三番瀬の人工干潟化はやめよ

〜請願書に関する県の対応で申し入れ〜


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 三番瀬・猫実川(ねこざねがわ)河口域の人工干潟化を求める請願書が、先の9月定例県議会で採択されました。
 請願書を提出したのは、市川市塩浜協議会、市川市南行徳地区自治会連合会、市川市行徳地区自治会連合会、市川市行徳漁協、南行徳漁協の5団体です。
 この請願書に対する県の対応について、千葉の干潟を守る会、県自然保護連合、三番瀬を守る会など三番瀬保全8団体が2009年11月11日、申入書を県知事に提出しました。
 県側は、三番瀬再生推進室、河川整備課、水産局、自然保護課、企業庁の5部局14人が出席しました。
 最初に、8団体による「請願書『三番瀬の再生について』に関する申入書」と、三番瀬漁業補償問題に関する「三番瀬公金違法支出判決を活かす会」の声明文を手渡しました。


◆県の回答

 請願書(「三番瀬の再生について」)は、猫実川河口域の人工干潟化を求めています。この請願書に関する県の対応について3項目の申し入れを行いました。
 3項目に対する県の回答はこうです。
  1. 三番瀬の保全・再生については、これまでどおりに再生会議などで議論を進めること

      〔回答〕
       これまでと同じように、三番瀬再生計画にもとづき、また、再生会議における議論を踏まえながら三番瀬再生事業を進めていきたい。

  2. 猫実川河口域を人工干潟にすることは、三番瀬の生態系を破壊し、「生物多様性ちば県戦略」にも反するので、やめること

      〔回答〕
       人工干潟については、「干潟的環境の形成」ということで、三番瀬再生実現化試験計画等検討会で試験などをやりながら検討を進めている。

  3. ラムサール登録などの恒久保全策を講じること

      〔回答〕
       ラムサール登録については、関係者の合意形成に努めている。

 また、「活かす会」の声明に関する企業庁事業管理課の回答はこうです。
    〔回答〕
     このような問題を二度と起こさないということで事業を進めている。



◆猫実川河口域の人工干潟化が焦点

 その後、やりとりです。焦点となったのは、やはり猫実川河口域の人工干潟化でした。保全団体はこう要請しました。
     「三番瀬円卓会議が県に提出した三番瀬再生計画案では、『多様性を失って均一な砂質の底質環境となりつつある現三番瀬において、泥質であり汽水域の生物が多数生息している猫実川河口域の底質環境はまず保全すべきです』と明記してある。したがって、猫実川河口域は保全すべきであり、人工干潟にすべきではない」
     「請願書について県議会へ報告する場合も、“猫実川河口域は保全する”というようなものにしてほしい」
 しかし県は、こんなことをなんども繰り返しました。
     「円卓会議の提案は尊重する。しかし、猫実川河口域の評価については、いろいろな見方や意見がある」
     「専門家の意見も聞く」
     「地元の人たちの意見が重要、という考え方もある」
     「県としては、いろいろな意見を聞きながら再生事業を進める」
 保全団体からはこんな意見がだされました。
     「猫実川河口域を“ヘドロの海”と言っている人たちがいる。議会の中でも、それを強く主張している議員がいる。こういう間違った主張も“いろいろな意見”の一つとして考慮するのか」
     「地元の市や漁協、再開発事業者などは、猫実川河口域の人工海浜化を求めている。“地元の人たちの意見が重要”ということで、そういう人たちの意見を重視するのか」
     「それなら、円卓会議が2年間も議論して提案したことは何だったのか。円卓会議には専門家も加わっていた」
     「円卓会議は“猫実川河口域は保全すべき”と提案している。それなのになぜ、県は保全の方針を打ち出せないのか」
     「生物多様性豊かな海域を保全しないとなると、生物多様性ちば県戦略というのはいったい何なのか」
 県は、「いろいろな意見を聞きながら再生事業を進める」を繰り返すばかりでした。
 請願書に関する県から県議会への報告は、12月県議会の最終日にされます。保全団体は、県の対応を監視し、運動を強めていくことにしています。

