一部委員は海の人工砂浜化を相変わらず主張

〜第14回三番瀬「護岸・陸域小委員会」の報告〜



トップページにもどります
「ニュース」にもどります
「三番瀬円卓会議」にもどります
「人工干潟」にもどります


 (2003年)7月17日の夜、三番瀬「護岸・陸域小委員会」(円卓会議の下部組織)の第14回会合が市川市内で開かれました。議題は次のとおりです。
(1)護岸・陸域小委員会のとりまとめ
 ・各ワーキンググループ(浦安、市川、船橋)の開催状況
 ・各ワーキンググループのとりまとめの確認
 ・その他
(2)海域小委員会との連携について
(3)円卓会議への提案
 ・各ワーキンググループのとりまとめの確認
(4)その他
 ・市川塩浜地区の護岸における市川市の緊急対応


●市川の護岸・海岸線のあり方をめぐって議論

 大きな議論になったのは、やはり、市川側海岸をどうするかでした。
 「市川ワーキンググループのとりまとめ」(案)の中には、「護岸・海岸線のあり方」として次の事項が盛り込まれていました。

《護岸・海岸線のあり方》
 護岸・海岸線については、次の事項のすべてを満たす状態とすべきである。
  • 現在の海岸線は基本的に動かさない。
  • 海岸保全区域は現在の海岸線の位置に幅をもった形で設定する。
  • 護岸の高さは海に親しめる高さとする。
  • 遊歩道を設け、区域に応じたバリエーションが豊かな海岸線とするなど、海に親しめるような魅力ある海岸線とする。
  • 市川所有地付近での湿地再生、猫実川における湿地・干出域の再生など、自然再生の場を確保する。
   〈その他の項目は省略〉


 こうしたとりまとめをイメージするたたき台の図として、コンサルタント会社から護岸のイメージ図がいくつか提示されました。図は、「現在の海岸線は基本的に動かさない」を前提にしたものなので、直立護岸タイプや石積み護岸タイプの親水護岸の絵になっています。
 市川市所有地をくりぬき、そこを簡単な入り江状態にする絵も示されました。


●石積み護岸のイメージ図を批判
  〜一部委員は猫実川河口域の人工海浜化を強く主張〜

 しかし、三番瀬海域(猫実川河口域)に砂を入れて人工海浜をつくるべきと主張している委員らにとっては、このイメージ図はまったく気に入りません。「夢がない」「これでは市民が海に親しめない」などと批判する意見がだされました。
 やりとりの一部を紹介します。


◇伝田和幸委員(市川市在住、一般県民)
 「コンサル会社が描いたこのイメージ図は夢がない。画一的であり、子どもたちに引き継ぐ海岸としては夢がなさすぎる」
(伝田委員は、松林の前に海が広がっている他の海岸や、葛西臨海公園の写真などをみせながら、そういう海岸にすべきと主張した)


◇佐藤フジエ委員(市川商工会議所会頭)
 「伝田委員の言われるとおりだ。石積み護岸は全く夢がない。このイメージ図をみただけで、親は危ないと感じ、子どもたちをそこに行かせようとしないだろう。伝田委員が横浜の『海の公園』などの写真を示されたが、そのような海岸にしてほしい。市民が海に親しめるような海岸にし、子どもたちが水際を上手に使って遊べるようなものにしてほしい。この点については、私たちは絶対に譲れない」


◇磯部雅彦氏(オブザーバー、東京大学大学院教授)
 「今回のイメージ図は、護岸の幅は7メートルしか確保できないということを前提にしたものである。もし20メートルぐらい確保できれば、もうちょっと違った絵が描ける。必要ならば、そこまでの自由度を考えながら、再度、絵を描いてもらえばよい。ただしその際、後ろの土地はすぐには買えない。したがって、可能性としては、海側に10メートルぐらい出す必要が生じるかもしれない」


