青潮の発生源である航路浚渫土の三番瀬投入は犯罪的行為だ
三番瀬を守る連絡会(2025年8月)
航路に堆積したヘドロを人工干潟予定地に投入
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市川市は2025年の6月から7月にかけて人工干潟造成予定地で事前覆砂を実施しました。航路(市川市塩浜1丁目地先の航路=澪)に堆積した真っ黒いヘドロを人工干潟造成予定地の浅瀬に投入したため、現地はものすごい悪臭でした。
これは、三番瀬再生計画や、長年にわたる三番瀬再生事業を台無しにするものであり、暴挙です。

市川市は、砂の定着度を調べる事前覆砂として、航路に堆積した真っ黒いヘドロをパイプを通して
人工干潟造成予定地に投入した。現地はものすごい悪臭だった=6月13日、市川市塩浜2丁目護岸で
県が実施した「三番瀬補足調査」では、市川市が事前覆砂用の土砂として浚渫した航路は青潮発生源の可能性が高いとされていました。
県は1996年から3年間、約6億4000万円の費用をかけて「三番瀬補足調査」(市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る補足調査)を実施しました。その結果概要にはこんなことが書かれています。
市川市が委託した調査でも、この浚渫土から有害物質やダイオキシンが検出されています。市は、航路に堆積した有害物質混じりの土砂を数十年ぶりに浚渫し、それを人工干潟造成の事前覆砂に用いたのです。
*三番瀬の自然環境や漁業で最大の問題は青潮
青潮は三番瀬の自然環境や漁業に甚大な被害をおよぼしています。
青潮発生のしくみや青潮による被害についてはこんな説明がされています。
航路に堆積した貧酸素水塊混じりの土砂を浚渫して三番瀬の浅瀬に投入することは三番瀬の保全・再生に逆行です。
*航路も青潮の発生源
東京湾の青潮は、硫化物を含む無酸素化した底層水の湧昇によって発生するとされています。発生場所は湾奥中央域や浚渫窪地、航路です。このことは千葉県水産総合研究センターの研究報告でも明らかにされています。
航路に堆積した貧酸素水塊も青潮の発生源となっています。そのような貧酸素水塊を浚渫して三番瀬の浅瀬に投入することは三番瀬漁業にも大きな影響をおよぼします。
青潮の発生源である航路浚渫土を三番瀬の浅瀬に投入することは犯罪的行為です。
*「幕張の浜」は砂補給を中止。海水浴、水遊びも禁止
県が造成した人工海浜「幕張の浜」は惨たんたる状況になっています。砂をいくら補給しても浸食が続くからです。
「幕張の浜」の砂補給と整地に要した費用は、1979〜2001年度の23年間で45億8000万円に上ります。それでも浸食が止まらないため、県はとうとう砂補給を中止しました。人身事故を防ぐため、海水浴や水浴びも禁止しました。
浸食によって砂がえぐり取られ、高さ2mを超える崖ができている箇所もあります。

千葉市美浜区の人工海浜「幕張の浜」は波浪によって砂浜が大きくえぐられ、高さ2m超の崖ができている。砂をいくら補給して
も侵食がつづくため、千葉県はとうとう砂の補給を中止した。人身事故を防ぐため、海水浴や水遊びも禁止した=2024年1月15日撮影

「幕張の浜」の砂補給と整地に要した費用は、1979〜2001年度の23年間で45億8000万円

*市川市塩浜地区の護岸改修費は39億円
市が市川市塩浜2丁目の護岸前で造成する人工干潟も浸食される可能性が大です。ところが市川市の担当部署(行徳支所)はこう述べました。
市川市はそのような事実を知らないようです。いい加減なことをその場しのぎで答えています。

*塩浜地区を埋め立てたのは市川市だ
田中甲市川市長は、人工干潟造成の目的についてこう強調しています。「人間が破壊した自然環境を私たちが取り戻します」。 しかし、埋め立てによって市川市行徳地区の干潟や浅瀬を破壊し、市民から海を奪ったのは市川市です。
かつて、行徳地区の海岸は新浜(しんはま)と呼ばれ、広大な干潟や浅瀬が広がっていました。国内最大級の野鳥の生息地でした。ところが、その干潟や浅瀬を市川市が埋め立てました。「新浜を守る会」の反対を押し切ってです。
市川市が強行した埋め立ての名称は「市川地区土地造成事業」。埋め立て面積は195ha。現在の塩浜1丁目から4丁目です。着手は1969年4月。埋め立て免許は千葉県が取得しましたが、実際の埋め立ては市川市がおこないました。造成後の埋め立て地は、県が必要とする公共用地(湾岸道路用地など)を除いて市川市が取得し、市が分譲しました。
千葉県と市川市が1969年4月9日に締結した「市川地区土地造成事業および分譲に関する協定書」の第1条にはこう記されています。
ようするに、行徳地先に広がっていた自然の干潟や浅瀬の大部分は市川市が埋め立てたということです。
ちなみに、2025年6月1日の『朝日新聞』(千葉版)は、市川市の人工干潟計画を積極的に後押しする記事を載せました。市の詭弁を垂れ流しです。「現在のJR市川塩浜駅付近から同公園の一帯は、県の埋め立て事業で整備された」と記しています。これは史実と違います。
市川市が三番瀬を埋め立てる前(1965年)の地形図

