山場を迎えた三番瀬円卓会議

〜11月13日に三番瀬再生計画案を決定〜

千葉県自然保護連合事務局



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 三番瀬再生計画検討会議(円卓会議)は最終段階を迎えています。11月13日開催の第19回円卓会議で最終案を決定し、パブリックコメントを求めることになっています。
 その最大の対立点は、円卓会議の発足時とおなじく、猫実川河口域(市川側の海域)を保護するのか、それとも砂を投入して人工干潟を造成するのか、です。


●ついに“禁じ手”が使われた

 なんとしてでも猫実川河口域の人工干潟化を自然再生事業として実現させたい一部の専門家委員は、ついに“禁じ手”を使ってきました。禁じ手というのはこうです。
  1.  出席者の少ない専門家会議(9人中5人の出席)で、座長の磯部雅彦委員(東京大学大学院教授)が会議の終わり頃に「順応的管理による猫実川河口域の人工干潟化」を“座長のまとめ”として提案する。それを、円卓会議(親会議)に「座長のまとめ」として報告することを了承させる。
  2.  磯部委員が第17回円卓会議に「専門家会議の開催結果」を報告する。そのなかに、上記の内容を「磯部座長のまとめ」として含める。この報告を聞いた委員は、いつものとおりの報告だと思い、報告=合意だとは思っていないので、誰も異論をはさまない〈注〉。しかし、磯部委員らは、だれも異論をださなかったことをもって「合意」扱いとする。
    〈注〉 じつは、円卓会議(親会議)では、専門家会議のほかに、海域小委員会、護岸・陸域小委員会、再生制度検討小委員会のそれぞれの小委員会の開催報告もされる。こうした報告は1時間以上かけておこなわれる。じつに親会議の3分の2以上の時間は、こうした報告に費やされる。そのため、専門家会議の報告内容などについて、時間をさいて十分に議論することはできない。

  3. 親会議、各小委員会、専門家会議、各ワーキンググループなどの会議資料に「市川塩浜2丁目の護岸イメージ図(案)」を添付しつづける。この図は、海域(猫実川河口域)に張り出した傾斜護岸をつくり、その前に砂浜をつくるというものである。大浜清委員(千葉の干潟を守る会代表)などがこの図についてクレームをつけると、倉阪秀史委員(千葉大学助教授)はきまって「これはあくまでも参考図だ」「議論のたたき台にすぎない」とかわす。
  4. そしてある日突然、「猫実川河口域での順応的管理による人工干潟造成は、すでに円卓会議で合意されている」「市川塩浜2丁目の護岸イメージ図(案)も合意されている」と強行する。


●単なる報告事項を「合意」として扱う

 磯部委員や倉阪委員は、上記4の強行をついに10月17日の第17回「護岸・陸域小委員会」で実行しました。この小委員会では、まず、岩田博武委員が猫実川河口域で人工干潟をつくることの重要性を強調しました。
「三番瀬再生のカギは、波(潮)の流れを良くすることだ。そのためには、行徳漁協などが提案しているように、猫実川河口域に大規模な人工干潟をつくり、海岸線をなめらかにすることが必要だ」
 これに対し、磯部雅彦委員がこう答えました。
「岩田委員や漁協が言っていることは理解できる。そこで、専門家会議でこの点を議論し、つぎのようにまとめた。(1)猫実川河口域は生き物がいるので保全するに値する。(2)しかし、昔に比べると干潟がなくなっているので、夏になると酸化還元電位の値が下がる。貧酸素域にもなる。したがって、ベストな環境ではない。(3)だからといって、いっぺんに浅くすると三番瀬の環境に影響がでる。Cそこで、順応的管理の手法により少しずつ土砂をいれていくことにする。それをつづけることによって、干潟化が進む。このように浅くすれば、酸素も供給される」


●再検討を求める意見を強引に抑えつける

 こうしたやりとりの段階では、だれもそれが円卓会議で合意になったとは思っていません。
 しかし、市川塩浜護岸を傾斜護岸に改修し、そのまえに砂を投入するということを再生計画の素案に盛り込むということになってはじめて、齋藤佐和子委員が異論をだしました。やりとりはこうです。

◇齋藤佐和子委員(公募、一般県民)
  「(海域に)砂を入れるというのは書かないほうがいいのではない。砂を入れればいい面もあるが危険性も予想されるので、この砂のところは全然抜かしたほうがいいのではないか。海域小委員会でも議論されるということなので、もう少しきちんとはっきりとした結論なり意見が出てから改めて考えるということでよいのではないか」

◇倉阪秀史委員(千葉大学助教授)
 「市川塩浜護岸の前面に砂を1対3の割合で入れてみるという話については、この護岸・陸域小委員会でも円卓会議でも一応了解されている。砂を入れること自体については一定の合意は得られていると考える」

◇齋藤佐和子委員
 「これまでの議論にほとんど参加し、ずっと考えてきた。しかし、私の勉強不足でちょっと抜けていたところがあった。合意するかどうかというところでもっとはっきり言えばよかったのだが、砂を入れるということについて、必ずしもいい点ばかりではないのではないかということを遅まきながら考えついた。だから、少し遅すぎたかもしれないが、もう一度考えていただきたい」
 「私が理解できないということは市民も理解できないと思う」

