吉田正人氏の三番瀬円卓会議礼賛に疑問

鈴木良雄



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 「豊かな自然をとりもどそう」をテーマに、(2003年)8月6日から3日間、船橋市内で「三番瀬フェスタ」が開かれた。このイベントでは、三番瀬円卓会議(三番瀬再生計画検討会議)の礼賛が気になった。


■円卓会議などについてさまざまな意見
  〜市民意見発表会〜

 2日目(7日)、三番瀬再生計画にたいする市民意見の発表会があった。発表者は、竹内壮一さん(我孫子市)、小野功さん(同)、今関一夫さん(江戸川区)、立花一晃さん(市川市)、古井利哉さん(市川市民)、荒木勉さん(船橋市)など10人である。
 三番瀬円卓会議の運営や再生計画、ラムサール条約登録などについてさまざまな意見や要望がだされた。円卓会議運営の問題点を指摘し、改善を求める意見もだされた。
 たとえば古井利哉さんは、次のような点を主張した。
  1. 円卓会議の下部組織として小委員会、ワーキンググループがいくつもつくられたが、それらがバラバラの方向に向かっている。
  2. 円卓会議は三番瀬の自然再生を中心に議論すべきなのに、護岸や防災、内陸地の用途変更に議論が傾きがちである。
  3. 三番瀬の再生を検討するのであれば、まず現況を掌握することが出発点である。しかし、焦点となっている猫実川河口域の調査結果について議論されたことがない。三番瀬の現況を出発点として、そこから保全・再生の道を探るという原点に立ち返るよう強く求めたい。
 この発表会には、円卓会議の委員も、磯部雅彦、倉阪秀史、吉田正人の各氏など何人か参加し、市民意見を聞いた。
 古井利哉さんらの意見はもっともだと思う。だから、こうした市民意見が今後の円卓会議の議論に反映されることを期待した。


■「三番瀬円卓会議は今までのいい点を全部とりいれている」

 ところが、最終日(8日)の夜に開かれたシンポ「三番瀬に豊かな自然をとりもどそう」に参加してガッカリした。
 円卓会議の吉田正人委員(日本自然保護協会常務理事)がパネルディスカッションの冒頭でこう述べたからである。
     「きのうの市民意見発表会では、市民から“これじゃダメではないか”などと三番瀬円卓会議について批判もだされた。しかしそうは言っても、ここ10年ぐらい公共事業に関する住民参加の話し合いの場がつくられていて、かなり変わってきている」
 こう述べて、吉田氏はこれまでの住民参加会議の事例を紹介した。
  1. 長野県自然保護検討会議(1992〜1998年)
  2. 長良川河口堰に関する円卓会議(1995年3〜4月)
  3. 千歳川流域治水対策検討委員会(1997〜1999年)
  4. 愛知万博検討会議(2000年5〜12月)
  5. 淀川水系流域委員会(2001年2月〜 )
  6. 三番瀬再生計画検討会議(2002年1月〜 )
 それぞれの概要を紹介して評価したあと、吉田氏はこう述べた。
      「三番瀬円卓会議のユニークなところは、小委員会やワーキンググループがいくつもできて、そこで議論されていること。さらに公開でやっていることだ。三番瀬円卓会議は、今までのいい点を全部とりいれている」
 まさに手放し評価である。環境保護団体の代表委員として円卓会議に参加している吉田氏がこんな評価をしていたら、市民意見の円卓会議への反映はあまり期待できない。――これが、率直な感想である。


■無視された長野県の検討委員会

 吉田氏の評価には疑問がある。
 ひとつは、これまでの住民参加会議の事例、つまり比較対象になぜ長野県の「中信地区・廃棄物処理施設検討委員会」や「長野県治水・利水ダム等検討委員会」が入っていないのかということである。
  「中信地区・廃棄物処理施設検討委員会」は、中信地区における廃棄物処理施設整備のあり方を情報公開と住民参加によって検討した会議である。検討委員会は今年3月に終了し、報告書をまとめて知事に提出した。
 この検討委員会は、次のような方式で開かれた〈注〉
  1. 委員構成にあたっては、行政から独立した判断により、多様な利害関係者を選出する。
  2. 事務局は、行政からの独立性を確保するために、県ではなくコンサルタントが担当し、その選定も委員会が行う。
  3. 会議は原則公開とし、傍聴も許す。会議をビデオ録画し、CATVなどで放送する。議事録は、発言者名を明記したものを作成し公表する。
  4. 情報公開を徹底する。検討会での議論に必要な情報で県が所有するものはすべて提供してもらう。
  5. 住民参加を推進するために、適宜、傍聴者からも意見を聞くとか、意見書を受け付ける。
  6. 会議のスケジュールについては、毎月1回程度は会議を開催するが、開催間隔を2週間は空ける。十分な議論のためには、事務局の会議情報準備や、委員の所属団体との意見調整などのための時間が必要である。真の議論の必須条件である。
  7. 中立性の高い委員長を選ぶ。当該地域で中立性の高い人物の選定が困難な場合は、地域から離れた外部専門家を選ぶことも望ましい。
〈注〉 くわしくは、HP「三番瀬円卓会議は長野方式を参考にしてほしい」をご覧いただきたい。


