市川市長の「市川二期地区計画に関する

 要望」(99年6月1日)についてのコメント

三番瀬を守る署名ネットワーク  竹 内 壮 一



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 市川市の千葉光行市長は(1999年)6月1日、三番瀬埋め立て問題に関する要望書を県に提出しました。
 要望書では、現在の直立護岸は「市民が海に触れあえない」として、人工干潟の造成などを求めています。
 さらに、(1)「豊かな漁業環境の再生方策」の検討。(2)市川と浦安の境を流れ、三番瀬にそそぐ猫実川の河口周辺部にたい積しているヘドロなどの解決。(3)都市課題の改善と自然環境の保全との調和の観点からの検討−−なども求めています。

 この市川市長の要望書について、三番瀬を守る署名ネットワーク事務局の竹内壮一さんがコメントを寄せてくれました。


市川市長の県知事宛て要望書







 市川市の臨海部における埋め立てと工業配置について千葉市長は、「これはよく言われるような一方的な開発の歴史ではなく、それぞれの時代背景の中で、都市と自然、経済と環境の接点を探りながら進められてきたものです。……これまでの埋立ては本市の都市づくり及び財政基盤の確立において、大きな役割を果たしてきたと認識しております」と述べている。
 ここに示されている考え方は、これまでの市川市域における埋め立て事業を肯定的に評価し、埋め立てが「一方的な開発の歴史」ではなく、行徳近郊緑地特別保全地区の設置を例にあげながら、「都市と自然、経済と環境の接点を探りながら進められてきた」ものであると評価している。
 ところが続く文章では、埋め立て後の地形的影響で漁業環境が悪化し、さらに埋め立てによって自然環境が不自然な地形や内陸部の都市化によって変化し、特に猫実川河口域などの沿岸部は荒廃が進んでいる、将来の埋め立てを前提とした仮の直立護岸であるため。「市民が海に親しむことができない状態にあ」ると環境悪化の現状を指摘している。
 とすると、上に述べたこれまでの埋め立てが「都市と自然、経済と環境の接点を探りながら進められて」こなかったことを意味しているのではないだろうか。「都市と自然、経済と環境の接点を探りながら」埋め立て・開発が進められてきたとすれば、このような事態は基本的に発生しなかったのではないだろうか。
 つまり、市川市域の臨海部埋め立てが工場用地のためにのみ埋め立てられ、企業に売り渡され、市民が海岸線に近づけるような計画を欠落させたまま行われてきたのであり、市川市民にとって貴重な海岸線を企業用地として売り払ってしまったことに対する痛切な反省が欠落しているのではないか。




 また、市川二期地区計画については、「都市再開発の推進など既存の都市課題の解決、あるいは、新しい都市づくりのために必要なものと考え、これまで総合計画などにおいて促進する事業として位置付けてまいりました」と述べている。
 とすると、市川市は現在でも市川二期計画の土地利用について「必要なもの」として位置づけているのかどうか。「促進する事業として位置付けてまいりました」と過去形で述べているので、現在では必要な事業として位置づけていない、とも受け取れるのであるが、この点についての言及がなく、市川市は市川二期計画を現時点でどのように評価しているのかが不明である。依然として市川二期地区計画を支持しているという疑いを持たざるを得ない。
 いずれにしても、これまで市川二期計画を促進してきた点について、市川市自身が反省しなければならないことだけははっきりしている。なぜなら、市川市も三番瀬を「この浅海域を貴重な自然の財産であると認識を新たにしております」と述べているからである。
 もし市川記に計画がそのまま推し進められたなら、この「貴重な自然の財産」が消滅してしまったからである。この点で市川市はこれまでの埋め立て推進の立場を深く反省する必要があるのではないだろうか。




 「このままでは、交通や下水道などの都市課題の改善は進まず、市川の漁業は漁業環境の悪化と将来への不安によって継続すら困難になると思われます」と述べ、続けて「現状のまま推移することが、環境にとって、市民にとって、漁業にとって、また行政にとって良いことなのか疑問を強くせざるを得ません」とも書いている。
 「このままでは」「この現状のまま推移すること」という表現を、市川二期地区計画が実施されなければ、という意味に理解すると、市川市は何らかのかたちで市川二期計画を実施したいという意味の表明ととれる。
 そして、第3回計画策定懇談会での、市川二期地区計画の見直しにあたっては「上記内容を踏まえる」ことを要求している。
 しかし、ここで指摘されている現状の市川市の課題、たとえば猫実川河口域の漁業環境問題や直立護岸の排気と親水性回復の問題は、市川二期計画の実施と結びつけずに解決できる問題である。市川二期計画と結びつけて論じようとしている点に基本的な誤りがあるのではないだろうか。




 「記」に記されている4点の要望、「市民が海に親しめる空間の確保」「豊かな漁業環境の再生」「浅海域の課題の解決」「自然環境保全に対する検討と協力」については、市川二期計画と切り離して行政と市民が協力して検討すべきである。

(1999年6月)   






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