を安全に捕獲して放鳥する技術を身につけているとして認定された方々です。全国で約450名のバンダーがボランティアとして活躍しているそうです。

 今後の課題として、@国内外での調査空白地域の解消、A周辺国での調査の活性化、Bバンダーの育成、Cデータベース化と解析の促進──などをあげました。


◆渡り鳥の渡来地保全は眼中にない千葉県

 尾崎さんの話を聞いて思ったのは、鳥類標識調査の結果や調査員たちの努力がどれだけ稔っているのか、ということです。

 鳥類標識調査によって渡り鳥の詳細なコースが判明しつつあります。渡り鳥が渡来する湿地(干潟や湖など)の重要性も明らかになっています。ところが、行政は渡り鳥が渡来する湿地をどんどんつぶしています。

 たとえば千葉県です。県は1950年代以降、渡り鳥の渡来地である東京湾の干潟をかたっぱしから埋め立ててきました。その姿勢はいまも変わりありません。

 三番瀬は、東京湾奥部に残る唯一の自然干潟・浅瀬です。埋め立て反対運動の高まりにより、2001年9月に埋め立て計画が白紙撤回になりました。しかし、千葉県は三番瀬に第二東京湾岸道路を通すことをあきらめていません。この道路を通すため、三番瀬の人工改変(人工干潟造成)をめざしています。県議会の答弁では三番瀬の新たな埋め立ても否定していません。

 三番瀬は日本有数の渡り鳥の飛来地です。そこを人為的に改変すれば渡り鳥が減少します。でも、千葉県政は相変わらず開発優先です。渡り鳥の渡来地保全など眼中にありません。

 こういう問題については話を聞くことができませんでした。





「鳥類の保全と鳥類標識調査」と題した千葉県野鳥の会40周年記念講演会
=2014年1月25日










白紙撤回された101ha埋め立て計画の主目的は第二湾岸道路だった









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