三番瀬問題のウラにあるもの

 〜公共土木事業は“金のなる木”〜

公共事業と環境を考える会


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 「三番瀬を守る署名ネットワーク」の定例総会が(2008年)2月23日に開かれました。
 同ネットワークは、「三番瀬埋め立て計画撤回を求める署名」を30万以上集め、2001年9月の埋め立て白紙撤回に大きな影響を与えました。いまは三番瀬のラムサール条約早期登録を求める署名活動に力を入れています。

 総会では、ラムサール登録に向けた運動の進め方や三番瀬再生事業への対応などが議論の中心になりました。
 参加者からこんな発言がありました。


■ラムサール登録先送りのウラに第二湾岸道路あり
  〜県が水面下で検討していること〜

     「三番瀬のラムサール登録運動を進めるうえでは、登録を阻んでいるのは何か、ということをしっかりみることが必要だ。それは、県が第二湾岸道路を三番瀬に通そうとしているからだ。いまラムサールに登録されると、道路がつくれなくなる。だから、登録は「時期尚早」としている。堂本知事が1月29日にラムサール登録申請先送りを表明したのも、そこに起因する。」

     「第二湾岸道路のルートだが、船橋側は後背地(埋め立て地)に変更することが決まったと聞いている。しかし、浦安市の埋め立て地に確保されている第二湾岸用地は変更不可能なので、三番瀬の猫実川河口域はどうしても通さざるをえない。」

     「その方法だが、まず、三番瀬再生という名目で猫実川河口域を人工干潟にする。これは埋め立てと同じだ。その造成の際に、沈埋(ちんまい)方式(=ボックスカルバート方式)で道路を埋め込む──というものだ。この方針はほぼ固まっているといわれている。」

     「この方針でネックとなっていることの一つは、人工干潟造成に使う土砂をどこからもってくるかということだ。山砂を運び入れるのはなかなか難しい状況がある。そこで、市川航路の浚渫土砂を使うことが検討されている。これは問題ない。」

     「しかし、航路浚渫だけでは土砂が足りない。そこで今、海老(えび)川河口のヘドロを使ったらどうかという提案もされていると聞く。船橋市内を流れ、三番瀬に流れ込む海老川の河口は、ものすごい量のヘドロが溜まっている。そのヘドロを改良して猫実川河口域の人工干潟造成に使えば、一石二鳥になるというものだ。」

     「ヘドロを改良しての有効活用は、すでに他県で取り組まれている。また、国立環境研究所の委託で、浚渫ヘドロを用いた人工湿地の研究もされているようだ。」

     「水面下では、そんな検討が着々と進められている。だから、『第二湾岸道路は構想段階にあり、具体的にはなんら進んでいない』などという県の言い分にだまされてはならない。」

 以上です。


■人工干潟造成は砂の確保がネック

 補足すると、県(企業庁)がつくった人工海浜「幕張の浜」の場合、その造成や補給に使った砂は山砂でした。
 しかし、浸食による砂の流出が激しいため、毎年のように砂を補給しました。
 1987年から1999年まで9万9300トンの砂を補給しつづけました。その間の整地費は6億8900万円です。

 たとえば、1994年だけでも、約9400立方メートルの山砂が約40キロ離れた大栄町から運び込まれました。『朝日新聞』(千葉版、1995年1月12日)によれば、「毎日ダンプカー20〜30台でピストン輸送し、半月かかった」とのことです。

 しかし、「永遠に不毛の作業を繰り返さざるを得ない」(同紙)ことから、県はついに2000年に砂補給をやめてしまいました。これに伴って海水浴も禁止です。砂の流出はその後も続き、「幕張の浜」はいま、ものすごい段差ができています。

 こういう事例があるので、県は、大量の山砂を猫実川河口域に運び入れるのは困難とみています。といっても、航路浚渫土だけではまったく不足です。

 たとえば、「財団法人 港湾空間高度化環境研究センター」と「独立行政法人 港湾空港技術研究所」(ともに国土交通省港湾局の外郭団体)が2006年11月15日に開いた国際シンポジウム「豊かで美しい東京湾をめざして」では、パネルディスカッションでこんな討論が交わされました(同シンポの講演録より)。
     「干潟の再生には、再生に使う砂が必要になってくると思うのですが、それは問題ないんですか。」

     「砂もありません。我々のところで干潟の再生事業、東京湾の中でもやっています。それは東京湾の湾口は、入口が浅いものですから、大型船を通すために、その部分を掘っています。その掘ったところが非常にいい砂が出てくるものですから、その砂を例えば浦安の沖に入れて、干潟をつくる。浅場をつくるということをやっています。ただ、砂は非常に限られています。」(難波喬司・国土交通省関東地方整備局港湾空港部長)
 このように、人工干潟の造成は、それに用いる砂の確保が一つの大きなネックとなっているのです。
 そこで、ヘドロの使用なども模索されています。

 国交省は三河湾(愛知県)の人工干潟造成に鉄鋼スラグを使用することを実験中です。おそらく、三番瀬でも鉄鋼スラグの使用が検討課題にのぼるはずです。


■県の目的はあくまでも第二湾岸道路

 ちなみに、県にとっては、人工干潟(人工海浜)造成そのものが目的ではありません。あくまでも第二湾岸道路です。

 ですから、いったんつくってしまえば、その後に人工干潟がどうなろうがどうでもいいことです。

 人工海浜造成(=埋め立て)で三番瀬の生態系が大打撃を受けても、あるいは砂流出が続いて人工海浜として機能しなくても、さらには鉄鋼スラグ使用などで海洋汚染が生じても、そんなことは知ったことではないです。


■「公共事業は、いつまでもだらだらとやってるのがいちばんいい」

 この点では、東京湾アクアライン(横断道路)の関係者が、「公共事業というものは、いつまでもだらだらとやってるのがいちばんいいんです」と語ったことを思い出します。
     「公共事業というものは、いつまでもだらだらとやってるのがいちばんいいんです。道路ができたら、今度はその関連施設の建設・保守。さらに新たな建設計画を立てる。で、そうこうしているうちに、道路の一部を補修しなければいけなくなったり、新たに拡幅したり、なんていうことになればいうことないわけです。川崎と木更津を結んで何かが変わるというのならね、どんどん結べばいいんですよ。いや、いっそのこと全部埋め立てればいいんじゃないですか、東京湾を(笑)。いや、冗談じゃなくてね。そのぐらいのレベルになれば大きく経済効果が表れますけど、はっきりいって、道路一本造って何かが変わるなんてのは、机上の論理じゃないですか。レインボーブリッジができたって、首都高速は全然スムーズじゃないでしょ。ま、個人的意見ということにしといてください」(東京湾横断道路株式会社・公共側元関係者のコメント。『別冊宝島276号 実録!日本沈没』宝島社)
 千葉県は、いまも大型道路建設促進を県政の最優先課題としています。また、一般の人がみれば、わけのわからないような「三番瀬再生事業」の推進に躍起となっています。
 それは、日本を牛耳っている政財官にとって公共事業が「おいしい“金のなる木”」になっているからです。
 この点をしっかり見据えないと、今の日本の政治や行政は理解できないと思います。国会の焦点となっている道路特定財源問題の本質も、です。

(2008年2月)












堂本知事が三番瀬のラムサール登録申請を拒否しているのは、
三番瀬に第二湾岸道路を通したいから、と見られています。
「再生」という名で猫実川河口域の人工干潟化をめざしているのも、
それが理由です。人工干潟造成の際に沈埋(ちんまい)方式で
道路を埋め込む、というのが県の考えと言われています。







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