環境調整検討委員会委員にたいし、

  千葉北部漁場修復協議会の報告に

  関する意見書を提出

    〜県内の自然保護5団体〜




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 三番瀬埋め立て計画案は現在、環境調整検討委員会で審議中です。
 こうしたなか、「千葉北部漁場修復協議会」は、「千葉北部地区漁場の修復に係る検討」という名の報告書を作成し、市川市や県、環境庁などに提出しました。また、同じ内容のビデオもつくり、ケーブルテレビなどで放映しています。同協議会は、市川市行徳漁協と南行徳漁協が発足したもので、両漁協の役員と学識者で構成されます。
 報告書は、三番瀬(市川二期地区)埋め立て計画案で埋め立て地先に造成する13.2ヘクタールの人工海浜(干潟)では「海水の停滞域が解消できず、漁場の大幅な改善につながらない」とし、干潟の規模を約100ヘクタールに拡大する「望ましい水際線」を提案しています。
 これに対し、埋め立てに反対している自然保護団体は、この提案は猫実川河口域の生態的な役割をまったく無視するなど、問題が多い、としています。
 こうしたことから、県内の5つの自然保護団体は11月21日、埋め立て計画案を審議中の環境調整検討委員会委員にたいして、同報告書に関する意見書を提出しました。
 報告書の概要と意見書の内容は以下のとおりです。


 

千葉北部漁場修復協議会による報告の概要



   報告書とビデオは、結論として、市川二期地区埋め立て計画地90ヘクタールの前面(海側)に造成するとされる13.2ヘクタールの人工干潟を含む土地利用計画では、「海水の停滞域が解消できず、漁場の大幅な改善につながらない」として、干潟の規模を約100ヘクタールに拡大する「望ましい水際線案」を提案しています。
 報告書とビデオはまず、三番瀬の地形、市川塩浜地区の直立護岸の老朽化、猫実川河口の腐食泥などをあげ、ノリ、貝類漁業とも岸側漁場がほとんど生産性を喪失していると説明しています。そして、それは地形に起因する構造的な問題とし、海流のシミュレーション結果を提示しています。
 シミュレーションは、漂流物に見たてた約1万個の仮想粒子を使い、3日間、海水交換の状況を調査したとのことです。その結果、現状では浦安から塩浜地区の護岸沿いに粒子が長時間滞留するとしています。また、県の案どおりに埋め立てが実現した場合でも、埋立地東北端の塩浜護岸に粒子が一部滞留し、「海水交換の大幅な改善に結びつかない」としています。
 一方、「望ましい水際線案」では、停滞域が完全に解消し、沿岸の潮の流れも全体的に速くなり、この結果、漁場の改善が予測されると主張しています。そして、浦安−塩浜地区を結ぶ緩やかな水際線をつくるため、90ヘクタール埋め立て地の前面に、緩やかな傾斜を持つ人工干潟約100ヘクタールを造成することが必要としています。
 また、これにより、「パブリック・アクセス」や野鳥の飛来場が創設され、「人と環境の調和」が期待できる、と結んでいます。










自然保護5団体による意見書



2000年11月21日

環境調整検討委員会
  委員長  白鳥孝治 様
  各   委   員   様

千葉の干潟を守る会
三番瀬を守る署名ネットワーク
三番瀬を守る会
市川緑の市民フォーラム
千葉県自然保護連合


千葉北部漁場修復協議会の報告に関する意見書

 皆様におかれましては、三番瀬の埋め立て計画に関して慎重に検討を重ねていただき、誠にありがとうございます。
 さて、行徳漁業協同組合、南行徳漁業協同組合、学識者等が千葉北部漁場修復検討委員会を結成し、「千葉北部地区漁場の修復に係る検討」を報告書とVTRにまとめていますが、ご覧になりましたでしょうか。
 私たちは、この報告書とVTRを検討した結果、三番瀬埋め立て計画に関する検討経過や補足調査、および環境調整検討委員会における審議内容から考えたときに、下記のような問題点があることがわかりました。皆様もお気づきになられたこととは思いますが、これらの問題点についてご配慮のうえ、委員会の審議を行ってくださるよう要望いたします。


