マスコミ露出を競い合う知事たち

 〜「東国原知事に負けるな!」が合言葉〜

公共事業と環境を考える会


トップページにもどります
「主張・報告」にもどります
「第二湾岸道路と三番瀬」にもどります


 「ラムサール登録申請見送り表明のワケ」でこんなことを書きました。
  • 堂本知事が三番瀬のラムサール早期登録を否定するのは、第二湾岸道路をなんとしてでも三番瀬に通したいからである。
  • 知事が第二湾岸道路建設に躍起となっているのは、権力(知事)の座にすわり続けたいから、と言われている。
  • 全国の知事で利権政治にナタを振るったのは、田中康夫・前長野県知事だけである。



■道路建設こそ“ザ・自民党政治”の象徴

 利権の最たるものは道路です。「道路建設こそ、“ザ・自民党政治”の象徴」(『週刊文春』2月7日号)だからです。
 したがって、不要不急の道路計画にメスを入れられるかどうかが、知事の資質や姿勢を問うリトマス試験紙になると思っています。
 しかし残念ながら、ムダな道路にメスを入れられる知事は、現時点では一人もいないようです。
 たとえば、各種世論調査で支持率が90%台と異常な高さを保持している東国原・宮崎県知事です。東国原知事は“改革派知事”ともよばれています。


■官僚の言いなりで「ガラガラ道路」建設を推進

 東国原知事が「ガラガラ高速道路」建設を推進していることについては、横田一氏(ジャーナリスト)が、写真週刊誌『フライデー』(2008年2月15日号)で次のように記しています。文のタイトルは、《無駄な税金の使い方こそ「どげんかせんといかん」ハズ/ガソリン値下げ反対 東国原知事が推進する「ガラガラ高速道路」》です。
    《(与野党激突の“ガソリン国会”で)劣勢の自民党にとって「最大の応援団」というべき存在が、東国原英夫宮崎県知事だ。番組で暫定税率維持を何度も訴えたり、道路関連集会に出席して推進論をぶってもいる。テレビ露出度ダントツの“改革派知事”がなぜ、道路建設派の片棒を担ぐのか。》

    《民意を見極めようとしない東国原知事のもう一つの問題は、役人の言いなりということだ。知事が建設賛成の「東九州自動車道」(福岡県北九州市〜鹿児島県加治木町)について問うた時、「道路官僚の代弁者」という正体が見えてきたのだ。
     ──ミカン畑の真ん中を東九州自動車道が通る路線があって、その農家が畑を通らないルートの建設費を試算すると半額以下だった。ルートの見直しをする予定はないのか。
    「(ルート選定は)国交省の担当だと思います。自治体として『ここからコースを変えてくれ』ということは言えないこと。(路線は)最短距離で、ベストな所を通っているという説明を受けています」
     東国原知事の方針は、国交省の敷いたレールから外れるつもりはないということだ。これでは、無駄な道路建設計画に大ナタを振るうことは期待できない。》
 また、『日刊ゲンダイ』(2008年2月20日号)もこう記しています。
    《これだけ特定財源の無駄が明らかになっているのに、「(通路を造らないと)地方は生活できない」という“脅し”説法。で、東国原が猛烈に肩入れしているのが東九州自動車道と九州横断道路の建設だ。
    「東九州自動車道(北九州市−鹿児島県加治木町)はほぼ並行して国道用号が走る宮崎では無駄な道路と言わざるを得ません。しかも、東九州自動車道は1キロ70億円もかかり、このルートを山側にずらせば、コストが半分以下で済む部分もある。専門家の試算もあるのに、東国原知事は聞く耳を持とうとしない。九州横断道は、小泉政権時代に検討対象にすらならずに建設中止になった区問です。九州にはすでに東西をつなぐ高速道路が2本もある。それなのに3本自を造り、山をぶち抜くトンネル工事をするのです。東国原知事は建設促進協議会の会長です」(ジャーナリスト・横田一氏)
     東国原は会見で、県民はガソりン値下げよりも高速通路建設を望んでいるみたいな言い方をしていたがそれを裏付けるデータはない。いい加減を絵に描いたような男だ。》
 ご覧のように、東国原知事も堂本知事と姿勢がまったく同じです。利権にはまったく手を付けようとしません。ムダな公共事業を積極推進です。


■知事であることをネタにする“知事芸人”

 その一方で、保守勢力が反対しない観光キャンペーンにものすごい力を入れています。テレビの露出度も断トツです。
 「地元の記者の間では、知事であることをネタにする“知事芸人”になったと揶揄(やゆ)されている」(『週刊文春』2008年2月7日号)とのことです。

 東国原知事については、こんな指摘もされています。
    《宮崎県内の企業トップの一人は東国原知事の1年について「宮崎の存在感をアピールするセールスマンとしては大成功」と評価しながらも「財政基盤が弱く、新施策を打ち出そうにも動きがとれない」と語る。
     5000億円強の一般会計規模に対して起債残高は9000億円を上回る県財政。コストダウン、効率化を進めながら職員のモラールをあげられるか。公約の企業誘致を含めて県の経済を立て直せるのか。 徴兵制発言や過疎対策としての一夫多妻制導入などの珍案も1年目はおわびや冗談半分ですんだ。地域の再生、財政立て直しが進まないまんまだと、支持率急落に直結する可能性を知事本人がいちばん知っている。》(「東国原知事 就任1年」『日本経済新聞』2008.1.19)

