防潮堤や第二湾岸道などで意見書

〜県自然保護連合が三番瀬「護岸・陸域小委員会」に再意見〜



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 千葉県自然保護連合は(2002年)9月12日、三番瀬「護岸・陸域小委員会」に対して2回目の意見書を提出しました。
 意見書の要旨は次のとおりです。
  1. 海岸保全区域や防潮ラインの変更は東京湾沿岸域の防災に関わる問題であり、しかるべき機関で検討すべき。
  2. 過去に塩浜地区でどのような高潮被害が起きたのかを明らかにしてほしい。
  3. 猫実川河口域をつぶして人工砂浜をつくることは、三番瀬の多様な生態系を破壊することになる。
  4. ある専門家は「船橋海浜公園前の砂は安定している」と言っているが、それは事実とちがう。
  5. 県が建設促進に躍起となっている第二湾岸道の問題も円卓会議で議論すべき。






 

意 見 書



2002年9月12日  

千葉県総合企画部政策調整課
 三番瀬プロジェクトチーム 御中

千葉県自然保護連合
代表 牛野くみ子


三番瀬「護岸・陸域小委員会」に対する意見について

  「護岸・陸域小委員会」に対し、下記のとおり意見を述べさせていただきます。


  1. 海岸保全区域や防潮ラインの変更は、しかるべき機関で検討すべきです

       東京湾沿岸域の防潮堤の位置は、別図「東京湾沿岸域の防潮ライン」(国土交通省関東地方整備局港湾空港部の『平成14年度事業概要』とホームページに掲載)のとおりです。
       これをみれば、埋め立て地が工業地域などの場合は、普通はその前面には高い堤防はつくられていません。高潮に備えた防潮堤は工業専用地域や工業地域、準工業用地などの後背地につくられています。市川塩浜地区も、そうした考え方から後背地に防潮堤が設けられています。
       こうしたことをまったく無視し、塩浜地区の工業専用地域の前面に高さ7.5mの堤防を新たにつくるなどということを円卓会議で検討すべきではありません。
       海岸保全区域や防潮ラインの変更は東京湾沿岸域の防災に関わる問題であり、しかるべき機関で検討すべきです。


  2. 過去に塩浜地区でどのような高潮被害が起きたのかを明らかにしてください

       円卓会議の委員や傍聴者は事務局(県)に対し、「塩浜地区で過去にどういう高潮被害が起きたのかを明らかにほしい」と要求していますが、いまだに回答がありません。
       塩浜地区に立地する工場で働いている方に聞いたところ、「この27年間、工場が浸水被害を受けたことは一度もない」との答えでした。
       事務局は、高潮被害の有無や状況を早く提示すべきです。


  3. 猫実川河口域をつぶすことは三番瀬の多様な生態系を破壊することになります

       猫実川河口域は、東京湾奥部で奇跡的に残された海域です。1991年まで長年にわたり、江戸川左岸流域下水道終末処理場の処理水が大量に放流されるなど、痛めつけたり汚されてきました。
       それでも、自然の豊かさを維持しています。ハゼの子どもなどがたくさん泳ぎ回っていて、稚魚の楽園となっています。魚のエサとなるアミ類なども泳ぎ回っています。ハゼやスズキ、フッコなどの魚やカニがたくさん採れるので、密漁船も頻繁にやってきます。先日の市民調査では、アナジャコの穴もたくさん確認されました。それほど、ここは生命力豊かな浅瀬なのです。
       このことは、県の補足調査(「市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る環境の現況について」)でも明らかにされています。補足調査は、猫実川河口域にはドロクダムシ、ホトトギスガイ、エドガワミズゴマツボ、ニホンドロソコエビなど、三番瀬の他の区域には存在しない底生生物が多く生息していること。そして、有機物や汚染物質は多いが、この区域も浄化機能を果たしており、特に単位面積あたりのCOD浄化量は、他の環境条件での値と比較しても遜色がないこと──などを明らかにしています。浄化機能が高いことは、この区域が都市部から流れ込む汚染物質の受け皿となり、多様な底生生物が生息することにより、活発な浄化作用が行われていることを示しています。
       このように、猫実川河口域は三番瀬全体の環境の中で重要な役割を果たしています。したがって、ここを埋め立てたりつぶしたりすることは、自然豊かな浅瀬やそこで生息しているさまざまな生物を殺すことになります。生物多様性や三番瀬の多様な生態系を破壊することになります。
       今年度に実施されるこの海域の生物調査などはまだ着手されていないと聞いています。そんな段階で、この海域をつぶして人工砂浜にするなどということを決めたり検討したりすべきではありません。


