7団体が勉強会を開催

ラムサール条約と日本の湿地の保全

〜 講師はWWFジャパンの東梅貞義さん 〜



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 三番瀬のラムサール条約登録などを求めて活動をつづけている「千葉の干潟を守る会」「三番瀬を守る署名ネットワーク」など7団体は2001年10月27日、世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の東梅貞義氏を招き、「ラムサール条約と日本の湿地の保全〜ラムサール条約に登録するには」というテーマで勉強会をひらきました。
 三番瀬を末長く子どもたちに伝えてゆくにはどうしたらよいかは、私たち沿岸住民の大切な課題です。その保全の知恵として、「賢明な利用」をよびかけるラムサール条約をもっとよく知りたい、というのが勉強会開催の目的です。会場は船橋市勤労市民センター。参加者は60人で、地元船橋の漁師も参加しました。


講演要旨

 東梅さんの講演要旨(項目)はつぎのとおりです。


 1.ラムサール条約とは
  (1) 国の政府と政府が結んだ国際条約
  (2) ラムサール条約のしくみ
  (3) ラムサール条約がめざすもの
  (4) 湿地の定義
  (5)「国際的に重要な湿地の定義
  (6)「水鳥の一つの種または亜種の個体群の個体数の1%」とは
  (7)「賢明な利用」の定義
  (8)「賢明な利用」概念の実施のためのガイドラインと追加ガイダンス
  (9)湿地復元のガイドライン

 2.ラムサール条約に登録するには
  (1) 国設鳥獣保護区特別保護地区とは
  (2) 鳥獣保護区特別保護区の中で環境大臣の事前許可が必要な活動
  (3) 環境大臣が政令で定めている行為

 3.日本のラムサール条約登録湿地
  (1) 現在の登録湿地は11カ所
  (2) 今後の追加登録の予定
  (3) 登録後の活動
  (4) 条約は湿地管理の住民参加を促進
  (5) 谷津干潟(習志野市)の例
  (6) 漫湖の例

 4.三番瀬の登録に必要なこと
  (1) 鳥類・生息環境調査
  (2) 関係者の理解、同意、支援
  (3) 行政に必要とされる対応
  (4) NGOができる対応
  (5) 三番瀬を登録することの意義





「東京湾全体の湿地を国設鳥獣保護区に」

 東梅さんはまず、ラムサール条約が生まれた背景として、世界各国で湿地がどんどんつぶされる中、湿地破壊をくいとめようという声が高まり、また、一国だけ湿地も守っても渡り鳥は生きていけないということで、各国が集まって条約をつくったことを話してくれました。
 ラムサール条約のキーワードとなっている「賢明な利用」(ワイズユース)については、「簡単にいえば、川であれ、干潟であれ、そこを子供たちが将来にわたって楽しめるように残そうということだ」と説明してくれました。
 また、日本では、国設鳥獣保護区特別地区への指定がラムサール条約登録の条件となっていることの理由について東梅さんは、「登録湿地でなにか問題が生じるおそれがでてきたとき、環境大臣が規制できるようにするため」と話してくれました。
 同地区で環境大臣の許可が必要となる行為は、植物・動物の採取(農林漁業を除く)、車や馬の使用、動力船の使用(漁業、船舶運航を除く)、球技など器具を使った野外スポーツ、レクリェーションなどであり、第一次産業(農林漁業)の生産活動は規制の対象から除かれていることも分かりやすく話しました。
 三番瀬をラムサール条約登録にすることについては、「ぜひ“千葉方式”をつくりあげ、干潟保全のモデルを提示してほしい」「県議会も含め、十分に時間をかけて合意形成をはかる必要がある。そうしないと、あとでしこりが残る恐れがある」「三番瀬の利用形態や生き物の生息環境調査などもやっておくべき」「今回のような勉強会をあちこちで開き、もっとたくさんの人たちに関心をもってもらうことが必要」「さまざまな人々や団体が勉強会や合意形成の場に参加できるようにし、登録への関心や気運をもりあげることが必要」などと述べました。
 そして、「国際的に重要な湿地を地元の力で将来に残してほしい」「東京湾の湿地(干潟や浅瀬)は9割以上が埋め立てられてしまったが、こうした流れを市民の力で大きく変え、東京湾の湿地を残していく第一歩にしてほしい」などと述べました。
 最後に、国設鳥獣保護区特別地区への指定問題にふれ、「三番瀬だけを保護区に指定するのではなく、盤洲干潟(木更津市)なども含め、東京湾全体の湿地を保護区に指定することも考えるべき」と述べました。この東京湾の湿地すべてを保護区に指定すべきという提案は大きな反響をよび、拍手喝采を博するとともに、何人かの参加者から賛同の意見がだされました。


「これからは自然を守らなければ漁業はやっていけない」

 東梅さんの話はたいへんわかりやすく、参加者からは「ラムサール条約がどういうものであるかがよく分かった」という感想がたくさん寄せられました。
 質疑応答も活発におこなわれましたが、とくに印象的だったのは船橋漁協の大野一敏さんの発言です。大野さんは次のように述べました。
 「船橋漁民の間では“ラムサール条約に登録されると漁業ができなくなる”という話がでている。講演を聞いて、それが間違いであることがよく分かった。これからは、自然を守らなければ漁業はやっていけない」
 「木更津市の盤洲干潟では、干潟の隣接地に温泉スパやホテルが建設されるなど、干潟に悪影響をおよぼす開発が進んでいるという話がでたが、それは自然が金になるということを知らないからだ。開発のほうが金になるように見えるが、それは一過性のものだ。自然保護団体は、“自然を守るほうが金になる”ということを関係漁協や行政(木更津市)に教えてもらいたい」
 「三番瀬をラムサール条約に登録するためには、沿岸立地企業の理解も得る必要がある。その際、“自然は金になる”ことや、三番瀬の自然環境保全は企業の職場環境改善につながることを知ってもらったほうがよい。たとえば、米国のシリコンバレーは、まわりの自然環境が良いためにたくさんの企業が集まり、活気を呈している」
 「東京湾では青潮が大きな問題になっているが、原因の一つは窒素やリンが大量に流れ込むことによる富栄養化である。つまり、家庭雑排水や下水処理水の流入が大きな原因である。こうしたものを東京湾に流入させないようにすることがどうしても必要になる。この点では環境省の役割はたいへん大きい。同省に強く働きかけるなどのとりくみが必要だ」







講師の東梅貞義さん







勉強会には60人が参加







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