三番瀬円卓会議が「中間報告」




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 「三番瀬再生計画検討会議」(円卓会議)は、約1年間の議論を集約した「三番瀬の再生に向け ての中間とりまとめ(中間報告)」を(2002年)12月25日に発表し、堂本知事に報告しました。
 「中間報告」の内容は以下のとおりです。添付資料や2つの小委員会(海域、護岸・陸域)の中間報告などは千葉県庁のホームページをご覧ください。


三番瀬円卓会議の中間報告



三番瀬の再生に向けての中間とりまとめ


はじめに

 三番瀬は東京湾に残された数少ない貴重な干潟・浅海域です。約1600ヘクタールにおよぶこの地域には今なお多様な生き物が生息し、渡り鳥の中継地としても重要な役割を果たしています。また、きれいな海と豊かな自然が復活すれば、この地域一帯に新たな価値を生み出すことになります。
 東京湾は時代とともに変化してきました。戦後経済の高度成長期を経て、埋め立てが進み、横須賀港から富津岬までのうち自然海岸は5%以下となりました。しかし、バブル経済の破綻以後、単純な右肩上がりの経済成長は望めなくなり、安定した生活が求められるようになりました。そして、地球環境の悪化が知られるようになり、環境や自然についての人々の考え方に変化があらわれるようになりました。
 三番瀬に対する取り扱いも、こうした時代の流れの中で、埋め立てから再生へと変化してきました。
 私たち三番瀬再生計画検討会議(以下「円卓会議」といいます。)では、住民参加という新しい考えのもとに、千葉県民の英知を結集する形で、この1年、議論を重ねてきました。円卓会議の下に、海域と護岸・陸域小委員会を設置し、具体的な意見の集約を図ってきました。
 その結果、「20年後、50年後になって、あの時、良い決断をしてもらった」と喜ばれるような再生計画を練り上げたいという共通の目標が定まり、「できうる限り自然を保全する」ことを基本としながら、いくつかの重要な決定をしてきました。
 本文にありますように、私たちはまず、再生の概念を定め、5項目の目標を作りました。それに基づいて干潟・浅海域の浄化を進め、より多くの生き物が棲む三番瀬にすること、青潮対策を進めること、アサリが採れ、漁業が活発になるための取り組みを進めることなどを決めました。谷津干潟や行徳湿地と三番瀬との有機的な結合を図ること、新たな街づくりや護岸のあり方を検討するにあたって自然環境に配慮した沿岸域とすること、環境教育・学習のための自然とのふれあい拠点づくりを進めることにしました。さらに、三番瀬を末永く保全するための条例などの仕組みづくりを進めることにしました。
 一方、いくつかの点で意見がまとまりませんでしたが、これは2003年に入って具体的な検討を進めながら議論を詰めていくことになりました。
 三番瀬そのものの議論とともに、住民参加という新しい方法論に取り組んだことも重要なことでした。試行錯誤を重ねながら、委員も市民も行政側もそれぞれ勉強をし、新たな知識と経験を得ることができました。11月には住民参加についてのシンポジウムを開きました。日本では非常に新しい試みですが、一歩ずつ前進してきたという確信があります。

 1年間の議論をとりまとめ、中間報告としましたが、円卓会議は2003年度まで継続をし、千葉県知事に具体的な答申を提出する予定です。2003年はこの中間報告を受け、海陸両サイドで具体的な再生計画案を順次作っていく予定です。すでに合意が得られているところから具体策をまとめ、現在、意見が不一致の件も2003年度中には何らかの結論を導き出したいと考えています。
 堂本知事をはじめ千葉県の職員、毎回参加された多くの市民の皆様、オブザーバーおよび関係者の方々のこの1年間のご協力に深く感謝いたします。ゴールまでの折り返し点に立ったわけですが、残る半分はこれまで以上に厳しい議論が待ち受けています。円卓会議委員一同、闊達な議論を通して、将来にわたり県民および国民に喜ばれ、誇りに思われる三番瀬を作っていきたいと考えています。

