5つの自然保護団体が

 江戸川の河口堰改築計画の

 見直しを求める要望書



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 建設省関東地方局江戸川工事事務所は、市川市の江戸川河口に設置されている「行徳可動堰」を行徳橋とともに上流約170メートル地点に移し、大規模なものに改築することを計画しています。
 改築予定地両岸にはヨシ原が広がり、環境庁のレッドデータブックの中で絶滅危ぐ種に指定されているヒヌマイトトンボなどが生息しています。また、すぐ下流にはトビハゼも生息しており、堰の改築でこれら絶滅危ぐ種の消滅が心配されています。
 さらに、新しい河口堰は大雨時に毎秒7000立方メートルもの淡水を放水する計画であり、三番瀬で生息しているシオフキガイやアサリなどを壊滅させる恐れもあります。
 このため、「市川緑の市民フォーラム」など5つの自然保護団体は、10月13日、絶滅が心配されている生物に配慮が不十分などとして、計画の見直しを求める要望書を建設省江戸川工事事務所に提出しました。要望書は、三番瀬に与える影響も大きいとして、環境影響調査の実施なども求めています。
 また、同5団体は10月27日、千葉県知事に対しても、建設省に再検討を申し入れるよう求める要望書を提出した。
 建設省江戸川工事事務所と千葉県知事あての要望書の内容は次のとおりです。


 








建設省江戸川工事事務所長あての要望書



 建設省江戸川工事事務所長 様


里見公園下の堤防工事、ならびに
行徳橋新設計画に対する要望書

 先日は、貴職計画課長藤井さんに2度にわたって江戸川に関連する大きな工事等についての説明をしていただきました。お忙しい中、誠にありがとうございました。その後、市川市内で活動する環境系団体と三番瀬保全を目的に活動する船橋・習志野の団体で話し合いを持ち、以下のような内容の要望書を提出することにしました。また、今までの貴職による説明の場を発展させて、今後は江戸川・利根川流域、あるいは都内都市河川も含めた治水計画全体の情報も提供していただきながら、市民と協議する機会をもっていただけるよう、ここに要望いたします。


要  望


    1.里見公園下の堤防工事について

    • 500mのわんど(旧坂川河口)のうち、半分の250mが残ることについては、河川の景観と生き物に配慮した良い方法であると思いますが、その他の部分についても極力既存の景観が損なわれないように配慮して下さい。
    • 工事区域に隣接する河川敷はグランド等の施設などはつくらず、地域の生物の生息の場として保全して下さい。
    • 用地買収に関係する住民にはすでに説明したということですが、自治会やこの地をいろいろな形で活用している市民など、もっと広い範囲の人々を対象にあらためて説明会を開催して下さい。

    2.行徳橋河口堰新設問題について

    • 行徳河口堰に関しては、老朽化による工事の必要性はある程度理解できるものの、江戸川・利根川流域、あるいは都内都市河川も含めた治水計画全体にも関わる問題なので、その全体計画がわからないため改修計画が適正な規模のものであるかどうかわかりません。今までの説明の範囲で考えたとき、この改修計画は過大な計画ではないかとの疑問を持たざるを得ません。
    • 年を追うことに上流部の森林の荒廃、あるいは乱開発などが進み、保水機能や遊水機能が失われているため、大雨時の流量が増加の一途をたどっていること、そして、おそらく都内の雨水排水に関して江戸川に大きな負担を強いる計画になっていることなどが原因となって、江戸川および可動堰にこのような計画が立てられたのではないでしょうか。都市河川と同じように大河川についても総合的な治水対策を実施し、都内でも雨水滞留や雨水利用を積極的に推進することで、江戸川等に過剰な流量を負担させなくてもすむ計画に変更できるのではないでしょうか。
    • 増水時には旧江戸川にまったく流さないという計画のようですが、今までは毎秒1000立方メートルの流量を負担させていたようですし、それで問題が生じていなかった過去の事実と照らし合わせ、旧江戸川にも応分の流量負担をさせるべきです。
    • 絶滅危ぐ種ヒヌマイトトンボの生息地の保全は最優先されるべき問題です。現生息地の北側に生息の場を拡大する試みは一定評価するものの、河口堰を260メートル幅にすると現生息地だけでなく、今試みているヨシ原そのものも放水時には削り取られてしまうのではないでしょうか。また、計画通り河口堰を拡幅すれば、トビハゼの生息する両岸の干潟も完全に失われ、復原の見通しはまったくありません。
    • 三番瀬に関する千葉県の取り組みについてはご存じのことと思いますが、千葉県はこの開発計画を千葉県環境会議という会議にかけ、その結果埋立計画の環境に与える影響について補足調査が必要となり、県は約3年という月日と6億円という費用を投入しました。また、県は一方で埋立地の活用に関する事業の必要性、緊急性、将来性について客観的に説明する義務を生じています。このことを考えると、行徳可口堰の問題は河川水を流下させたすぐ先に三番瀬があるのですから、この事業の必要性や妥当性、および最大で毎秒7000立方メートルの淡水を流下させることによって、放水路および三番瀬の干潟と浅瀬にどのような影響を与えるかを調査し、環境影響評価を行うべきであると考えます。
       なぜなら、昨年9月の台風5号の時には、河口堰より毎秒2000立方メートルに満たない放水しか行われなかったにもかかわらず、三番瀬では大量のアサリ、シオフキなどの貝類が死滅するほどの影響が出ているからです。
    • 建設省と市川市、そして専門家と市民を交えた話し合いがまず必要ではないでしょうか?
       つい先頃施行された新河川法では、河川の景観とそこに生息する生物に配慮すること、そして地域住民と十分に協議することをうたっています。残念ながら現時点では前者については、この計画が河川の景観とそこに生息する生物に十分配憲した計画とは思えません。また後者についても、この計画を知った私たち市民の働きかけでようやく説明会が行われただけです。近々に協議会のようなものを発足させるとのお話も聞いていますが、今後建設省には、冒頭にも述べたとおり、情報公開の徹底と、市民と専門家を含めた検討の機会の設定を早急に実現するよう要望します。

