船橋市長選候補者に

三番瀬に関する公開質問

〜千葉の干潟を守る会〜




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 「千葉の干潟を守る会」は船橋市長選挙(2001年6月24日投票)の4候補者に対し、三番瀬に関する公開質問をしました。
 大浜清・同会代表の報告と公開質問の内容、そして4候補者の回答を紹介します。


◆船橋市長選の候補者(回答到着順)
 ・坪内弘行氏(無所属、新)
 ・田久保しょうぞう氏(無所属、新)
 ・古閑雅之氏(無所属、新)
 ・ふじしろ孝七氏(無所属、現)


 

千葉の干潟を守る会代表の報告





2001年6月20日

三番瀬に心を寄せる皆様

千葉の干潟を守る会
代表 大浜清


 三番瀬埋め立て計画撤回を求める署名は28万に達し、三番瀬を守ろうという機運を大きく押し進めました。皆様のお力と感謝申し上げます。
 堂本知事になって、千葉県は三番瀬の未来像をもう一度探っておりますが、埋め立てから出発した従来の計画の残りかすをぬぐい去ることができるかどうか、県民の意思表示がますます大事となって参りました。
 沿岸3市(船橋・市川・浦安)も、ラムサール条約登録湿地指定を視野に入れる一方、従来計画の101ヘクタール埋め立てや人工海浜計画は簡単に捨てかねています。
 ちょうどこのような時期に各市の首長選挙が始まりました。第1陣として船橋市長選挙が6月24日に行われます。
 本会では、次期船橋市長に立候補された4人の方に公開質問状をさし上げ、三番瀬施策について抱負をおたずねしました。きわめて短い期間で、多忙を極める中でしたが、4人の方すべてから御回答をいただきました。感謝します。
 御回答を拝見しますと、三番瀬保全、ラムサール条約支持、という大筋の方向は、もはやゆるぎないものになったといえます。その中で、4人の方にはそれぞれのニュアンスがあり、またうれしいことには、独自の考えや提案でこれを深めていこうとする動きが見えると思います。それは、これから、私たちはどのような三番瀬と、どのような町を望むか、どのようにすれば末長く三番瀬を守っていくことができるか、という対話を市民の間で、さらには市民と行政の間で深めていくのに、きっと役立つと存じます。
 御回答は、そのままの形で皆様にお伝えして、市政指導者を選ぶ御参考に供するとともに、回答者の御厚意に応えたいと存じます(配列は御回答の到着順)
 今年9月15、16両日には、市川市和洋女子大をお借りして、「2001国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬」を開きます。では、よき門出を。






船橋市長選4候補者への公開質問





2001年6月13日

船橋市長選挙立候補予定者の皆様

千葉の干潟を守る会
代表 大浜 清


拝啓
 干潟にいのちみなぎる季節となりました。環境月間でもありますこの6月に、三番瀬にのぞむ町船橋の市長選挙を迎えますことは、まことに意義深く存じます。ことに現在、三番瀬保全の将来展望について、ラムサール条約参加が沿岸各市共通の重要課題となっておりますことは、実にうれしいことです。ラムサール条約へのとりくみは海辺の町づくりに大いなる指針を与えるものと存じます。
 私たちは1971年より30年間、東京湾の干潟と環境保全にとりくみ、1980年代以来「三番瀬」保全を訴え、1991年以来ラムサール運動を推進してきました。それは、市民の立場に立ち、将来の子どもたちと言葉をもたぬ生きものたちを代弁する立場に立つものです。
 さて、この大いなる転換期にあたり、4年間の市政指導を志す皆様に、僭越ですが私たちの視点から質問をさし上げ、ご抱負をお聞かせいただきたいと思います。緊急の折、ご多忙と存じますが、お答えをいただければ幸いです。
敬具




