三番瀬・猫実川河口域は

環境が多様で生物相が豊富

小嶌健仁



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 7月13日の三番瀬(猫実川河口域)市民調査に参加された小嶌健仁さんから、調査の感想をいただきました。
 名古屋から参加された小嶌健仁さんと鈴木晃子さんは、「人工干潟の現状と問題点」をまとめた人工干潟実態調査委員会のメンバーです。市民調査に毎回参加してくださる伊藤恵子さん(さいたま市)もそうです。この調査報告は、藤前干潟の埋め立て中止に決定的役割を果たしました。
 小嶌さんは、藤前干潟と比較しながら、猫実川河口域の生物相の特徴などを書いてくれました。







■生物の種類のこと
  〜猫実川河口域は、環境が多様で生物相が豊富〜

 藤前干潟の場合、生物の多様性はそれほど高くないです。原因としては、藤前干潟は極めて閉鎖性の高い状況にあるため、塩分が非常に低いことがあるかと思います。藤前の水はだいたい0.9%くらいの塩水です。海水というよりは汽水ですから、二枚貝もヤマトシジミが主体です。
 干満の差が2mあるとはいえ、海側にも護岸がある藤前や汐川干潟などは、塩分はかなり低いのではないかと思います。
 猫実川河口の塩分は、藤前に比べるとかなり高いように思いました。それもあって海の生き物(変な言い方ですね)の種類が多いのだろうかと、勝手に想像しております。

 猫実川河口は藻類が多いと感じました。干出時間が少ないということでしたから、当然と言えば当然なのですが、カキ床があったり、アオサ、オゴノリなどの藻類が生えているのを見るのはうらやましいものがあります。植物相が豊富であると、当然、それを食べる動物相に反映してきます。

 藤前の場合は、大型の藻が少なく、干潟の泥の表面の付着藻類(ケイ藻の仲間)が生産者の主力です。したがって、これを食べるヤマトオサガニ、ゴカイの割合が大きくなります。あるいはアナジャコのような懸濁物食者や、スナモグリのような堆積物食者と、多様性の面ではかなり限られてきます。

 猫実川河口は、カキ殻山あり、アオサやオゴノリといった藻類あり、護岸部分の干出する泥地ありと、環境が多様ですから、生物相が豊富ですね。
 イボニシやアカニシの卵が産み付けられているカキ殻があったり、アナゴの子どもがいたり、ゴカイの種類も何種類かいたりと、藤前より生物の種類は多そうですね。
 個人的には昨日の中ではイカの子供が一番インパクトがありましたけど。


■酸化還元電位などのこと
  〜猫実川河口域の泥は、硫化水素臭もなく、色も黒くないし、良い状態〜

 「干出時間が少ない、ということは、低い数値なのでは?」とも思っていましたが、実際にはかなり良好な環境だと思いました。
 いわゆる色、におい、肌触り、という感覚で見ると、3K(黒い、臭い、固い)な場所は干潟としては不健康かな、と勝手に言っております(とはいっても、ヘドロですとズブズブですが)。
 猫実川河口の泥は、硫化水素臭もなく、色も黒くないし、良い状態です。
 干出時間が長い場所は、酸素に直接触れる時間が長いため、条件としては藤前の方が有利なのかな、と思っていましたが、見て回った範囲では、むしろ猫実川河口の方が状況は良好ではないかと思えました。

 藤前の場合、潮の流れの関係もあって、堤防の直下部分にヘドロ化した部分が見受けられます。このような場所では、分解されていない植物残渣が真っ黒になった泥と一緒に出てきて、硫化水素臭がしてと、悲惨なことになっています。酸化還元電位も還元的な数値を示します。新川からの有機物流入量が、生物(非生物)の分解量を上回ってしまっているのでしょう。

 実際に確認するところまではいきませんでしたが、藤前の場合、干潟西側に、浚渫深みがあり、青潮の発生が疑われます。夏期に、底生生物が大量死することがあり(青潮、あるいは、4時間以上に及ぶ暴露による酸欠死)、そのようなときには、河川による有機物の流入に加えて、生物そのものが大量の有機物となって、ヘドロ化を促進する結果になっているのではないかと思います。

 数年前までの空梅雨の時、6月の大潮の日が晴天であったため、藤前干潟では、4時間近くの干出時間に干潟表面の温度が上昇し、アナジャコなどの底生生物や、取り残されて巣穴に隠れていた小魚がゆで上がって死亡するということが数回ありました。
 アナジャコは、その年、干潟に下りて巣穴を掘りはじめたばかりの体長数センチのものがたくさん死亡しました。

 猫実川河口部は、海側が開放されていますから、潮の干満による物質の移動がかなり大きいのではないかと思いました。吹き寄せのように有機物が停滞することがなければヘドロ化はしにくいでしょうし、酸化還元電位も酸化的環境の方の数値を示すかと思います。

(2003年7月)   









7月13日の市民調査では、藤前干潟の小嶌健仁さんと鈴木晃子さんが名古屋から応援にかけつけてくれました。小島さんは、アナジャコ採取用の「コアサンプラー」を制作した方です。藤前干潟で慣れているだけあって、サンプラーを上手に扱います。アナジャコを何匹も採取してくれました。








この日は、広大な面積の干潟があらわれました。干潟のあちこちで、ゴカイ、スナモグリ、マメコブシガニ、シオフキガイ、ムラサキガイ、ホトトギスガイなど、たくさんの生き物を発見しました。








イカの赤ちゃんです。








スナモグリも3匹採取。









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