以上   





千葉県知事あての要望書



 千葉県知事 沼田 武  様


行徳可動堰改修計画についての要望書

 建設省江戸川工事事務所は、10月13日に行徳橋及び行徳可動堰の改修計画を公表しました。私たちは、この計画について今年7月から2度にわたって直接建設省から説明を受けました。そして、この計画が三番瀬に大きな影響を及ぼすものであり、今まで千葉県が行ってきた三番瀬に関する検討が根底から覆される危険性のある計画であることがわかりました。そこで、千葉県に対して次のことを求めます。


要望事項

  1. 千葉県としても建設省から直接この計画の概要の説明を求め、三番瀬の自然環境の保全の立場から、この計画の再検討を申し入れて下さい。
  2. 干潟等生態系検討委員会や第4回策定懇談会など、今後三番瀬の自然環境の保全と埋立計画を審議するにあたっては、必ず行徳可動堰改修計画を視野に入れて検討して下さい。


可動堰改修計画が三番瀬に及ぼす影響

  1. 200年に一度の確率で発生する大雨(昭和22年のカスリーン台風並み)時に毎秒7000立方メートルの流量を江戸川に負担させ、その排水を旧江戸川にまったく流さず、すべて改修した可動堰より江戸川放水路を通して三番瀬に排水する計画になっています。しかし、昨年9月の台風5号の時には、現可動堰より毎秒2000立方メートルに満たない放水しか行われなかったにもかかわらず、三番瀬では大量のアサリ、シオフキなどの貝類が死滅するほどの影響が出ているのです。その結果、今年の潮干狩りシーズンに船橋海浜公園沖の干潟と浅瀬ではほとんど貝類を見ることができませんでした。
  2. また、三番瀬で発生する青潮は気温の変化と淡水の流入が引き金となって起こることが多く、流入する淡水が多ければ多いほど青潮発生の確率が高まると考えられます。


参考:江戸川放水路の周辺の生物に及ぼす影響

  1. 現可動堰のすぐ北側のヨシ原には絶滅危ぐ種ヒヌマイトトンボが生息しています。建設省は現生息地の北側に生息の場を拡大する試みをしていますが、新河口堰は幅260メートルとなるため、現生息地だけでなく、今試みているヨシ原そのものも放水時には削り取られてしまう可能性が高いのです。
  2. 一方、すぐ下流の両岸には泥干潟が現在形成されていて、トビハゼの北限の分布地となっており、レッドデータブックには、「絶滅の恐れのある地域個体群」と記されています。この干潟も計画通り可動堰を拡幅すれば、完全に失われ復原の見通しはまったくありません。
  3. 平常時は可動堰を締め切った状態なので、放水路は基本的には川ではなく内湾の環境です。したがって、トビハゼに限らず、内湾としての生態系に突然大量の淡水が流入するので、生態系がその後も維持されるかが心配です。三番瀬にそれを補完していく機能が十分にあればいいのですが、それも現状を見ると悲観的にならざるを得ません。
 1999年10月27日







江戸川河口堰(行徳可動堰)から泥水が大量に放流され
たため、三番瀬では大量の貝が死滅した。(1998年9月)




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