 以下は、8団体が提出した申入書です。



8団体の申入書





請願書「三番瀬の再生について」に関する申入書

 私たちは、貴重な干潟・浅瀬「三番瀬」を次世代に残すため、その保全のために活動している団体です。
 さて、先の9月定例県議会において、「三番瀬の再生について」という名の請願書が採択されました。この請願書は、「干潟の再生」「流れの回復」「漁場環境の改善」「市民が親しめる海辺の再生」という名で、市川市塩浜2、3丁目地先の三番瀬海域の人工干潟化を求めています。しかし、この海域に土砂を盛って人工干潟を造成することは、三番瀬の自然環境を悪化させるものです。また、この請願書は、住民参加方式で三番瀬の保全・再生策を議論している再生会議などを無視するものです。
 つきましては、請願書に関する県の対応について下記のことを申し入れます。


  1. 三番瀬の保全・再生については、これまでどおりに三番瀬再生会議や市川海岸塩浜地区護岸検討委員会、三番瀬漁場再生検討委員会などで議論を進めてください。


  2. 市川市塩浜2、3丁目地先の海域(猫実川河口域)を人工干潟にすることは、三番瀬の生態系を破壊し、「生物多様性ちば県戦略」にも反するので、やめてください。

       この海域は、水質浄化能力がたいへん高く、多種多様な生き物が生息する重要な浅瀬です。稚魚のエサとなる底生生物なども豊富で、三番瀬の中で最も生物相が豊かな海域となっています。泥干潟やカキ礁もあるというこの海域の底質環境の多様性は、三番瀬全体の生態系の豊かさに大きな貢献をしています。これは、県が実施した「補足調査」や「生物調査」でも確認されています。
       三番瀬円卓会議が2004年1月、県に提出した「三番瀬再生計画案」にもこう記されています。
       「多様性を失って均一な砂質の底質環境となりつつある現三番瀬において、泥質であり汽水域の生物が多数生息している猫実川河口域の底質環境はまず保全すべきです」  「現在の泥干潟を砂浜に変えることは生物や環境の多様性を失わせることになります」
       人工干潟造成は、生物多様性豊かな海域に土砂を投入して生き物を埋め殺しにし、自然の干潟・浅瀬を疑似自然に改変するものです。これは、ラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」が明記している「現存する湿地の保全維持の優先」をはじめ、生物多様性基本法の趣旨や生物多様性保全を課せられた地方自治体の責務に反するものです。また、本県の豊かな生物多様性を次の世代に引き継いでいくことを目的とする「生物多様性ちば県戦略」にも反します。
       三番瀬は、船橋の漁業者が「東京湾の“生命維持装置”」あるいは「神様みてーな場所」と呼んでいるように、東京湾のゆりかごの役割を果たしています。猫実川河口域を人工改変することは東京湾漁業に対しても大打撃を与えることから、やめてください。

  3. ラムサール登録などの恒久保全策を講じてください

       いわゆる「三番瀬漁業補償問題」について、県は昨年11月、根拠をいっさい明らかにしないまま、市川市行徳漁業協同組合に対し60億円を支払いました。その際、三番瀬公金違法支出判決を活かす会は、この公金支出が県民全体の利益となるよう、三番瀬の恒久的保全を明確にすることを県に申し入れました。しかし県は、ラムサール条約登録湿地にすることなどの恒久保全策をいっさい提示していません。
       このまま県が猫実川河口域の人工干潟化に踏み出すことになれば、三番瀬の恒久保全を求める県民の願いを踏みにじることになります。人工干潟化はやめて、ラムサール登録などの恒久保全策を講じてください。










三番瀬人工干潟化問題で県(5部局)と交渉





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