これ以上海域を狭めないで、生物多様性などの回復力を図り、
 早期にラムサール条約登録湿地にすることこそ、
 豊かな海をとりもどす道

   〜三番瀬署名ネットなどが「干潟を守る日2006宣言」〜




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 1997年4月14日、それは長崎県の諫早湾が干拓事業のために閉め切られ、広大な干潟とそこに棲む生き物たちが消滅することになった日です。その日を忘れることなく、諫早干潟の回復や、各地の干潟・湿地の保全を進めていくために、日本湿地ネットワーク(JAWAN)では、4月14日を「干潟を守る日」とする全国的な湿地保全キャンペーンを毎年実施しています。
 今年も全国各地で「干潟を守る日」のイベントが開かれました。千葉では、「千葉県野鳥の会」や「三番瀬を守る署名ネットワーク」などが、三番瀬、谷津干潟、小櫃川河口干潟(盤洲干潟)の観察会やラムサール条約締約国会議(COP)報告会などをおこないました。
 以下は、集会「COP9(第9回ラムサール条約締約国会議、ウガンダ)からの報告」(4月8日、三番瀬を守る署名ネットワークなど主催)で採択された「干潟を守る日2006宣言」です。




 

宣 言 文





干潟を守る日2006宣言


 2005年11月にウガンダのカンパラで行われた、湿地保護の国際条約であるラムサール条約の締約国会議で、日本はあらたに20カ所の湿地を条約湿地として登録して世界から称賛されました。中でも、汽水湖のシジミ漁を干拓や淡水化から守りぬいた宍道湖(しんじこ)・中海(なかうみ)の指定は、ラムサール条約の伝統的漁業に対する考えを明確に示すものとして重要です。

 もうひとつの重要な指定は宮城県田尻町の「蕪栗沼(かぶくりぬま)と周辺水田」です。数年前までは「ガンの食害」を懸念する農家の反対がつよく、登録は困難と見られていたのに、日本雁を保護する会や蕪栗ぬまっこクラブの活動で、「ふゆみずたんぼ」による無耕起栽培の成功と、ラムサール条約の意義が理解され、ガンの渡来地としての蕪栗沼だけでなく、周辺水田を含めて田尻町をあげての登録推進に転換したのです。日本で初めての水田の指定は、モンスーン型アジアの水田と持続型農業が持つ価値と重要性を示す象徴的存在として、2008年に韓国で行われるラムサール会議で、世界にアピールされることでしょう。

 しかし、そうしたうれしい進展の陰で、危機感を深めているところも少なくありません。
 諫早(いさはや)、泡瀬(あわせ)、吉野川、博多湾では、理不尽な開発が強行され、一時は希望も見えた諫早の裁判も、「司法の独立」への疑いと、道理が通らない虚しさを募らせています。今回候補には挙げられながら登録へ進めなかった多くの湿地をはじめ、全国各地のかけがえのない干潟や湿地に依然として開発の脅威も迫っています。一般には保全されたと理解されている釧路湿原や三番瀬(さんばんせ)でも、「自然再生」事業の名目で、従来型の公共事業が継続されたり、されようとしており、同様の懸念が全国的に高まっています。

 21世紀の目標である「持続的社会」への転換は、まだまだなのです。
 しかし、先にあげた2つの事例、漁業と農業の持続的発展に向けてのあたらしい展開は、私たちに希望を持たせます。昨年、兵庫県の豊岡市で試験放鳥が行われたコウノトリの野生復帰も、彼らの餌場である水田が、かつての姿を取り戻せるか否かにかかっています。普通の水田にあたりまえにいた、多様ないのちの復活こそが鍵なのです。
 今や多くの人々が、私たちのくらしや社会が小さないのちのつながりに支えられていること、山、川、里、海の、流域のつながりを見ることの大切さに気づいています。
 1997年に諫早湾が閉め切られた日である4月14日「干潟を守る日」は、生きものたちとふれあい、いのちの視点に立つ機会です。
 湿地をいたずらに破壊してきた開発事業などの人間の活動を見直して、かつてあった、豊かないのちのつながりを取り戻し、次の世代に伝えていくことを、ここに集う全国の仲間とともに決意し、その思いを広げていくことを宣言します。

《追記》
 東京湾の三番瀬は、三番瀬再生会議において検討されていますが、市川市で海へ張り出した石積み護岸を築造する計画を決定し、さらに浅海域において人工干潟などを計画し、また、第二東京湾岸道路計画が進められていることは、まさに「再生事業」の名による自然環境の破壊をもたらすものです。
 いま三番瀬は、これ以上海域を狭めないで、生物多様性などの回復力を図り、早期にラムサール条約登録湿地にすることこそ、豊かな海を取り戻す確かな道となるでしょう。

 2006年4月8日


日本湿地ネットワーク
干潟を守る日「COP9からの報告、そしてCOP10(韓国)に向けて」
集会参加者一同



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