    《東国原英夫・宮崎県知事をテレビで見ることは珍しくない。これほどテレビに出ていて、公務を十分にはたせているのだろうかと思うほどである。
     テレビに出て宮崎の宣伝をすることも、たしかに公務なのかもしれない(地元の生産物を宣伝することだけが知事の仕事ではないが)。テレビで県政に対する見解を述べたり、宮崎県産物を宣伝するのであれば理解できないことはないが、バラエティ番組にしばしば出演していることは理解に苦しむ。首長としての仕事よりも、タレントとしての活動を優先しているとしか思えない。多くの話題を提供しているが、県政で具体的成果を上げたという話を私は開いたことがない。タレントが知事の仕事をしているのではなく、知事がタレントの仕事をしているのであり、「タレント知事」ではなく「知事タレント」と呼ぶべきだろう。》(『週刊金曜日』2008.1.18の投稿記事)


■徴兵制や一夫多妻制導入も提起
  〜それでも高支持率を保持〜

 ムダな公共事業を推進するばかりでなく、徴兵制や一夫多妻制の導入をあけすけに言う人物がなぜ90%台の高支持率を保持しているのでしょうか。まったく不思議です。
 以前は考えられなかった現象が日本中で起きています。

 香山リカ氏が次のように述べていることに納得です。
    《日本人は、「劣化」しているのではないか。それも全世代、全階層、全分野にわたって。しかも、急速に。》(『なぜ日本人は劣化したか』講談社現代新書)


■「東国原知事に負けるな!」

 ムダな公共事業を推進して借金をいくら増やしても、マスコミがひんぱんにとりあげれば県民から支持される。保守勢力との対立も回避できる。そして、権力(知事)の座も安泰──。というわけで、マスコミがとりあげてくれそうなキャンペーンやイベントに全国の知事が力を入れています。
    《岩手県の達増拓也知事は16日、都内で女性タレントを伴い観光キャンペーンを実施した。平泉一帯が今年、世界遺産に登録される可能性が大きいことから「東国原知事に負けるなと県民にハッパをかけられた」と話す。“東国原現象”は各地の知事を刺激する。》
 堂本知事も、今年の県庁御用始め式で、広報にもっと力を入れるようハッパをかけました。「東国原知事の宮崎県に負けるな!」ということです。
    《県の幹部職員に訓示する堂本知事 県庁で4日午前、御用始め式が行われ、和服姿の堂本知事が幹部職員約180人を前に「地方自治を確立し、愛され誇れる千葉県づくりに向けて努力してほしい」などと訓示した。(中略)
     特に広報体制に関しては「千葉の方が良くやっていても、評価や賞は(広報が)大変上手な県に行ってしまう。これでは職員もやりがいが感じられない」などと現状に苦言を呈した。》(『読売新聞』千葉版、2008.1.5)


■目白押しのイベントも一皮剥けば…

 千葉県はいま、「ちばデスティネーションキャンペーン」という名の観光キャンペーンに力をいれています。人気バンド「ドリーム・カム・トゥルー」にキャンペーンソングを歌わせたりして、です。

 環境問題を話し合う「G20グレンイーグルズ閣僚級対話」が幕張メッセ(千葉市)で3月に開かれることから、これに向けたイベントも目白押しです。「レジ袋削減検討会議」(1月28日初会合)、「さかなクンと考える地球温暖化」(1月28日開催)、「三番瀬再生国際フォーラム」(1月29日開催)などです。

 しかし、これらのイベントはマスコミにとりあげてもらうことが目的のようにみえます。中身や効果はどうでもいいということです。

 たとえば、「三番瀬再生国際フォーラム」では、パネリストや参加者から三番瀬のラムサール登録を求める意見が次々とだされました。

 新聞も、こんな見出しを掲げています。

 「ラムサール条約登録を/三番瀬フォーラム意見相次ぐ」(『読売新聞』千葉版、1月30日)
 「国際フォーラムに400人/ラムサール条約登録求める声相次ぐ」(『東京新聞』千葉版、同)
 「三番瀬 ラムサール登録へ国際フォーラム」(『千葉日報』、同)

 しかし、堂本知事はこの日、三番瀬のラムサール登録申請見送りを表明しました(『朝日新聞』2008.1.30)。フォーラムの議論内容はまったく無視です。

 温暖化防止策としての県庁生協売店レジ袋有料化にしても、「レジ袋削減よりもはるかに効果の高い自動販売機削減なども推進すべき」という関係者の意見をまったく無視です。
 その理由は、「自販機削減は業界や政治家が反対するからむずかしい」とのことだそうです。


■自然環境破壊も止まらず、日本は疲弊するばかり

 ご覧のとおりです。
 要するに、自民党や業界(財界)が反対するものは手を付けない。借金はいくら増えてもかまわない。話題性のある理念的なものとか抽象的なことしかやらない──ということです。

 全国の知事がこんな調子で行政運営を進めたら、財政危機の進行に歯止めをかけることなど不可能です。ムダな公共事業も推進ですから、自然環境の破壊も止まりません。日本は疲弊するばかりです。
 情けない限りです。

(2008年2月)











★関連ページ

このページの頭に戻ります
前ページに戻ります
「第二湾岸道路と三番瀬」のページに戻ります

トップページ | 概 要 | ニュース | 主張・報告 | 資 料 |
干潟を守る会 | 自然保護連合 | リンク集 |