   三番瀬に関する「公開質問状」
1.三番瀬をラムサール登録湿地に指定することについては賛成ですか。反対ですか。
  その理由もおきかせ下さい。

2.京葉港二期地区計画中の船橋側11ヘクタールを港湾拡張などのため埋め立てる計画
  はやめる、または、埋め立てた方がよいか、またその理由をお答え下さい。

3.第二東京湾岸道路についてはどうお考えになりますか。次から選んで下さい。

  * 必要性がないと思う
  * 必要性があると思う
  * 慎重に再検討する

 必要とお考えの方は次の項目にお答え下さい。
  ・ 高架がよい
  ・ 地下がよい
  ・ その理由

 不必要、または慎重に検討すると答えた方は次の項目にお答え下さい。
                       (いくつ選んでも可)
  ・ 交通体系全体を見直す
  ・ 公害が問題
  ・ まちづくりに支障をきたす
  ・ いずれにしても三番瀬の環境を破壊する
  ・ 財政上支障をきたす
  ・ その他の理由(具体的に)

4.たとえぱ上記の湾岸道路だけでも、高架の場合約4000億円、地下式の場合
  1兆4000億円という試算が出されています(千葉県試算による)。
  したがって、埋め立て事業は膨大な財政支出を伴うことになりますが、県
  の財政事情、国の財政事情を踏まえてこの公共事業をすすめることについ
  てどうお考えになりますか。

5.船橋は昔から漁業で栄えてきた町です。船橋の漁業についてどのように認
  識していますか。また、今後は漁業の発展をどのようにしたらよいかお考
  えをおきかせ下さい。

6.青潮について、原因についてはどうお考えですか。どのような対策が必要
  とお考えですか。うかがいます。

7.東京湾に残された三番瀬はこれ以上埋め立てず干潟として保全すべきだと
  私たちは考えています。あなたのご意見はいかがですか。
  あなたのお考えになっている保全の内容についておきかせ下さい。







4候補者の回答



●坪内弘行候補


1.三番瀬のラムサール登録湿地指定について

 賛成です。先月には私自身、環境省に行って登録を要請してきましたが、これからも各方面に働きかけていきたいと思っています。
 三番瀬は渡り鳥の中継地・餌湯としても、稚魚たちが育ち漁業を支えている海域としても、また東京湾の海水をきれいにする優れた浄化能力を持っている点でも、大きな能力を持っている貴重な浅瀬です。また、私はここ数年、三番瀬に初日を見に行っていますが、東京や埼玉などからも若者が集まり、もちろん、潮干狩りのシーズンには、ものすごい人出でにぎわいます。市民の憩いの場所にもなっている東京湾では残り少ない自然は絶対に守っていかなければならないと考えています。
 こうした三番瀬はラムサール条約で保全を呼びかけている干潟そのものだと思います。
 三番瀬をラムサール条約の登録湿地に指定し積極的に保全することは当然ですし、地元の自治体はそのための最大の努力をするべきです。


2.船橋側11ヘクタールの埋め立て計画について

 埋め立て計画はやめるべきです。
 この11ヘクタールの予定地にはスズカモなど魚類が多く生息し、魚類、底生生物の生息地でもあり、三番瀬の大事な構成部分です。湿地登録し保全すべきです。しかも、この港湾拡張という目的自体あいまいなもので、ここ数年、船橋港には3万トンクラスの大型船はほんの数隻しか来ていません。そのための埋め立てはやはり巨大な無駄遣いだと思いますので、埋め立てには反対です。


3.第2湾岸道路について

 O必要性がないと思う

(必要性がない理由など)
 〇交通体系全体を見直す
 ○公害が問題
 ○まちづくりに支障をきたす
 ○いずれにしても三番瀬の環境を破壊する
 ○財政上支障をきたす
 ○その他
 第2湾岸道路はもともと東京湾周辺の巨大開発を進めていくために考えられている「3環状9放射」の道路整備計画に沿って計画されているものですが、この計画自体が今の時代に合わなくなってきています。また第2湾岸道路の必要性について千葉県は、「東京と千葉の間の自動車交通量が今でも184万9千台オーバーしているのに、20年後はさらに13万7千台増えるので、新たな道路が必要」といっていますが、推計する上で鉄道など公共交通の整備がまったく考慮されていないことや、市民の「脱車社会」への志向なども無視しています。さらに、少子化による人口減や経済成長の低下など社会状況も変化しています。千葉県の言う必要性に説得力はありません。したがって、第2湾岸道路が必要だということを前提にルートや構造を検討するのでなく、必要性そのものをもっと吟味する必要があると思います。