  4. 「船橋海浜公園前の砂は安定している」は事実とちがいます

       第4回「護岸・陸域小委員会」で、ある委員が「猫実川河口域に砂をいれて人工砂浜を造った場合、砂が流出するのではないか。船橋海浜公園前で人工砂浜をつくったときの砂は流出していないかどうか」と質問しました。これに対し、ある専門家は、「船橋海浜公園前の砂は安定している。人工砂浜をつくったときの角度からほとんど変わっていない」と答えました。
       これは事実とちがいます。船橋海浜公園前は、もともとあった干潟を航路として浚渫し、その後に県が埋め戻したものです。埋め戻しの際、もともとの干潟よりも高く盛り土し、市民が親しめる人工海浜(砂浜)として50分の1の勾配でつくりました。陸側は護岸の高さにあわせたのです。しかし、波の作用で砂の大半は流出してしまいました。現地に行かれている方はご存じのように、陸側は護岸の高さよりかなり低くなっています。
       この点については、元千葉県企業庁臨海建設課長の佐藤健氏(故人)も、シンポジウム「海は生きる! 街はどこへ?」(1998年8月8日開催)で次のように述べています。
      「人工海浜について今どういう検討状況かということですが、まず船橋海浜公園の前面の約40ヘクタールを人工的につくった。当初つくった時は50分の1の勾配でつくったんですけれども、長年の波の作用で120分の1になっています。これは三番瀬のあの場所の自然の仕組みの中でそうなったと」(三番瀬研究所発行『三番瀬の保全と都市の再生』より)
       つまり、投入された大量の土砂は波の作用で流出してしまったのです。これについては、1998年8月20日付けの朝日新聞(千葉版)もこう記しています。
      「かつて公園に面した遠浅の海を、沖合350メートルにわたって人工海浜とする計画が進められ、大量の土砂が運び込まれた。ところが、数年のうちに土砂は激しい潮の満ち干で削られ、いま残る砂浜はわずかしかない。自然の姿に戻ろうとする三番瀬の力強さの前に、人知はあっけなく敗れた」
       これが事実です。ですから、猫実川河口域も砂の流出が考えられます。ましてや、この海域の底は泥ですから、砂がどんどん沈下しつづけることが十分に考えられます。そうなると、砂補給をずっと続けなければなりません。金もかかります。この海域に生息している生き物は埋め立て(覆砂)によって死んでしまい、砂補給の継続によって新たな生き物の定着も困難です。
       ちなみに、船橋海浜公園前の場合は、埋め戻し箇所の前面に天然の干潟が残っていたために底生生物が生息し、水鳥が飛来したり潮干狩りも楽しめるようになっています。といっても、埋め戻した箇所の3分の1くらいはただの砂浜になっており、そこには底生生物はほとんど生息していません。


  5. 第二湾岸道も円卓会議で議論してください

       千葉県は第二東京湾岸道路(第二湾岸道)の具体化を盛んに国に働きかけています。県が6月10日に発表した「来年度の政府予算編成に対する重点要望事項」には、第二湾岸道の建設促進が盛り込まれています。また、7月26日に開かれた「第二東京湾岸道路建設促進協議会」の総会では、白戸章雄副知事が「第二湾岸道の早期事業化に向けて積極的に働きかける」と述べ、建設促進の姿勢を改めて強調しました。
       この第二湾岸道と三番瀬は密接にかかわっています。第二湾岸道はすでに浦安市、習志野市、千葉市の埋め立て地に用地が確保されています。市川側と船橋側は三番瀬の埋め立て予定地を通過する計画になっていましたが、埋め立て計画の白紙撤回で宙ぶらりんになっています。
       問題は浦安側と市川側の接続です。浦安側ではJR京葉線の海側に用地が確保されていて、この位置を変更することは不可能といわれています。この予定地の市川側は三番瀬の猫実川河口域のど真ん中です。もし、この海域を今のまま残すとなると、建設がかなり困難になるともいわれています。地下方式では金がかかりすぎ、外環道との接続も困難だからです。こういうことから、「県は高架方式を検討していて、なんとしてでも猫実川河口域を埋め立てたいと考えている」という話も聞いています。
       それはともかくとして、県が第二湾岸道の建設促進に躍起となっている中で、第二湾岸道を棚上げして三番瀬再生計画を検討するのは納得できません。第二湾岸道の必要性も含め、この高速道路計画も円卓会議できちんと議論してください。
       市川市などは猫実川河口域の人工砂浜(干潟)化構想を発表しています。円卓会議や小委員会でも同海域の人工砂浜化を急ぐべきという意見が多くだされています。私たちは、それが結果的に第二湾岸道の受け皿づくりとなることを危惧しています(添付図参照)。
       円卓会議のそもそもの目的は、三番瀬の自然環境をよりよくすることではないでしょうか。それを最重点課題にして検討を進めてください。


















    《関連図》

    東京湾沿岸域の防潮ライン(国土交通省関東地方整備局港湾空港部のHP)



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