 2002年12月25日

三番瀬再生計画検討会議
会 長 岡島 成行




1.市民、子どもたち、漁業者がその恵みを享受できる、
  貴重な自然である三番瀬を後世に残そう

 〜三番瀬の再生に向けて〜

 東京湾内で大潮の干潮時に干上がる干潟は約1,600ヘクタールほどあります。明治期にあった干潟の9割ほどが埋立てなどで喪失しました。その中で、三番瀬は東京湾奥部、江戸川放水路河口に残された干潟・浅海域であり、様々な生物が存在し、渡り鳥が羽を休め、伝統的な漁業が営まれ、人々にやすらぎを与える貴重な自然です。一方、三番瀬は、1960〜70年代の埋立て、干潟域の地盤沈下、近隣の河川河口から岸沿いに流れてくる淡水の減少、背後地からの負荷の流入、青潮の進入などにより環境が悪化し、代表的な生物であるアサリも減少してきました。

 1980年代以降、三番瀬では市川二期地区・京葉港二期地区の埋立て(740ヘクタール)が検討され、1999年には湾岸道路・下水道終末処理場・新しい街づくりの事業のための埋立計画(101ヘクタール)が提案されました。そして2001年(平成13年)、千葉県民は、三番瀬の埋立計画を白紙に戻し三番瀬の再生を図ることを掲げた堂本氏を知事に選出しました。過去と現在の三番瀬の環境や生物の関係を可能な限り科学的に明らかにし、住民参加によって三番瀬を再生する計画を立て、計画の実施に伴う環境悪化を防ぐために環境への影響を予測しつつ、必要な対策を行い、より豊かな三番瀬の復活をめざし、その恵みを次世代へと引き継ぐ道を選んだのです。しかし、これを実現するには、高密度で活発な都市活動や市民生活から生じる様々なマイナスの作用、都市を流れて海に注ぐ河川や背後地の土地利用の影響、赤潮・青潮などの起きる富栄養化の進んだ東京湾からの影響など、首都圏に存在するゆえの困難さがあります。災害への備えや海の利用との調整も考える必要があります。さらに費用の負担や県民の協力体制づくりも考える必要があります。三番瀬再生計画検討会議(以下「円卓会議」といいます。)では、環境悪化をもたらした反省を踏まえて、さまざまな困難を克服し、よりよい三番瀬の再生を図ろうとしています。発足以来の一年弱の検討をふまえ、以下の三番瀬再生計画の中間的なとりまとめを行いました。


 〜円卓会議設立の経緯〜

 円卓会議は以下のような経緯のもとに組織されました。  堂本知事は、「現行の埋立計画は一旦白紙に戻し、自然の保全と、地域住民が親しめる里海の再生を目指す新たな計画を、市民参加のもとに作り上げる」(2001年(平成13年)4月臨時千葉県議会での知事あいさつ)として、「三番瀬は東京湾に残された貴重な自然であり、その干潟を守り、そして自然を再生すべきである。」(2001年(平成13年)9月定例千葉県議会での知事あいさつ)と宣言しました。

 この計画検討のために、円卓会議が2002年(平成14年)1月に組織されました。
 この会議に先立つ準備会で、知事は「止まった公共事業を今度は完全な住民参加の形で策定する」とし、また2002年(平成14年)1月28日の第1回円卓会議の席上で、「徹底した住民参加と情報公開、そして国や県や市やいろいろな専門家も含めみんなで向き合って、これから先のことを検討し次の段階のプランを立てる」「政策提言型の民主主義の実践を成功させたい」と述べました。設立された円卓会議のきまりや構成メンバー・会議開催の足跡は、添付資料にまとめて示してあります。