■三番瀬円卓会議よりも長野県の検討委員会が断然すぐれている

 このうち、2点目の事務局外部委託は、三番瀬円卓会議よりも進んでいる。三番瀬は千葉県が事務局をやっているからだ。
 4点目の情報公開の徹底もそうである。三番瀬では、三番瀬のど真ん中を貫く形で計画されている第二湾岸道の情報などについて、県はなかなか提示しない。ほかの重要情報もかなり隠している。
 6点目の会議スケジュールについては、三番瀬はまったくヒドいものである。たとえば先月(7月)は、会議が12回も開かれた。


 1日(火) 第5回再生イメージワーキンググループ(WG)
 3日(木) 第1回河川流域WG
 9日(水) 第8回船橋WG
 10日(木) 第9回市川WG
 11日(金) 第2回再生制度検討小委員会
  14日(月) 第8回浦安WG
 17日(木) 第14回護岸・陸域小委員会
 21日(月) 第14回海域小委員会
  24日(木) 第15回円卓会議
 26日(土) 第4回干潟的環境の回復・創造WG
 30日(水) 第3回再生制度検討小委員会
 31日(木) 第9回船橋WG



 これでは、完全公開といっても、傍聴できる会議が限られてしまう。どこでなにが議論されているのかもよくわからない。
 議事録を読めばわかるといわれても、それが公開されるのはかなりあとである。7月の12回の会議のうち議事録がきょう(8月12日)現在で公開されているのはわずか4回分だけである。これでは議論に活かせない。会議が多すぎて議事録作成になかなか手が回らないとも聞いている。
 また、議事録には話し言葉がそのまま掲載されるので、議論内容を理解するのは困難である。おそらく、議事録をきちんと読んでいる人はわずかではないだろうか。
 要するに、三番瀬円卓会議よりも長野県の検討委員会のほうが断然すぐれているということである。この点は断言したいと思う。三番瀬円卓会議は後者の方式を取りいれるべきである。


■長野県治水・利水ダム等検討委員会はダム開発中止の答申

 さらに、長野県では、同じようなスタイルで 「長野県治水・利水ダム等検討委員会」も開かれている。
 この検討委員会が昨年6月、浅川と砥川について「ダムによらない治水・利水案」を答申した。田中康夫知事は、この答申を受けて両河川の「ダムなし案」を決定した。


■現場をみない三番瀬円卓会議

 三番瀬円卓会議は住民参加や完全公開など従来よりはすぐれた面があるが、長野県の両検討委員会に比べるとかなり劣っている。
 そもそも、長野県の両委員会は現地視察をきちんとやっている。しかし、三番瀬円卓会議は、議論の焦点となっている猫実川河口域の現地視察をしない。この海域は、大潮の日は広大な泥干潟があらわれるのに、ここに踏み入れた委員はほんのわずかである。これは、たとえば原生林の現場をまったく見ないで、原生林のままがよいのか、それとも伐採して人工林にしたほうがよいのかを議論するのと同じである。こんな円卓会議をどうして手放しで評価できるのだろうか。


■第二湾岸道も棚上げ
  〜円卓会議はイチジクの葉っぱという批判も〜

 長野県は従来型公共事業の推進にストップをかけた。一方、千葉県はどうだろうか。従来型公共事業の典型である第二湾岸道は円卓会議で棚上げにされている。堂本知事は、この第二湾岸道をはじめ、外環道、常磐新線沿線開発、圏央道などの巨大開発を積極推進である。三番瀬円卓会議はそうした問題を隠すイチジクの葉っぱ、という批判もされている。
 吉田正人氏が、なぜ長野県の先駆的事例を無視し、三番瀬円卓会議を礼賛したのか不可解である。

(2003年8月)






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