4.県・国の財政事情をふまえてこの公共事業を進めることについて

 前項の質問にお答えしたとおり、第2湾岸道路計画そのものの必要性も問われています。
 必要がないのに莫大な建設費を投じるようなことがあってはなりません。


5.船橋の漁業について

 漁業は船橋の重要な産業であり、保護・育成につとめ、若い後継者が希望を持って漁業に従事できるようにしたいと思います。
 船橋の漁業は、東京湾にながれこむ河川の汚染、東京湾横断道路の建設、河川流域の保水機能の低下による雨水の大量流入などさまざまな環境悪化により、漁獲高が落ちています。特に三番瀬周辺は過去の埋め立てのための海砂採取の穴などの影響で青潮が発生し、毎年のように漁業被害が出ています。
 豊かな漁場を再生するため、東京港全体の環境改善に東京湾に臨む自治体として積極的に取り組むことや青潮対策に本格的に取り組む必要があります。また、船橋の大事な産業として保護策も必要だと考えますし、内容については漁協組合など関係者と話し合い決めていきたいと思います。
 ラムサール条約に登録する上で環境保全と漁業の関係について、環境省が多少懸念を持っているようですが、三番瀬は昔から漁業と生物が共存共栄してきました。基本的には矛盾しないし、自然環境の回復につとめることで一層、三番瀬のはたす役割が大きくなると思います。


6.青潮について

 青潮の発生は海水の富栄養化や過去に行った埋め立て事業のための海砂を採取した跡の穴が原因だと言われており、対策としては河川の汚染防止や海砂をとった穴を埋め戻すことが必要だと思います。ただ、埋め戻すことについては、すでに生物が生息している状況もあるので、緩やかな対応も必要だと思います。いずれにしても、きちんと専門家に対策を検討してもらい実行するべきです。


7.三番瀬をこれ以上埋め立てず干潟として保全することについて

 私も同感です。船橋市民が生活しているこんなに近くにすばらしい自然が残されているのですから、この自然を保全し、市民共有の財産として活かしていくことこそ必要だと思います。
 どのように保全していくかについては、時間をかけて干潟の会のみなさんをはじめとした専門家の方々や市民のみなさんから意見を聞き、研究・検針していく必要があると思います。そして、三番瀬に市民が気軽にふれあえ、自然を満喫できるような場所になればいいと思います。そのときに、三番瀬は市川側の泥の部分と船橋側の砂の部分があってはじめて多様な生態系を生み出しているのですから、市川市とも協力して、市民が三番瀬全体を一体のものとして感じられるような工夫をしていきたいと思います。さらに谷津干潟も加えて、全体の大きなまとまりも作れたらもっといいと考えています。







●田久保しょうぞう候補


1.三番瀬のラムサール登録湿地指定について

 賛成します。
 人間のわがままや、勝手で数少なくなってしまった大自然を守る意味あいからも、現在の行政手法では何らの対策も出来ない事から、世界的事業であるラムサール登録湿地に指定する事は多少消極的であるが、必要条件と思います。公用水面が指定されるかどうかの疑問がありますが、これから努力してゆきます。


2.船橋側11ヘクタールの埋め立て計画について

 埋め立ては無い方が良い。
 自然をこれ以上破壊しないで、人間が暮らす方法を見出すべきであり、アクアラインに代表される海の上の巨大インフラがことごとく失敗をしている例を見ても、この11ヘクタールの埋め立ては、人間の我のままの為の無駄な財産になりかねない。


3.第2湾岸道路について

 必要性がない。
 高速自動道路が二本並列で同方向に走る例を世界にもあまり例がなく、行政の先見性の無い事を証明している。現在使用されている東京湾岸道路、及びその周辺において高架・地下方式を検討すべきであると思います。


4.県・国の財政事情をふまえてこの公共事業を進めることについて

 再検討すべき。


5.船橋の漁業について

 最近では、山が海を豊かにするということはすでに常識です。船橋においても、海老川上流の里山や谷津田を守り、再生して山の緑を取り戻してきれいな水を海に流して、魚や貝が自生出来る海にする事が漁業を守るための最初の手段です。


6.青潮について

   海底に沈殿したヘドロが原因で大量のプランクトンが発生し、海中の酸素が多量に消費される事から起こる酸素不足が原因であります。この対策にはいくつかの方法がありますが、根本的には河川から流れ込む、家庭排水をはじめ雑排水がヘドロを生む原因です。排水を海に流す前にいかにして浄化するかが対策の最大の必要な事であります。


