どう守る、干潟の生き物

三番瀬を守る会 田久保晴孝


トップページにもどります
「主張・報告」にもどります
「人工干潟造成論」にもどります



 日本では、「理想的な干潟」(後背湿地、アシ原、塩性湿地、干出域、藻場、浅瀬、良好な河川を含む)は、ヒトによる開発が進み、なくなっています。
 「三番瀬は干潟ではない。ほうっておくと、もっと悪くなる」─。これは、2月20日のシンポジウム「どう守る!干潟の生きもの」で望月賢二氏(千葉県立中央博物館副館長)が述べた発言です。
 しかし、三番瀬には、干潟の一部しか残っていなくとも、故・山下弘文氏が言っておられたように、「今ある干潟(湿地)は一坪たりとも埋め立ててはいけない」と思います。浅瀬に砂を入れて干出域をつくることには反対します。


■三番瀬は、近年は悪化していない

 三番瀬の現状は悪化しているか? この問題を語るとき、基準をいつにおくかが問題です。
 私は江戸川放水路の先に市川航路をつくり、その砂で「ふなばし三番瀬海浜公園」をつくった1985年(20年前)におくべきと考えます。すべての干潟や後背湿地(水田など)が残る1950年当時の環境と比較すべきではないと思います(長期的目標にすることはよい)。
 ここ20年間で悪化していると言う人は、その理由として、「アサリがとれない」「ノリがとれない」「水鳥が減少した」などをあげます。しかし、それは三番瀬そのものが悪くなったためでしょうか。
 三番瀬のアサリは、2003〜2005年は日本一の生産量(豊漁)を誇っています。ノリ不作の理由は、水温上昇や下水処理水によるためではないでしょうか。また、水鳥についてみても、種類ごとにみると、減っている鳥、増えている鳥、変わらない鳥がいます。
 私は三番瀬は悪化していないとみています。近年は、地形が安定しており、微生物(プランクトン)、ゴカイ、カニ、魚、貝、水鳥などの生き物の量が非常に多く、減っていないからです。具体的にあげるとこうです。
  1. 市川航路をつくり、また、京葉線建設のために3ヘクタールを埋め立てた以降は、埋め立てをしていない。そのため、地形が安定している。
  2. 環境省の調査結果(2004年)をみても、東京湾の水質(N、P、COD)はよくなっている。
  3. 水鳥の量は、全国的にみても多い。2004年の環境省調査によると、スズガモは全国1位、ハマシギは全国4位(東京湾では1位)である。これは水鳥のエサとなる生き物が多いということを示している。
 しかし、望月氏が言うように、
  1. 都市化や人工圧などによって、水田やアシ原など後背湿地が埋め立てられたこと
  2. 青潮による弊害
  3. 江戸川放水路可動堰の問題(平均1.5年に1回行われる放流)
  4. 淡水と砂の流れが止まっていること
  5. 流域や河川の開発
  6. 下水処理水の流入
 など、三番瀬の外の問題点は少しずつでも改善する必要があります。


■浅瀬に砂を入れて人工干潟をつくることは許されない

 最近では、干潟(干出域)については注目され、大切な場所であるという認識がされています。しかし、浅瀬の注目度は低いようです。
 干潟に続く浅瀬の生物生産量は干潟より大きく(主に貝類)、干潟と同様に大切な場所です。浅瀬を埋め立てて人工干潟をつくることは、愛知県の藤前干潟では否定されました。三番瀬でも、浅瀬を埋め立て(砂を入れて)、干潟(干出域)をつくることは許されないと思います。
 そうではなく、欧米で主流になっているように、埋め立て地(すでに開発されたところ)を干潟的環境(湿地)にしていくべきです。
 ラムサール条約では、人工(水田、ため池など)と天然(干潟・アシ原)をとわず、水深6メートル以内のところを湿地と定義しています。また、とくに潮間帯(干潟)の保護をうたっています。
 漁協関係者などは、漁場再生のために干出域を増やすといっています。しかし、ノリやアサリの漁は現在は船を使って作業しているため、干潟よりも浅瀬のほうがノリやアサリ漁にとっても利便性があります。
 行徳漁港の前には、すでに市川航路の砂を入れた人工干潟があります。どうしてもというなら、この干潟を拡張すればよいと思います。


■猫実川河口域は保全すべき

 猫実川河口域には、カキ礁、アナジャコ、ドロクダムシ、アオサ、ヤマトオサガニなどが生息していて、三番瀬でもっとも豊かな場所です。泥干潟とそれに続く浅瀬は、特異な生態系(埋め立て前の三番瀬海域には普通にあった)を有しており、ここに砂を入れて干出域をつくることはたいへん問題です。猫実川河口域は保全すべき場所です。


■おわりに

 三番瀬の生き物にふれ、それに感動し、これら生き物のために三番瀬をどう守っていくのがよいのかを考え行動していきましょう。
 私は、世界基準で湿地を保全・復原していくことを示しているラムサール条約に登録することが、三番瀬の生き物や市民、漁民にとってもいちばんよいことであると確信しています。
 三番瀬の早期ラムサール条約の登録署名にご協力をお願いします。

(2005年3月)   





★関連ページ

このページの頭に戻ります
前ページに戻ります

トップページ | 概 要 | ニュース | 主張・報告 | 行政訴訟 |
資 料 | 干潟を守る会 | 自然保護連合 | リンク集 |