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「里海」という言葉

〜そもそもの認識に誤り〜

中山敏則



 干潟などを「里海」を呼ぶ人が増えているようです。Nさん(生態学)もそのひとりです。あるイベントでNさんは、三番瀬などの干潟は「里海」と呼ぶべきであると強調しました。「里海は里山の海版」というとらえ方です。


■田久保晴孝さんが「里海」に異議

 これにたいし、田久保晴孝さん(三番瀬を守る会会長)が次のように異論を述べました。
     「干潟は、里山と違って人がいなくても存在する。“里と海”と表現をするのならいいが、“里海”という言葉はどうなのか。“里海”という言葉は、人が管理しないと干潟はできないというふうにも受けとれる。実際に、そういうことを言う人がいる。これは、いかにも人間が偉そうな言い方である。しかし、人がいなくても干潟はできるし、人がいなくなれば干潟が復活することだってある」
 田久保さんの考えはもっともだと思います。


■干潟の人工改変を正当化

 一般的にいえば、「里山」は、都市と自然の間にあって、人が利用してきた、あるいは人が利用している森林をいいます。手つかずの自然を人が利用しやすい形に変えていった森林が「里山」です。
 一方、干潟は、人の利用とは直接、関係がありません。田久保さんが言うように、人が利用しなくても干潟は存在するのです。

 じつは、「里海」という言葉は、自然の干潟を人工的に改変したい人がよく用いています。たとえば、堂本暁子前千葉県知事がそうでした。
 堂本知事は三番瀬について、「まったく手をつけないのはよくない」ということを盛んに述べていました。そして、「里海の再生が必要」として「三番瀬再生事業」をはじめたのです。
 その目的は、三番瀬の猫実川河口域に土砂を入れて人工干潟をつくることでした。また、本当の目的は、人工干潟の造成工事をする際に、その下に第二東京湾岸道路を沈埋(ちんまい)方式で通すことでした〈注〉。

    〈注〉堂本前知事は、2001年9月26日に三番瀬埋め立て計画を表明した際、次の新方針を示しました。(1)(猫実川河口域では)埋め立てを含めた環境改善事業を実施し、里海の自然再生を図る。(2)第二湾岸道路の建設は推進する。(3)保全・再生計画策定に向けて、地元や学識経験者を含めた「委員会」を設置する。(『千葉日報』2001年9月26日)

 つまり、堂本知事が言っていた「里海の再生」は、人工改変(人工干潟化=新たな埋め立て)や第二湾岸道路建設をカムフラージュするための言葉だったのです。

 こういう事実もあるので、「里海」という言葉を使うことは不適切です。


■そもそもその認識が間違いである

 この点は、たとえば堀正和氏(水産庁瀬戸内海区水産研究所)も次のように述べておられるとのことです。
    《里海は定義が確定していないがゆえに使う人によって様々な意味で用いられ、多くの誤解を生じています。ましな間違いでは、沿岸域を自然再生することを里海創成と呼んでいる例を見かけます。悪い例では、沿岸開発(護岸等)する時の大義名分として里海創成と言ったり、漁場として特定の生物生産のみ向上させた海域を里海といったり、悲しい例では人が触れ合える身近な海を里海と呼んでいました。どれも生物多様性について正確に言及している例を周辺で見たことがありません。「里海は里山の海版である」という認識されていますが、そもそもその認識が間違いであることに加え、多様性国家戦略や里山自体について正しい認識がないのが一因だと思います。》(「里海は生物多様性をはぐくむか─横浜国大 松田裕之 公開書簡」より)
 ともあれ、この問題については議論が必要だと思っています。

(2010年4月)





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