 問題点
  1.  報告書およびVTR(以下、「報告」という)は、アサリ漁および海苔漁から見た漁場環境に限定して「海水の交換」を促進すべきと述べ、そのために必要な「理想的な水際線」を検討しています。
     しかし、三番瀬埋め立て計画が慎重に審議されるようになったのは、埋め立て地に計画されている土地利用の必要性と、埋め立てが三番瀬の生態系におよぼす影響が懸念されたからです。  このことを考えたとき、アサリ漁と海苔漁にとって良い漁場とするために他への影響を全く考慮せずに100haもの人工干潟の造成を肯定するこの報告書は、今までの三番瀬埋め立て計画に関する議論から論点が大きくずれてしまっています。

  2.  上記1にもあるとおり、「報告」は、アサリ漁と海苔漁の立場から「海水の交換」が必要であるという大前提で論じているために、補足調査の結果から分かってきた「猫実川河口域の生態的な役割」(水質浄化機能や三番瀬の稚仔魚の成長の場、スズガモを中心とする渡り鳥の餌場・休息の場など)を全く無視しています。
      環境調整検討委員会でも確認されているように、猫実川河口域はさらに悪化しつつある海域ではなく、その環境は安定しており、泥質の海域だからといって、それをなくすべきものではありません。

  3.  三番瀬で問題なのは、埋め立てにともなう土砂採取や航路浚渫により、かつて干潟と浅場であったところに深い部分ができて、その深みに停滞している海水が無酸素水になることです。しかし、「報告」が問題にしている表面海水は、常に大気に触れ、酸素が十分に含まれる海水です。この表面海水が交換しにくいことがアサリ漁や海苔漁を衰退させている直接的な原因であるかどうかの検証は、全くなされていません。

  4.  人工干潟が成功していない例には枚挙に暇がないことは、すでに何度も述べていることです。船橋海浜公園前面の人工干潟が一見成功しているように見えるのは、以前に掘った航路を埋めただけであり、その先に広大な三番瀬の浅瀬と干潟があったからです。
     100haもの人工干潟の造成は、自然の干潟や浅瀬をつぶす結果、干潟の生物生産力を低下させます。また、造成用の砂は市川航路の拡幅によって確保するとされていますが、これは青潮の発生源を拡大するものであり、新たな環境破壊を生み出すことになります。さらに、過去の埋め立てにともなう土砂採取跡が人工干潟造成地の前面にあるために、砂が徐々に深みに流れ落ちてしまうリスクがあります。こうしたことから、自然の干潟と浅瀬が残る三番瀬を埋め立てて実施すべきものではありません。

  5.  「報告」は、この「理想の水際線」が市民と親しめる海を実現するためにも重要であるかのように述べています。しかし、「パブリック・アクセス」については、いろいろな形態があってよいと考えます。たとえば、船橋海浜公園前のような場所は潮干狩りができ、かつての東京湾を思い起こすことのできる貴重な景観を有していますが、他の部分もすべてその景観を実現すべきかどうかは慎重な議論が必要です。
     一番大切なのは、三番瀬の生態系をこれ以上傷つけないことを前提にした「パブリック・アクセス」の確立です。したがって、できるかぎり、ヨシ原から砂浜、そして干潟と続くのが理想的な姿ですが、そうすることがかえって三番瀬の生態系に大きな影響を与えてしまうと考えられる場合には、部分的に直立護岸が残ってしまってもよいのではないでしょうか。その場合でも、階段をつくりさえすれば干潟や浅場に出られますし、釣り人にはかえってその方が都合がよいかもしれません。これも「パブリック・アクセス」の一つの方法です。また、場合によって、階段護岸や橋で干潟と陸域をつなぐという方法も検討に値すると考えます。




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