三番瀬護岸改修工事のモニタリング調査結果で要請書

〜県自然保護連合の牛野くみ子さん〜




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 三番瀬の護岸改修工事に伴うモニタリング調査結果について、牛野くみ子さん(千葉県自然保護連合代表)が(2007年)5月31日、要請書を県に提出しました。
 提出先は、市川塩浜地区の護岸改修のあり方などを審議している「市川海岸塩浜地区護岸検討委員会」の事務局長(県土整備部河川整備課の鶴岡春美海岸砂防室長)と、モニタリング調査を実施している県葛南地域整備センターの下原慶啓所長です。


■工事後、ツバサゴカイが20個体/m2に増えた?

 県は、三番瀬海域(市川側海域)の一部をつぶして護岸改修工事を進めています。モニタリング調査をやりながらの工事です。
 第12回護岸検討委員会に提示した調査結果では、護岸改修工事後に、前面海域の干潟で底生生物の一部が増えたという報告をしました。
 とくにツバサゴカイは、1m2あたり8個体だったものが、施工後約1カ月で20個体になったとのことです。
 この点について、牛野さんが傍聴席から、「ツバサゴカイが20個体に増えたとのことだが、棲管(せいかん)の数はいくつなのか」と質問しました。これに対し、県は「棲管数も20本」と答えました。
 しかし、ツバサゴカイは1個体が2本の棲管をもっています。そこで、牛野さんは「ツバサゴカイの棲管数と個体の数が同じというのはおかしい」と発言しました。
 そうしたら県は、次の第13回委員会で、20個体ではなく、「棲管数が8本から20本に増えた」と報告内容を訂正しました。


■1m2あたり棲管数20本は驚異的

 訂正はいいとしても、ツバサゴガイの棲管数が1m2あたり20本(つまり10個体)に増えたというのは、とても信じられません。三番瀬市民調査では、この海域でツバサゴカイをわずかしか確認できないからです。10m2に1個体確認できるかどうかです。
 全国的に見ても、ツバサゴカイは普通の干潟で見られますが、数は少ないとされています。だから、1m2あたり10個体も確認されたというのは、それが本当だとすれば驚異的なことです。
 さらに、このような貴重生物について、50センチ四方枠で計測した数を1m2あたりに単純換算するのはおかしいことです。
 そこで、牛野さんが次の3点を要請しました。
  1. ツバサゴガイの棲管が1m2当たり20本になったということを示す写真を添付すること。(県は写真を提示していません)
  2. その現場を見学させてほしい。
  3. 50センチ四方枠での計測を1m2あたりに単純換算することが適当なのかどうかについて答えてほしい。


■あいまいな回答内容

 この要望書に対し、6月18日に回答がありました。
 「調査ではダイバーが潜水し、海底の浮泥やゴミを払い除けた後に目視観察で棲管数を確認しております」とし、写真も添付されています。しかし、写真ではツバサゴカイの棲管らしきものは1本も見てとることができません。これでは、本当に1m2あたり20本もいるのかどうか疑わしいものです。
 また、確認数の表示方法については、「皆様が理解し易いように1m2に換算表示しているものです」「専門家のご意見を伺いながら検討してまいりたい」という回答です。
 調査にあたっては、底生生物にくわしい専門家の指導やアドバイスを受けてもらいたいものです。
 以下は、要望書と回答の内容です。




要望書



2007年5月31日

 市川海岸塩浜地区護岸検討委員会
   事務局長  鶴 岡 春 美 様
 千葉県葛南地域整備センター
   所   長  下 原 慶 啓 様

千葉県自然保護連合
代表 牛野くみ子


 日頃は県民のためにご尽力されていますこと、誠にありがとうございます。
 さて、第12回護岸検討委員会において、ツバサゴカイのモニタリング調査結果について傍聴発言した牛野と申します。
 第13回委員会では、「ツバサゴカイの正確な個体数が確認されないので、棲管数で表記した」と資料が訂正されていました。ありがとうございます。
 モニタリング調査結果は今後の評価委員会で評価されます。したがって、下記について考慮していただきたいと思います。ご回答は6月11日までにくださるようによろしくお願いいたします。


  1.  護岸改修工事の施工後、ツバサゴガイの棲管が1m2当たり8本が20本に増えたとのことですが、これは驚異的なことですので、その棲管の写真を添付してください。
  2.  上記1の現場を見学させてください。
  3.  上記1は50センチ四方枠で計測したとのことですが、表記は1uになっています。しかし、ツバサゴカイのような生物は、このように単純換算するのは適当でないと考えます。この点について見解をお示しくださるようにお願いします。




県などからの回答



平成19年6月18日

千葉県自然保護連合
 代表 牛野くみ子 様

市川海岸塩浜地区護岸検討委員会
事務局長  鶴 岡 春 美
千葉県葛南地域整備センター
所   長  下 原 慶 啓


 本県の土木行政につきましては、日ごろ格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
 さて、このたび市川海岸塩浜地区護岸検討委員会のモニタリング調査に関する貴重なご意見を頂きまして誠にありがとうございます。
 市川海岸塩浜地区護岸の回収事業につきましては、三番瀬再生計画(事業計画)に基づき、護岸改修工事に伴う周辺海域への影響を確認しつつ工事を進めているところでございます。
 工事の実施にあたりましては、市川海岸塩浜地区護岸検討委員会等の意見を踏まえ、より良い工夫を施しながら三番瀬再生計画(実施計画)を策定するとともに、護岸の早急な安全確保に努めてまいりますので、今後ともご理解とご協力を賜りたいと考えております。
 また、ツバサゴカイに関するご質問への回答につきましては、下記のとおりです。
 

  1.  ライントランセクトによる現地モニタリング調査時の写真は別添のとおりですが、水中の濁りがあるために写真判読は難しい状況です。調査ではダイバーが潜水し、海底の浮泥やゴミを払い除けた後に目視観察で棲管数を確認しております。
  2.  ツバサゴカイの確認位置につきましては、別添図のとおりです。
  3.  確認数の表示方法につきましては、皆様が理解し易いように1m2に換算表示しているものです。今後の市川海岸塩浜地区護岸検討委員会等への報告につきましては、専門家のご意見を伺いながら検討してまいりたいと考えております。





回答書に添付された写真。写真では、ツバサゴカイの棲管を1本も確認できない。





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