2.再生の基本的な考え方

 〜科学的な調査に基づき再生の概念を決めました〜

 三番瀬は人々の生活や活動とともにあり、三番瀬の環境システムの構成要素は様々にわたっています。そこで、円卓会議の第1回専門家会議(注1)では、できるだけ豊かな自然を取り戻していくという考えのもとで、三番瀬の再生の概念を、次のようにまとめました。
「三番瀬の再生においては、まず埋立計画が行われなくなったことの影響に対する手当を行う。そして、環境が悪化しているところがあれば正していく。これらにより、三番瀬の環境を維持・回復する。さらにそれを地域の向上につなげていく。これを実現するためには、可能な限り客観的データに基づいて、生態系・物質循環・食物網・水循環・流砂系・人間活動などがシステムとしてなめらかに働き、生物多様性が確保されるように努力する。この活動は市民・NGO・漁業者・利用者・行政・研究者などの友好的な協力(パートナーシップ)によって行われるものである。また、同時に、この活動を通じて三番瀬の将来を担う人材育成を行っていく。」
 この内容は、円卓会議にも提示されました。


 〜5つの目標を決めました〜

 円卓会議では、もう少し細かく再生の目標を整理する作業を行い、次の5つを再生の目標とすることで合意が形成されました。
  1. 三番瀬の豊かな生物相を守るための生物種や環境の多様性の確保
  2. 断ち切られているつながりを回復するための海と陸との連続性の確保
  3. 東京湾に残された貴重な干潟・浅海域である三番瀬保全のための環境の持続性と回復力の確保
  4. 継続的で安定した漁業を実現するための漁場の生産力の確保
  5. ふるさとの海として市民が親しめるようにするための市民と自然のふれあいの確保

 また、この5つの目標に向けてより具体的な対策検討を進めるために、11の項目に分けて議論を整理しました。より具体的な検討にあたっては次の4つの事項に留意することにしました。
  1. 自然の力を最大限引き出した自然回復を目指し、人間は自然の回復力をサポートする。その時には、人間の時間軸だけではなく、自然の営みや時間の流れを重視することが大切。
  2. 目標の設定にあたっては市民の理解を得て、市民の意見を反映させる。また、漁業者をはじめとして日頃海を見ている人の経験を聴き、科学的な調査を重視する。
  3. 対策の実施にあたっては、モニタリング(観察・記録)したり実験的に調査しながら、目標からずれてくるようなら実施のしかたや計画を手直しする、といった「学びつつ実施する」柔軟な実施や管理が必要。
  4. 緊急性があり、かつ、用が済んだり不都合になったら現状に戻せる(可逆性のある)対策は速やかに実施する。


  (注1)専門家会議
     円卓会議の要請に基づき、専門的な検討を行うための学識経験者
    による会議のこと。会議の構成メンバーや開催状況は、添付資料を
    見てください。




3.再生のために必要な項目の考え方

 〜11の項目について考え方をとりまとめました〜

(1)干潟・浅海域

 〜よりよい自然をめざします〜

 かつて干潟の豊かな自然が地域の人々を支えていた三番瀬は、埋立てによる面積減少と地盤沈下による干出域の減少、旧江戸川河川水との関係の断絶、地下水湧出量の減少、自然の要であった後背湿地の消失、河川・陸域の自然との連続性の喪失など、周辺の人為的改変により環境が大きく変化しました。このため汽水性の生物を中心に、生物の種数や量が大幅に減少するなど、生物にも大きな影響が出ています。
 一方で、東京湾内としては多くの生物が棲み、水の浄化に役立っているなど、今でも良好な自然が残る東京湾に残された貴重な干潟・浅海域の一つです。
 このため、三番瀬の歴史的変化に留意しつつ、生物種や環境の多様性を今よりも高め、改善することを検討する中で、三番瀬の自然がよりよいものになることをめざします。


(2)生態系・鳥類

 〜たくさんの生き物が育まれる三番瀬をめざします〜

 三番瀬内には、静穏性の強い市川側奥部から、波浪等の影響の強い縁辺部まで多様な環境があります。これに対応して多様な生物が棲み、それらが相互に影響しあったまとまりのある生態系を形成しています。
 また、三番瀬は、今でもシギ・チドリ類やカモ類などの多くの水鳥類が利用する重要湿地であり、ラムサール条約登録の対象になり得るものです。これは、餌生物が豊富に得られる自然と休息できる広い空間が残されているからです。
 一方で、周辺環境の人為的改変により、アマモ場やアシ原が消え、ハマグリやアオギスなどの汽水生物の多くが見られなくなるなど、その重要な構成要素が失われ、生態系に重大な変化が起きています。
 これからも、生物多様性を高めたよりよい生態系にするとともに、それによってより多数の水鳥類が利用する三番瀬をめざします。このとき、谷津干潟や行徳湿地などとも有機的に関連させます。


