国交省が“官製の市民団体”を育成・利用

公共事業と環境を考える会


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 道路特定財源のずさんな使い方が次々と明るみに出ています。国交省による税金のムダ遣いは、まさに底なしです。

 私たちが注目しているのは、不要不急の道路などを造り続けるため、国交省がNPO法人やNGOを取り込んで「住民参加型の公共事業」を推進していることです。また、有名人やメディアをうまく使って、シンポジウムやイベントを開催していることです。


■長良川河口堰反対運動から学び、シンポやイベントを開催

 国交省は、長良川河口堰の反対運動から学び、こうした手法を使うようになったと言われています。たとえば、道路推進のミュージカルについてはこんな指摘がされています。
    《「国交省は長良川河口堰の反対運動から学んだようです。有名人やメディアをうまく使って、シンポジウムやイベントを開催した。それを自分たちもやろうとした」と解説するのは保坂展人衆議院議員。「04年当時、『情報が溢れる現代社会において、楽しみの中に正論を忍ばせる工夫』と言って中部地方整備局が推進した。道路をつくるために住民にすり寄り、道路はいいものだと国が洗脳しようとしてきた」と苦笑いする。》(『週刊ダイヤモンド』3月22日号の「特集・『道路』の暴走」)


■民意の偽装工作

 国交省はまた、NPO法人に多額の税金を与え、別働隊として道路推進の世論づくりをおこなわせています。
    《道路特定財源という“巨大金脈”を死守しようとする国交省が、狡猾な世論工作を密かに進めていたことが分かった。
     2月2日、熊本県山都町の国民宿合にピンク色のユニフォーム姿の中年女性130名が勢揃いした。「熊本県・宮崎県の道づくりを考える女性の会」のメンバーが集結、両県を東西に結ぶ「九州横断自動車道延岡線」(事業費3000億円以上)の推進集会を開いたのだ。主催者を代表して「くまもとの道を語る女性の会」の中村幸子会長は「道路特定財源の暫定税率廃止が浮上しているが、物流などの面からも田舎には道路が必要。隣県同士、力を合わせて(九州横断道延岡線の)早期整備を求めていきましょう」と訴えた。》

    《この中村会長にはもう一つの顔があった。「NPO法人 Hand to Land」と「(株)地域連携ネットワーク─・C・G」の代表を務め、しかも国交省から07年度までの3年間で1億2000万円の仕事を請け負っていたのだ。(中略)
     道路工事を受注する建設会社社長が身分を隠し、住民代表として道路整備を訴えたようなものだ。これでは「民意の偽装」と言われても仕方がない。このことを問題視すると、中村代表は「確かにそうでした。反省します」と非を認めた。》

    《道路特定財源を使って国交省は、日本を自分たちの意のままに操るつもりなのか。あまりにも民主主義をバカにした話である。》(以上、『フライデー』4月11日号)


■税金で“官製の市民団体”を支える

    《暫定税率の期限切れまで1週間。ガソリン税攻防が激化する中、「道路を造れ!」と叫び続けるオンナたちがいる。1月末、東京・六本木ヒルズ──。全国44の女性団体が一堂に会し、国交省幹部を前に蛍光色の法被姿のオバチャン数百人が「暫定税率維持」を大合唱してみせた。03年から毎年開かれてきた「全国みちづくり女性団体交流会議」だ。案の定、参加者の中には、国交省から道路財源で“お手当”をもらっていたオンナたちが……。
     当日のイベントを仕切ったNPO法人「女性みちみらい上越」の野本幸理事長。地方局でリポーターもこなし、道路関係の決起集会の司会にも引っ張りだこ。なかなかの美人で道路役人のアイドル的存在だ。国交省は彼女のNPO法人と「道に関する情報提供業務」なる名目で随意契約を交わし、06、07年度に約170万円ずつ道路財源から支払った。》

    《「道路財源で“官製の市民団体”を支えるなんて、世論の自作自演。怖いのは、この活動が地方で一定の成果を挙げていることです」(この問題を調査している社民党の保坂展人衆院議員)》(以上、『日刊ゲンダイ』3月26日号)


■人工干潟推進のNPOを東京湾の地域管理者に認定

 国交省による“官製の市民団体”の育成・活用は道路の分野だけではありません。

 海もそうです。経済成長が頭打ちとなり、港湾施設を造り続けることは困難になりました。そこで、国交省港湾局(旧運輸省)は、組織と仕事を維持確保するため、人工干潟づくりに力を入れています。そして、その推進のためにNPOを取り込み、国交省の別働隊として活用しています。

 国交省は最近、あるNPOを東京湾内湾の地域管理者に認定しました。このNPOは、貴重な干潟・浅瀬である「三番瀬」の人工干潟化(=埋め立て)を盛んに主張しています。また、三番瀬埋め立てをめざしている行政から多額の委託費をもらい、さまざまな事業を手がけています。


■多くのNPOが「行政の補完物」に

 NPO法案(特定非営利活動促進法案)が1998年3月に成立したとき、故・久野収氏は次のように警鐘を鳴らしました。
    《法人格を獲得したNPOが補助金受領に励みすぎ、「行政の下請け機関」になってしまう恐れもある。抜け目のない役人たちが考えることだ。介護保険などの場合も、行政は、ボランティア団体を末端行政の補完物と位置づけているかに見えてならない。三者三様のこの認識の食い違いが、結果的に表面上、一番弱いNPOに“変質”を迫る恐れも十分ある。》(『週刊金曜日』1998年3月27日号)
 まさに、久野氏が危惧していたとおりの事態が生まれているようです。

(2008年3月)






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