◇大浜清委員(千葉の干潟を守る会代表)
 「護岸の絵が出たときにも私は発言したが、どうしてこんなに海に張り出すのかという問題がある。その影響の検討を海域小委員会に任せた。それなのに、ここで決まったからと言うのは早計ではないか」
 「護岸をどれほど海に張り出すかということは海域小委員会で検討すべきことである」

◇倉阪秀史委員(千葉大学助教授)
 「この問題は円卓会議ですでに了解されている。それなのに、もともとの合意事項にまでさかのぼって議論するというのは、私には理解できない」

◇齋藤佐和子委員
 「本当はその時点で私がちゃんと理解し、反対意見や質問を出せばよかった。しかし、理解が遅いのでいまごろ気がついた。砂を入れるということは危険性をともない、必ずしもいい点ばかりではないということを遅れて気がついた。それをさかのぼって言うのは、時間の無駄づかいであるし、民主主義のルールに反するかもしれない。しかし、気がついたのが遅すぎたということを前提にし、もう一度考えてほしい」

◇倉阪秀史委員(千葉大学助教授)
 「そのように必ずしもいいことばかりではないので、アセスメントをして慎重にやっていくという文章になっている」

◇齋藤佐和子委員
 「では、さらにお願いするが、非常に幼稚な頭でも理解できるように、もう少しくわしくその点を書いていただきたい」

◇大浜清委員(千葉の干潟を守る会代表)
 「齋藤さんがおっしゃることは大切な問題なので、慎重にお願いしたい」

◇倉阪秀史委員(千葉大学助教授)
 「確認すると、18ページの図(市川塩浜2丁目の護岸イメージ)について、やはり再考したほうがいいということなのか。私は、これについては円卓会議ですでに決定されていたと思う」

◇伝田和幸委員(公募、一般県民)
 「齋藤委員は、あまりこの場で進行を妨げないようにしてもらいたい。これだけの時間、これだけの人数、そして1回の会議開催でたぶん100万円とかのカネが使われている。それを理解していただきたい」

◇岡本孝夫委員(護岸・陸域小委員会コーディーネーター、浦安市自治会連合会会長)
 「みなさんの意見をもっと聞きたいし、会場(傍聴者)からの意見も聞きたいところだが、この会場を出なければならない状況になったので、これで終わりにしたい」


●合意の事実はない

 砂を入れることや、市川塩浜護岸の前面海域に「さらし場」(砂浜)をつくるという護岸イメージ図が円卓会議で合意されたというのはまったくの大ウソです。円卓会議の議事録を読めばわかるように、合意されたという事実はありません。この点については議論もまったくされていないのです。また、海域小委員会でも了承されていません。これは明らかな事実です。
 それなのに、唐突に「合意」されたと扱うのです。そこで、牛野くみ子さんが、「合意などされていない。もし合意されたというのなら、いつ、どこで合意されたのかをハッキリさせてほしい」と質問しようとしました。しかし、「きょうは時間がない」ということで傍聴者の発言はいっさいなしです。


●はじめに結論ありき

 円卓会議はこんな状態になっています。小委員会やワーキンググループなどが15ぐらいできていて、会議が連日のように開催されています。そこでは、旧江戸川の水を三番瀬に導入することや、行徳鳥獣保護区と三番瀬との水の行き来などが真剣に議論されています。
 しかし、一部専門家委員らの目的は、いかにして猫実川河口域の人工干潟化を再生計画に盛り込むかです。要するに“はじめに結論ありき”です。


●どこでなにが議論され、なにが合意されているのかわからない

 このところ、連日のように会議が開かれます。その会議も30分や1時間の延長は当たり前です。そのため、委員は疲れ切っています。それに乗じて、たんなる報告や参考イメージ図がいつのまにか「合意」にされてしまいます。単なる報告事項だと思って黙っていると、いつのまにか「合意」にされてしまうのです。
 委員の大部分は出席する会合が限られているので、どこでなにが議論され、なにが合意されているのかまったくわからない状態です。それを確認するために議事録を読もうと思っても、議事録が公開されるのは1か月たってからです。まったく役にたちません。


●再生計画案を検討し、対応を決定

 例えば、ルポライターの永尾俊彦さんは、三番瀬円卓会議の「完全公開」などを評価したうえで、新たな埋め立て(人工干潟の造成)が決まることを懸念していました。
「千葉県は12月現在、三番瀬の再生計画策定のための検討組織のあり方を公開の場で議論している。この点の民主性は先進的だ。ただ、その先進的な検討組織で『先進的』埋め立てが結論されないよう願っている」(『グローバルネット』2001年12月号)
「大勢としては現状の自然の干潟の一部をつぶして人工干潟を造成することを主張する委員が多く、『自然再生事業』としてあらたな埋め立てが行われかねないような状況だ」(『週刊金曜日』2002年7月26日号)
 残念ながら、永尾さんの懸念が現実味をおびてきました。11月13日に決定される計画案には、猫実川河口域の人工干潟化が盛り込まれる可能性があります。
 当連合などは、計画案を検討し、ただちに意見書提出などにとりくむ予定です。埋め立て反対運動をつづけてきた「三番瀬を守る署名ネットワーク」は11月15日(土)に対策会議を開き、方針をきめることにしています。

(2003年10月)







海域に張り出して傾斜堤と砂浜をつくる「市川塩浜2丁目の護岸イメージ(案)」
三番瀬円卓会議の議事録より







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