(3)漁業

 〜安定した漁業資源の回復と漁場再生をめざします〜

 昔は、干潟の豊かな自然に支えられて多様な漁業が営まれ、採貝における底質の耕耘など、漁業をとおして環境維持への貢献もしてきました。しかし、埋立ての進行などの結果、漁業資源の悪化が進むのに伴い多種類の漁業が消滅しました。現在ではアサリ漁とノリ養殖を中心に営まれていますが、アサリ資源の減少、ノリ生育環境の悪化、青潮や増水時の放水による影響などに直面しています。
 このため、青潮や増水時の放水などによる影響を軽減したり、なくしていくための対策に取り組むとともに、安定した豊かな漁業資源を回復するための対策に取り組み、漁場を再生し、多様な漁業が継続してできる三番瀬の実現をめざします。


(4)水・底質環境:海水・淡水・底質

 〜海水・淡水と底質環境の改善をめざします〜

 三番瀬は、埋立てなどにより旧江戸川河川水との関係が絶たれたことと地下水の湧出の減少で、汽水環境がほとんどなくなるとともに、砂泥の流入が大変少なくなっていると考えられます。また、埋立地の出現などにより北西部の静穏域が形成され、そこの底質の泥質化がおこっています。また、波浪などの影響により、周辺部にいくほどより粗い砂底になっています。
 三番瀬の水質・底質環境のこれらの変化が、三番瀬の生物相の変化をもたらしています。
 これらの項目のより詳細な調査・検討をとおし、水質・底質環境の改善の方法について考え、取り組んでいきます。


 〜水質をよくし、青潮対策を進めます〜

 浚渫窪地や沖合の底層で夏に発生する貧酸素水が、北寄りの風により湧き上がり、青潮となって流入することにより、三番瀬の自然に大きな影響を与えています。この貧酸素水の発生原因として、河川水中に栄養塩類などが多いこと、干潟の減少などによる浄化力の低下、浚渫窪地の存在などがあることが分かっています。
 このため、海域小委員会(注2)では、これまで青潮に関する情報を整理するとともに、広く集めた対策案の検討を進めてきました。その結果、2003年(平成15年)には、緊急に取り組むべき課題と中長期的に取り組む課題に整理したうえで、発生起源や規模、流入経路などに留意しつつ、被害の防止や軽減、水質をよくすることを含めた発生原因の除去などについて調査・検討を進めることにしました。また、可能になった対策から速やかに実施していくことにしました。
 国・湾岸自治体などによる東京湾全体での改善努力とも連携し、青潮対策を進めていきます。




   (注2)海域小委員会
       円卓会議の要請に基づき、青潮などの海域の環境や再生に
      関する検討をする小委員会のこと。会議の構成メンバーや開
      催状況は、添付資料を見てください。




(5)海と陸との連続性・護岸

 〜海に親しめ、安全で、環境上望ましい護岸にします〜

 今の三番瀬は、海と陸の変化に富む自然なつながりが護岸によって断ち切られています。いかにして、海と陸の連続性を取り戻し、市民と自然のふれあいを確保するのかが、課題となっています。
 護岸のあり方については、十分な安全性を確保すること、人が海にふれあえるようにすること、環境の保全・回復上望ましいことというさまざまな課題を共に解決するように、検討を進めます。
 その際には、三番瀬の区域ごとに、どのような土地利用をしていくべきなのかを明らかにしつつ、各種のタイプの護岸を組み合わせて検討する必要があります。また、護岸の構造が海の環境のあり方に大きな影響を与えることを考慮することが大切です。
 今後、護岸・陸域小委員会(注3)で整理された複数の案について、広く市民をはじめとする関係者の意見を聴きつつ、絞込みを行っていきます。


   (注3)護岸・陸域小委員会
      円卓会議の要請に基づき、護岸などの陸域の対策や再生に関する
     検討をする小委員会のこと。会議の構成メンバーや開催状況は、添
     付資料を見てください。