7.三番瀬をこれ以上埋め立てず干潟として保全することについて

 当然、保全はすべきであります。  保全より再生の道へ進むには、三番瀬単独では将来的に困難な面が出て来ますので、千葉市の稲毛、幕張地区から、三番瀬、浦安まで砂浜を延長し干潟を拡大する対策を取る事を考えていく必要がある。






●古閑雅之(こがまさゆき)候補


1.三番瀬のラムサール登録湿地指定について

 ラムサール条約登録は、自然環境保護 (1)物質循環と浄化機能、(2)海生生物、(3)鳥類、などを考えると絶対に必要です。


2.船橋側11ヘクタールの埋め立て計画について

 谷津干潟のように、コンクリートに閉じこめられた哀れな姿での登録にならないよう、どんな理由があろうとも埋め立てはやめさせ、世界に恥じない湿地登録域にしましょう。


3.第2湾岸道路について

 O必要性がないと思う

(必要性がない理由など)
 ○その他
 第2湾岸道路建設=公共事業=失業対策事業ではないか、と考えられませんか。経済の活性化に欠かせない部分でしょうが、希少な自然を破壊してまで造る必要はないと考えます。


4.県・国の財政事情をふまえてこの公共事業を進めることについて

 金銭の多寡の問題ではないと考えます。三番瀬の希少価値の問題ですから比較考量することはできません。自ずと地下式に結論は導かれると思います。


5.船橋の漁業について

 魚介類の水揚げは激減し、漁業だけでは生計を立てるのに困難であると聴き及んでおります。養殖漁業の振興をはかり、若い後継者の育成に力をそそぎたいと考えます。


6.青潮について

 青潮水の発生源としては、船橋航路ならびに周辺浚渫(しゅんせつ)跡窪地の底層水と言われていますので、海水の鉛直的な循環対策が必要と考えております。


7.三番瀬をこれ以上埋め立てず干潟として保全することについて

 同感です。コンクリートの人工護岸は景観的にも、住民利用面でも、生物の生息環境としても劣悪ですから、東京湾本来の海岸構造に近づけることを住民とともにすすめることを考えています。







●ふじしろ孝七候補


1.三番瀬のラムサール登録湿地指定について

 賛成です。三番瀬は地球環境全体の中でも大切な役割を担っていると考えています。こうした考えに立って、船橋市では今年4月にラムサール条約登録を視野にいれ、関係する市川市、浦安市に呼びかけて「三番瀬保全再生連絡協議会」を設置し、現在協議を行っています。今後も、漁業関係者等と連携しながら取り組みます。


2.船橋側11ヘクタールの埋め立て計画について

 船橋市では、平成11年6月に、従来の方針を転換し、「可能な限り保全をしていただきたい」旨の要望書を県に提出し、その結果、船橋前は従来の270ヘクタールから11ヘクタールに大幅縮小されました。現在の案については、緑地の確保等から評価しています。なお、県が仮に現状案について白紙撤回をされる場合は、市としても対応します。


3.第2湾岸道路について
4.県・国の財政事情をふまえてこの公共事業を進めることについて

 質問3、4については、第二湾岸道路は、通過車両が大量に流入する船橋の交通渋滞緩和策から考えることも必要です。国・県の事業であり、今後の計画案がどのように示されるかによって対応していきます。


5.船橋の漁業について

 船橋の漁業は歴史があり、現在も大勢の方が従事しておられます。漁協の皆さんも漁業資源回復など懸命に努力を続けられており、市としても大切に振興を図るべきであると考えています。これまでも県に対しいろいろな要望を出しながら取り組んできましたが、今後も、漁場整備等について漁協の方々などの意見を伺いながら、発展に向け努力を続けていきます。


6.青潮について

 これまでの港湾整備での浚渫等、様々な要因があると考えます。青潮は漁業関係者だけでなく自然そのものにも大きなダメージを与えていることから、現在、埋め戻し等その対策について県との協議を進めており、これらを着実におこなっていきます。


7.三番瀬をこれ以上埋め立てず干潟として保全することについて

 船橋、市川、浦安3市による「三番瀬保全再生連絡協議会」の中で十分に検討し、保全に向けた取り組みを行います。










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