三番瀬は今

千葉県野鳥の会 田久保晴孝



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■珍鳥ヘラシギを5年ぶりに確認

 (2007年)9月2日、三番瀬の浜には、300人を超すカメラマンや鳥を見る人が集まっていました。珍鳥ヘラシギ(絶滅危惧種IA類、世界に4000羽)の幼鳥1羽がたくさんのトウネンに混じって餌をとっていました。カメラマンたちは、このヘラシギを目当てに来ていたのです。
 当日は定例観察会の日で、参加された皆さんが、ヘラシギをみることができて感激していました。ヘラサギは、盛んに動きまわりながら、ヘラになったくちばしで餌をとっていました(谷津干潟でも8月31日と9月1日に観察されています。)
 三番瀬の浜には、多量のオゴノリやアオサなど海そうが打ち上げられていました(一部は腐っている)。数百トンはあるだろうと思われます。この海そうを餌にするミギワバエやショウジウョバエが大発生していました。このハエの幼虫やさなぎ、トビムシなどを餌にするトウネンやキョウジョシギなどのシギ、チドリ、ムクドリ、ウミネコ、ドバト、ツバメなどが多種多数観察されました。
 浜に打ち上げられた海そうをみて、三番瀬の豊かさを改めて認識しました。同時に、この海そうをやっかいものにするのでなく、なんとか利用ができないものかと思いました。 以前はオゴノリ業者がいて、採集販売のルートが船橋にもあったのですが……。
 8月から9月上旬にかけて確認した鳥は次のとおりです。

◇8月5日
 キョウジョシギ150羽、キアシシギ150羽、メダイチドリ125羽、ウミネコ3000羽など。

◇8月29日
 ヘラシギ(1羽)、エリマキシギ(2羽)、ハジロコチドリ1羽、オオメダイチドリ2羽、キリアイ15羽、コオバシギ1羽、オバシギ25羽、オグロシギ3羽、ミユビシギ256羽、トウネン413羽などシギ・チドリ類20類20種900羽。ハヤブサ1羽、アジサシ1000羽、コアジサシ5000羽

◇9月2日
 ヘラシギ1羽、オオソリハシシギ15羽、キリアイ20羽、ダイゼン110羽などシギチドリ類19種800羽。コアジサシ1000羽。シギ・チドリは幼鳥が多い。コアジサシは集積してオーストラリアなどに渡ったようだ。

◇9月9日
 台風9号の豪雨により、江戸川放水路の可動堰が2年ぶりに開放されたため、三番瀬の環境が激変し、多量のゴミ(アシ片など)と泥水により、シオフキイガイの大量死がみられた。


■三番瀬再生会議・再生事業

 6月に開かれた三番瀬再生会議(第19回)では、18年度三番瀬再生事業の実施結果、主要再生事業の実施結果、主要再生事業に関する平成18年度実施結果と19年度の実施方法、自然再生関係などについて審議と報告がありました。
 しかし、内容がつまらないことや、次年度事業の検討もされていないのに事業予算を夏にたてるなどのことがあったため、私たちは、当初予定されていた9月の次回会議の前にもう一回会議を開くことを要求しました。その結果、8月1日に第20回の会議がもたれました。
 議題は、(1)自然(湿地)再生(浦安日の出地区)、(2)三番瀬再生実現化推進事業の検討組織、(3)行徳湿地再整備事業(暗渠水路の開渠化)、です。
 こうした再生会議は、次のような問題点がみられます。
  • 県の主導で会議が行われ、報告と再生事業のための手続きが主となっており、議論が深まらない。
  • 事務当局は、勉強不足や三番瀬をよくしていこうという意欲に欠ける面がみられる。(浦安市は市独自で三番瀬に面する0.2haの土地を県企業庁から購入したが、当の県はなにもしていないなど)、
  • モニタリングや事業評価を十分しないうちに20年度の事業を決定しようとしている、
  • 再生事業費のほとんどを使う江戸川左岸流域下水道終末処理場や、三番瀬に多大な影響をおよぼす第二湾岸道路については議論しない


■猫実川河口域の泥干潟を人工干潟にする動き

 市川市や地元企業、一部のNPO、行徳漁協などが、猫実川河口域の泥干潟を埋め立て(砂を入れて)、人工干潟にすることを求めています。この泥干潟には5000uのカキ礁があり、アナジャコが多数生息し、三番瀬の中でも生物豊かな海域になっています。
 市川市と東邦大学東京湾生態研究センターの共同編集で発行された『干潟ウォッチング フィールドガイド』(誠文堂新光社)も猫実川河口域の人工干潟化を求めています。また同書は、カキを危険な生物(手を切る)としたり、アナジャコや鳥を追い出しているなどと、カキを悪者扱いをしています。
 しかし、カキ礁は、泥干潟の重要な構成要素になっており、豊かな生物群集をつくっています。そういうカキ礁を過小評価していることは残念です。
 生物豊かなカキ礁を含む猫実川河口域は、埋め立て(人工干潟化)せず、保全すべきです。

(2007年9月)








珍鳥ヘラシギ(田久保撮影)





ミヤコドリ。(田久保撮影)





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