◇大浜 清委員(千葉の干潟を守る会代表)
 「浦安、船橋のワーキンググループ(WG)と比べて、市川WGは議論の内容がかなりちがっている。たとえば、浦安WGでは、自然再生という提案が明確にされている。ところが、市川WGは全体としてはそういうふうな議論になっていない。浦安WGでは、後背地での土地確保についても提起されている。しかし市川WGでは、アプリオリ(先天的)に土地の確保はむずかしいとなっている。浦安と船橋のWGでは、海と陸の連続性についてもまじめに議論されている。鳥の生息環境についても議論されている。ところが、市川WGはそうしたことがあまり議論されない」
 「市川塩浜地区では市民が海に出られないという話はよくわかる。しかし、ここの海域は泥干潟であり、危険である。子どもたちが海におりられるようにするためには、泥干潟を砂浜につくりかえる必要がでてくる。このように、子どもが海に親しめるようにするという場合も、海の特性をきちんと考える必要がある。したがって、市民がもっと海に親しめる海岸にする場合は、今の海岸線はこれ以上前に出さず、後ろの土地を確保してやるべきである」


●「海に砂をいれて人工砂浜ができないのなら、
   その理由をはっきりさせてほしい」

◇市川市の住民(傍聴者)
 「今回提示されたイメージ図を見て、腹立たしく感じた。このような議論がすすんでいったら、市川市民が願っていることが実現するかどうかははなはだ疑問だ。議論で欠けているのは、海岸は市民の遊び場であるということだ。海を市民が親しめるようなものにしてほしい。市川市民は海があることを知らない。なぜかというと、直立護岸で断ち切られているからだ。どうすればいいかというと、一つは、やはり海に砂浜をつくってほしい。(猫実川河口域)には砂浜はつくれないという意見もだされているが、そんなことはない。もう一つは、海浜公園をつくるべきだ。ふなばし三番瀬海浜公園(船橋)や幕張の浜(千葉市)、稲毛の浜(同)のようなものをつくってほしい。猫実川河口付近の海に砂を入れて海浜公園をつくるべきだ。それができないというのなら、なぜできないのかという理由をはっきりさせてほしい」


◇岡本孝夫委員(護岸・陸域小委員会コーディーネーター、浦安市自治会連合会会長)
 「コンサル会社が描いたイメージ図は、あくまでもたたき台にすぎない。各WGのとりまとめ(案)を円卓会議(親会議)にあげたいので、了解をお願いしたい」


◇佐藤フジエ委員
 「コンサル会社から提示されたイメージ図はあまりに夢がない。私は最初から、海岸線を上手に使うために(海に砂を入れて)砂浜をつくってほしいという意見を述べている」


◇竹川未喜男(傍聴者、千葉の干潟を守る会)
 「さきほど市川市民の方から、市民が親しめる海にすべきという意見があった。この点で、市川WGでは、漁協が塩浜1丁目地先につくった養貝場を利用したらどうかという話がでている。ここは面積が20haもある人工干潟である。ここに立派な橋をかけ、市民が利用できるようにすればいいと思う。市川WGの議論状況の報告では、この点がぬけている」


◇岡本孝夫委員
 「各WGのとりまとめ案を円卓会議にあげることについて、ご理解をお願いしたい」


●「泥干潟は泥干潟として残してほしい」

 こうしたやりとりの結果、結局、各WGのとりまとめ(案)を円卓会議にあげることになりました。
 なお、会議の最後に、会場から市川市民の星野亘良さん(市川三番瀬を守る会)が次のように発言しました。
 「さきほど市川市民の方が泥干潟に砂を入れて人工砂浜をつくるべきと言われた。私も市川市民であるが、私は泥干潟は泥干潟として残してほしいと願っている。そのことが生物の多様性につながると考える」

(文責・千葉の干潟を守る会)   







 
★関連ページ

このページの頭に戻ります
「ニュース」のページにもどります
「三番瀬円卓会議」のページにもどります

トップページ | 概 要 | ニュース | 主張・報告 | 行政訴訟 |
資 料 | 催し物 | 干潟を守る会 | 自然保護連合 | リンク集 |