三番瀬埋め立て固執に県職員が大ブーイング

  県財政が危機的状況の中、

  「不要不急の大型開発は中止せよ!」の声

「三番瀬保全資料集」編集部  



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■「昇給延伸→大型開発推進」に怒りの声

 (1999年)6月7日、千葉県は、県財政が重大な危機にあることを理由に、すべての県職員(小・中・高の教職員を含む)の12カ月昇給延伸を労働組合に提示しました。
 これに対して、多数の職員から不満や怒りの声がだされています。
 6月14日に行われた組合(県職労、千教組、高教組)と総務課長との交渉では、高校教員がこう発言しました。
 「高校生の言葉で言えば、“ムカツク”。50歳代半ばの人は、これでは『仕事せず、休まず、働かずだな』という声が出ている。財政をどうするのか。かずさアカデミアパークをやめればいいではないか。こんな時に三番瀬の埋め立てをまだやる。7分の1に縮小するといっても1400億円もかかるではないか」


   (注) 1400億円というのは、発言者が、単純に当初計画の事業費を7で割ったもので、
     正式な発表数値ではありません。


 また、県職労(千葉県職員労働組合)が実施した緊急アンケートでも、つぎのような声がたくさん寄せられています。
 「まだ、子供が浪人中で来年大学受験をめざしている。22歳になるため、扶養手当を来年4月から切られるし、昇給延伸では、教育費が大変になる。不要不急の公共事業を抜本的に見直す。特に三番瀬の埋め立て事業は中止すべき」(県職労本庁支部発行『本庁職場新聞』より)



■財政危機の主因は大型開発の推進

 「昇給延伸をする前に、まず不要不急の公共事業を中止せよ」というのは、まったく正論です。
 県が言うように、県財政はたいへんな危機になっています。県は今年度、財源確保の見通しがないのに、過大な予算を組みました。収入見込みにあわせて歳出を組めばよいのに、公共事業費はあいかわらず“聖域”としたため、1460億円もの財源不足をかかえたまま“見切り発車”で予算をスタートさせました。その後、借金を増やすなどにより1070億円を手当しましたが、残り390億円はめどがたっていません。
 さらに、図1にみるように、借金(県債残高)は増える一方で、今年度はとうとう予算規模(1兆6644億円)を超えて1兆8037億円になってしまいました。毎日の利子だけで1億3000万円も支払っているのです。










 問題は、なぜ借金が巨額になったのか、ということです。今日の県財政危機を招いた最大の原因は、野放図な大型公共事業(開発)の推進です。図2をみればわかるように、借金は公共事業(普通建設事業費)の増加にあわせて増えつづけてきました。公共事業がすべてムダということではありませんが、不要不急の土建事業に巨額の県費が投じられている事例はたくさんあります。  県は、こうした原因にまったくふれずに、職員の昇給を12カ月も延伸する一方、反対の声が強い三番瀬の埋め立てはシャニムニやろうとしています。
 三番瀬だけではありません。木更津、君津二市にまたがる「かずさアカデミアパーク」は、これまで1000億円以上の県費を投入してきましたが、企業進出はまったく進みません。マスコミも、「めど立たぬ企業進出−県の負担額は増加の一途」(朝日新聞、97年2月12日)、「見通し不透明で冷ややかな地元」(東京新聞、同年12月22日)などと書いているほどです。にもかかわらず、県は今後もここに莫大な県費を投入しようとしています。
 さらに、東京湾横断道路(アクアライン)は、車の通行量が少なすぎて、建設費と利子の合計3兆5000億円を通行料金で返済する計画が破綻しているのに、県は、さらにもう一本の横断橋(東京湾口道路)を建設しようとやっきになっています。
 また、企業庁などが造成した工業団地は、不景気もあってさっぱり売れず、大量の売れ残りを抱えているのに、さらに新たな内陸工業団地(「袖ケ浦椎の森工業団地」など)の造成をはじめました。これには、県職員からも強い批判の声があがっていて、「知事や幹部は気が狂っている」という声も聞かれるほどです。


■県職労が財政危機打開の緊急提言

 こうした中、県職労は、危機的な県財政打開のために、次のような緊急提言をしました。


1.新たな大規模開発については凍結宣言をすること
     三番瀬埋め立て、中央連絡自動車道路、東京湾口道路、かずさアカデミアパーク二期工事など。
2.既存の大規模開発については大幅な見直しを行うこと
     幕張新都心、かずさアカデミアパーク、常磐新線開発など。
3.入札制度を見直し、適正化すること
     主要な公共事業は、本来、秘密である入札価格の99%で落札されている。これを防ぐために入札価格の事前公表制と一般競争入札を採用すること。これにより公共事業発注額の1割、約300億円を節約できる。

4.高金利の県債の利率を1%下げること
     政府や銀行と交渉し、借り換えを行うことにより、100億円は節減できる。
5.大企業への法人事業税の超過課税を行うこと
     知事の権限で10%増が法的に認められており、東京、埼玉、神奈川など全国で7都県で実施している。これにより50億円の増収が見込める。
6.幹部職員の公社、第三セクターへの天下りと退職金の二重払いを禁止すること

7.国に対して、地方自治を守る立場から次の財政政策を申し入れること
     (1) 消費税率を3%に戻すこと。
     (2) 地方交付税率を引き上げ、財源措置すること。
     (3) 地方自治体の仕事に見合った税源委譲をすること。

◇               ◇


 三番瀬埋め立てや県財政危機は、私たち県民全体の問題でもあります。“世紀の愚挙”としかいいようがない三番瀬埋め立ては絶対にやめさせると同時に、県職労が提言している県の行財政問題も考えていきましょう。

(1999年6月)   









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