命の恵み満ちる干潟

〜藤前干潟と三番瀬〜

千葉県自然保護連合事務局


トップページにもどります
「主張・報告」のページにもどります
特集「人工干潟」のページにもどります


 (2008年)7月11日の『読売新聞』が、シリーズ「平成万葉の旅」で藤前干潟(名古屋市)をとりあげています。


■干潟がさまざまな恵みをもたらすことを、
  昔の人はよく知っていた

 藤前干潟は埋め立てて人工干潟をつくる計画がありましたが、市民運動により1999年に埋め立てが中止され、保全されることになりました。そして2002年、ラムサール登録湿地に指定されました。

 記事は、「命の恵み満ちる干潟」と題してこう記しています。
    《「アナジャコ、みっけたぁ」──埋め立てが進んだ伊勢湾の奥。名古屋港の一角に、古代の年魚市潟の面影をわずかにとどめる藤前干潟がある。梅雨の中休みに、子どもたちの歓声が交錯した。
     干潮時間に合わせて開かれた「干潟の学校」は、NPO法人藤前干潟を守る会が、干潟の生きものを通じて循環型社会のあり方を楽しみながら考えてもらおうと開いているイベントだ。
     この日は、ガタレンジャー(干潟観察案内人)の一人、名古屋女子大教授のダグラス・ジャレルさん(54)が講師を務めた。干潟の魅力について、ジャレルさんは「生物の多様さ」を挙げる。「来るたびに新しい発見があります。生きものの宝庫ですよ」。ひげをたくわえた口元がほころんだ。》

    《干潟がさまざまな恵みをもたらすことを、昔の人はよく知っていた。現代の我々も、そのことを「生物多様性」として思い出しつつある。》


■どちらも“生きものの宝庫”

 藤前干潟と三番瀬は状況がよく似ています。
 どちらも大都市のすぐ近くにあります。多様な生物が生息し、“生きものの宝庫”であることも同じです。

 藤前干潟はアナジャコがたくさん生息しています。三番瀬の猫実川河口域も同じです。
 アナジャコは、泥質の干潟に生息する大型の底生動物です。Yの字型の巣穴を掘り、そこに生息します。巣穴の深さは3mにおよぶものもあります。
 アナジャコは、扇状をした腹肢(ふくし)で水をかき、U字孔に海水を循環させています。冠水時は、ほとんど休みなくこの濾過行動にいそしむため、その濾過量は非常に大きいといわれています。アナジャコが高密度で生息する藤前干潟や三番瀬の水質浄化能力は非常に高いのです。


■猫実川河口域の人工干潟化は時代錯誤の愚行

 しかし、三番瀬の猫実川河口域は相変わらず埋め立ての危機に瀕しています。千葉県が、「自然再生」という名でここに土砂を入れ、人工砂浜(人工干潟)をつくろうとしているからです。

 猫実川河口域は、県の生物調査で動物196種、植物15種が確認されています。そのなかには、県レッドデータブックに掲載されている希少種も、エドハゼ、ヤマトオサガニなど11種が含まれています。まさに、ここは三番瀬の中でもっとも生物が多く、生物多様性豊かな海域です。

 そんな海域をつぶすのは、時代錯誤の愚行です。日本は国際生物多様性条約に加盟しています。その主旨にしたがい、猫実川河口域は保存すべきです。

(2008年7月)




市川塩浜2、3丁目地先の猫実川河口域は、潮が引くと広大な泥質干潟が現れる





猫実川河口域の泥質干潟には、アナジャコの巣穴がたくさん見える





アナジャコ。泥質の干潟に生息する大型の底生動物で、Yの字型の巣穴を掘り、そこに生息する。巣穴の深さは3mにおよぶものもある。
アナジャコは、扇状をした腹肢(ふくし)で水をかき、U字孔に海水を循環させている。冠水時は、ほとんど休みなくこの濾過行動にいそしむため、その濾過量は非常に大きいといわれている。
アナジャコが高密度で生息する猫実川河口域の水質浄化能力は非常に高い。





藤前干潟で採取されたアナジャコの巣型。深さは約3m。













★関連ページ

このページの頭に戻ります
「主張・報告」のページにもどります
特集「人工干潟」のページにもどります

トップページ | 概 要 | ニュース | 主張・報告 | 行政訴訟 |
資 料 | 干潟を守る会 | 自然保護連合 | リンク集 |