(6)三番瀬に向き合う街づくり・景観

 〜三番瀬の再生と一体となった街づくりを考えます〜

 三番瀬を再生するという視点から、もういちど街づくりのあり方を考えることが必要です。周辺市で、都市計画や街づくりの見直しが進んでいることを踏まえて、関係の自治体と共同して市民参加のもとに三番瀬に向き合う街づくりを進めていきましょう。
 また、健全な生態系と適正な街づくりからなる、心の和む景観(ランドスケープ)づくりを進めていくことが必要です。
 護岸・陸域小委員会で整理された複数の案には、ゾーンごとの陸域の利用方法についても触れられています。これらの案について、どの方向が望ましいのか、広く検討を進めます。


(7)海や浜辺の利用

 〜市民が安全に親しめる三番瀬を取り戻します〜

 現在の三番瀬は、船橋海浜公園側が潮干狩りなどで利用されていることを除けば、市民が海とふれあいにくくなっています。市川側は、工業地域と直立護岸によって、三番瀬は、市民の生活から隔てられています。浦安側は、ふだんは立入禁止となっていますが、日の出前の干出域を潮干狩りなどで利用する人が多く、安全対策が課題です。さらに、船橋海浜公園の今後の利用の仕方を考えることも必要です。
 三番瀬を、ふる里の海として実感できるよう、市民が親しめ、安全に利用できるようにすることをめざします。このために、市民参加のもとに、三番瀬の利用のルールづくりや、そのモニタリングを行っていくことが必要です。


(8)環境教育・学習

 〜たくさんの市民や子どもたちに親しんでもらいます〜

 三番瀬は東京湾に残された豊かな海であり、渡り鳥をはじめさまざまな生物の生息・休息の場であり、漁業者にとっては豊かな漁場であると同時に、千葉県民や東京湾をとりまく首都圏の住民にとっては、かけがえのない自然とのふれあいの場として無限の可能性を持っています。
 三番瀬の再生にあたっては、三番瀬を市民や子どもたちの環境学習の場として整備をめざします。整備にあたっては、自然とのふれあい拠点(環境学習センター)の整備にさきだち、自然体験・環境学習の指導者養成が重要な課題であり、これには三番瀬の保全と再生に関わる多くの主体が参加することが望まれます。


(9)維持・管理

 〜市民の主体性を尊重し自治体との協働による三番瀬の維持・管理体制をつくります〜

 三番瀬の海には不法に係留された船が見られ、岸には廃車が捨てられるなど、こころない振る舞いによって、海辺の荒廃が進んでいます。これに対して、千葉県はプレジャーボートの不法係留の防止条例を作りました。また市民が主体となってクリーンアップ作戦が行われています。
 三番瀬を囲む市と県は、市民との協働によって海岸線の清掃を行うとともに、三番瀬の保全・利用にあたって、適切な地域区分や利用のルールづくりをすすめます。また、行政区分をこえた広域的な視点からの三番瀬の維持・管理体制を整えることも望まれます。また市民による監視のためのレンジャー制度の創設も提案されています。


(10)制度的担保・ラムサール条約

 〜三番瀬を守るための仕組みづくりをすすめます〜

 三番瀬を再生するためには、国や県、関係自治体が連携して、市民の参加のもとに、息長く取り組んでいくことが必要です。このために、三番瀬の再生のビジョンや理念、再生にあたっての各主体の役割、事業の実施や利用のルール、円卓会議の位置づけなどを明確にすることが重要であり、「三番瀬保全条例(仮称)」の制定などを視野において制度的担保をいかにはかるのか検討していきます。
 さらに、三番瀬には、ラムサール条約の登録の基準を満たす数の水鳥が渡ってきます。このような豊かな生態系を未来の世代にまで残すために、ラムサール条約の登録が受けられるよう、その保全の仕組みを考えることが必要です。


