三番瀬・盤洲干潟の保全のあり方を議論

〜シンポジウム「どう守る! 干潟の生きもの」〜




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 「どう守る!干潟の生きもの」と題したシンポジウムが2005年2月20日、千葉県立現代産業科学館で開かれました。このシンポは、19日から27日(日)まで開かれている「三番瀬・盤洲 干潟展」の関連企画です。
 パネリストなどは次のとおりです。
 ・パネリスト
   浅野正富氏  (日本湿地ネットワーク 弁護士) 
     望月賢二氏 (県立中央博物館副館長) 
     小嶌健仁氏  (三番瀬市民調査の会) 
     御簾納照雄氏 (小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会) 
 ・コーディネーター 
    伊藤昌尚氏   (日本湿地ネットワーク) 
 ・総合司会
     田久保晴孝   (実行委員長 三番瀬を守る会) 

 パネリストは次のようなことを述べました。

◇浅野正富氏
     日本の干潟は、第2次世界大戦前は8万2621haあったが、その後、3万1178haが消失し、現在は8万2621haになってしまった。消滅率をみると、全国の37.7%に対し、東京湾は82.6%である。東京湾は、埋め立てによって干潟が約90%も消滅してしまった。そういうなかで、三番瀬は東京湾に奇跡的に残された干潟・浅瀬である。
     ラムサール条約の湿地保全原則は「賢明な利用」である。三番瀬や盤洲干潟の賢明な利用という場合、代替不能なものを次世代に残していくことがすべての前提になる。
     三番瀬の保全のあり方を検討するうえでは、埋め立て計画を中止した際の論点を再確認することが必要である。それは、つぎの3つである。
    • 三番瀬は東京湾全体にとってかけがえのない海域である。
    • 三番瀬の猫実川河口域は、ヘドロで汚れた海域ではなく、多様性豊かな海域である。
    • 人工干潟は、いまある干潟や浅瀬にとって代わるものではない。すでに干潟や浅瀬が消失した場所で復元すべきである。
     三番瀬の保全・再生を考える場合は、以上の論点を確認し、そこから出発すべきである。
     また、再生は順応的管理の手法をとりいれることが必要である。順応的管理というのは、端的にいえば、人間の能力の限界をつねに自覚するということである。三番瀬や盤洲干潟を保全するうえでは、東京湾の自然をこれ以上破壊しないという謙虚さをもつことがなによりも大切である。


◇望月賢二氏
     現在の三番瀬は、自然科学的にいえば“干潟ではない”というのが私の意見である。
     三番瀬にいる生き物の99%は、干潟がなくても生きていけるという生き物ばかりである。
     三番瀬は豊かであるという言い方がよくされるが、それは、自然がギリギリまで壊れてしまった東京湾の中で相対的に良い場所であるという二重性をもっている。それを冷静に見ないと、どこまで良くしていけるかという可能性を忘れてしまう。可能性が100あるのに、1か2か3しか想像できなくなる。100にしようという議論がでてこない。
     本来の干潟は、川から大量の土砂や水が海に流れ込み、一方で土砂が波や海流の影響で流出するという、両者のバランスでできている。川の水ばかりでなく、地下水が湧き出し、淡水・汽水・海水が複雑に混じり合った場所である。また、本来の干潟は陸側に豊かな水が湿地がある。ようするに、後背湿地に豊かな水があって本来の干潟がつくられるということだ。
     しかし、現在は、三番瀬も盤洲干潟もそうした状況が失われており、自然干潟としては最後の段階となっている。


◇小嶌健仁氏
     以前は、藤前干潟の調査をやっていた。いまは三番瀬・猫実川河口域の調査に参加している。この海域を調査しての感想は、「藤前干潟よりもいいぞ!」ということだ。藤前干潟がラムサール条約の登録湿地になるのならば、ここも登録されておかしくない。
     猫実川河口域にはいろいろな生き物がいる。たとえば植物のオゴノリがはえていて、そこにさまざまな生き物が付いている。いちばんビックリしたのは、カキの集団ともいうべきカキ礁の存在だ。カキが泥干潟の上に立ちあがっている。カキの上に別のカキがいくつも立ちあがっている。たくさんの生きたカキを見たときは、ビビってしまった。
     カキ礁のすき間には、ヤドカリの仲間など、いろいろな生き物が入り込んでいる。千葉県のレッドデータブックに掲載されているウネナシトマヤガイもゴロゴロいる。その数は、1平方メートルあたり300個体である。
     カキの株がどんどん大きくなって、発達している。そんな海域はすごいと思う。同時に、そんなところを埋めるのは論外だというのが、率直な感想である。
     「“環境再生”とか言って、こんな場所を再生の場所に使うなよ!」とはっきり言いたい。
     望月さんは、三番瀬は干潟ではない、と言われた。その言い方でいえば、たとえば藤前干潟も干潟ではないということになる。藤前干潟の後ろは堤防と工場である。
     今の三番瀬は藤前干潟と状況がよく似ている。藤前も、かつては、そこを埋めて人工干潟をつくるというプランを名古屋市が打ちだしていた。
     いま残っている干潟や浅瀬は残すべきというのが私の考えである。


◇御簾納照雄氏
     盤洲干潟は、この4、5年ほどの間に大きな変化が生じている。温泉施設とホテルが開業して以来、底生植物のシオクグは激減した。鬱蒼(うっそう)とした群落はほぼなくなった。先端が枯れ、根腐れも進んでいる。
     同じく底生植物のハママツナも激減している。数年前までは2カ所あった大きな群落がなくなってしまった。アシ原の後退も進んでいる。ここ数年で3〜4mは後退している。また、ノリやアサリの減収も問題になっている。
     こうした現象の原因は、ひとつは、温泉施設とホテルによる温排水と思われる。その量は、日量1000トンにおよぶ。もう一つは、東京湾アクアライン(横断道路)の建設による潮位や潮流の変化である。
     私たち「小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会」は、水質調査などを続ける一方、これ以上の負荷を干潟に与えないことをめざして運動している。
     地域住民の干潟に対する関心はまだ十分ではない。しかし、地元の小学校が地域の自然学習教材として盤洲干潟を取りあげ、また、干潟保全に積極的にとりくんでいる。これは救いでもある。大人たちへの広がりを期待している。

◇           ◇

 このあと、三番瀬や盤洲干潟の現状をどうみるか、あるいは、どのような対策が必要かなどについて、パネリスト同士や、参加者との間で意見が活発に交わされました。







シンポジウムには60人が参加。








パネリスト、コーディネーター、総合司会のみなさん。








「三番瀬・盤洲 干潟展」の入り口








展示場はシンポジウム開催日(20日)も盛況でした。








干潟の生きものの絵と三番瀬・盤洲干潟の砂を組み合わせた絵葉書づくり。子どもたちに人気です








「生きものがつくる干潟の楽園」とタイトルをつけた三番瀬市民調査の展示。猫実川河口域の5000平方メートルに広がるカキ礁や、深さ3メートルにおよぶアナジャコの巣穴の絵(実物大)などを展示しています。









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