(11)広報

 〜多くの人に三番瀬を知ってもらえるようにします〜

 三番瀬の自然や円卓会議を多くの人に知ってもらうために、広報体制の充実をはかります。県民だよりや市民だよりなど、既存の広報手段との連携はもとより、三番瀬サテライトオフィスの設置や、インターネットの利用など、市民やNGO・NPO参加による新たな広報手段の開発を検討していきます。おまつりの復活など、多くの人が参加できる楽しい催しも提案していきます。




4.意見が一致しなかった点

 今までの議論のなかで、自然に対する考え方の違いなどから意見の一致しなかった部分(注4)があります。再生の計画面でのいくつかの大きな相違点は、以下のようなものです。
  1.  「今ある海域(浅場)には手をつけず、埋立地を削りアシ原や干潟を作る。
    海域では、再生の名の下に、かさ上げしたり干潟にしたりはしない。」という方法をとるのか、「環境修復のために、人が手を貸し、海に手を入れていく。例えば、現在の不自然な海底地盤を整形したり、岸辺に干潟を設けアシ原・干潟・地先の藻場を再生させる。青潮時の生物の逃げ場としての干潟整備や多様な生物が棲める多様な場の整備をすすめる。」という方法をとるのかの、目標実現手法の相違。

  2.  猫実川河口の状況は「今でも十分価値があるから、今の状況を大きく変えない。」ことがよいのか、「今はかなり劣化しているから、手を入れて改善する。」ことがよいのかの評価と対処方針の相違。

 意見の相違には、科学的データの不足や言葉の行き違いという要素の他に、三番瀬の現状や今の状態に至った経緯に関する重みの置き方の違いがあります。「もうこれ以上海をつぶさないようにしよう」という意見は、三番瀬が狭められながらも自力で修復し、ようやくここまで戻ってきたという点に注目しています。「自然を応援するような人の手の入れ方を考えよう」という意見は、今まで漁業者や市民団体などが守り少しずつ手を入れてきたことが三番瀬をここまで持ってきたという点に注目しています。猫実川河口については、平成8〜9年に補足調査を実施しましたが、現在比較などのための追加の調査を実施中です。

 意見の一致しなかった部分でも、「実験的にできるところから始めよう。」といった現実的な実施のしかたでは共通の認識が見られました。今後、円卓会議での議論をさらに深め、共通の考え方に整理できる点は整理していくことになります。どうしても対立してしまう意見に関しては、その意見の背景や、よってたつ考え方を整理し、併記して報告し、県民の判断に供するなどのプロセスを経て、最終的にひとつの計画となるような努力をしていきます。


   (注4)詳細は議事録をご覧ください。円卓会議等の議事録は、
       千葉県文書館行政資料室三番瀬コーナー(043-223-2658)、
       千葉県三番瀬サテライトオフィスでご覧になれます。また、
       千葉県ホームページ(三番瀬ホームページ)に掲載してあ
       ります。
       アドレスは、http://www.pref.chiba.jp/sc/sanbanzeです。




5.今後の進め方

 2003年(平成15年)は、この中間とりまとめについての地元市での説明会の開催をはじめ、広く県民の皆さんから意見を募集し、さらに議論を深めます。さらに、この中間とりまとめで整理された考え方や方向に沿って、小委員会やテーマ毎に設置する検討組織(ワーキンググループ)などで、より具体的な政策提言に向けた検討を進め、2003年度中に三番瀬再生計画案を作成していきます。
 また、2003年に取り組む調査等については、緊急に対応すべき項目として県に予算措置を要望している青潮対策、行徳湿地と三番瀬の連携、漁場の再生、海岸線の検討などをはじめ、各小委員会から報告された内容(「2003年の各小委員会の活動予定」を参照してください。)に沿ってすすめ、調査結果とその評価を公表します。
 今後、沿岸の市民や自治体・企業・国などと力を合わせ、提案をより具体的に検討し、新しい制度なども含めた魅力ある政策を提言したいとおもっています。



《参考文献》

 「市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る補足調査現況編」千葉県土木部、千葉県企業庁(平成11年1月)そのほかの参考となる資料については、千葉県文書館行政資料室三番瀬コーナーでご覧になれます。







 添付資料や2つの小委員会(海域、護岸・陸域)の中間報告などは次の千葉県庁のホームページをご覧ください。



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