市川市が自然の干潟・浅瀬を埋め立てた区域

千葉県企業庁発行『千葉県企業庁事業のあゆみ』(1987年)から
*県が砂付け試験で用いた砂は、航路浚渫土ではなく君津の山砂だった
市川市は、人工干潟造成計画を説明する「塩浜親水事業パネル展」において、千葉県が塩浜1丁目と2丁目護岸の境の隅角部で実施した砂付け試験についてこう記しています。
市川市はこうした経過や事実を隠し、県が砂付け試験で用いた土砂も航路の浚渫土であったかのように印象づけています。

*「政治生命」ではぐらかす
山崎雅弘さんは『詭弁社会─日本を蝕(むしば)む“怪物”の正体』(祥伝社新書)でこう書きました。
昨年(2024年)5月の記者会見で「人工干潟が失敗したらどうするのか」という質問がだされました。田中市長はこう答えました。
*根性論で強行
環境省の野生生物課は市川市の人工干潟計画についてこう述べました。
市川市は根性論で人工干潟造成を強行しようとしています。威勢ばかりでカラッポなところは、戦争中の「一億玉砕」とそっくりではないでしょうか。
*現実を見ようとしない
幅100m×奥行き50mの人工干潟をつくれば三番瀬の自然環境や漁場環境を再生できるというのは幻想です。実際に県は、漁場での覆砂やアマモ場の再生植、エアレーション(エアーパイプを使って海中に酸素を送りこむ作業)など、三番瀬再生事業を約20年間進めていますが、三番瀬の自然環境や漁場環境は思うように再生できません。
ようするに、自然は人間の思いどおりにはならないということです。田中市長や行徳支所はそういう事実を知ろうとせず、その場しのぎの答弁を繰り返しています。
千葉県三番瀬再生計画(基本計画)は三番瀬再生の目標として5点を掲げています。
市川市は人工干潟造成計画を直ちに中止するよう求めます。
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人工干潟造成予定地に投入した。現地はものすごい悪臭だった=6月13日、市川市塩浜2丁目護岸で
県が実施した「三番瀬補足調査」では、市川市が事前覆砂用の土砂として浚渫した航路は青潮発生源の可能性が高いとされていました。
県は1996年から3年間、約6億4000万円の費用をかけて「三番瀬補足調査」(市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る補足調査)を実施しました。その結果概要にはこんなことが書かれています。
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《局所的な青潮については、海岸地形が複雑になっているため上記の航路や窪地のほかに、市川市地先の船通しの澪筋等が発生起源となっている可能性がある》(13ページ)
市川市が委託した調査でも、この浚渫土から有害物質やダイオキシンが検出されています。市は、航路に堆積した有害物質混じりの土砂を数十年ぶりに浚渫し、それを人工干潟造成の事前覆砂に用いたのです。
三番瀬の保全・再生に逆行
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*三番瀬の自然環境や漁業で最大の問題は青潮
青潮は三番瀬の自然環境や漁業に甚大な被害をおよぼしています。
青潮発生のしくみや青潮による被害についてはこんな説明がされています。
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《三番瀬の海域の環境変化の中でももっとも大きな問題が、青潮の発生とそれによる底生生物や魚類への影響です。青潮は、夏場の塩分濃度や水温の違いによる成層によって、浚渫窪地等に酸素の少ない貧酸素水塊が形成され、それが北寄りの風の反流によって三番瀬に湧き出して起こる現象であり、無酸素状態が継続することにより底生生物や魚類に甚大な影響を与え、干潟・浅海域の持つ浄化能力をさらに減少させます。》(三番瀬再生計画検討会議『三番瀬再生計画案』)
《海底の深いところ(航路や窪地)に酸素が少ない水域(貧酸素水域)ができ、硫化物イオンや硫化水素が発生。それが表面に移動する際に海が青くなる。2014年8月末に広範囲に発生し、船橋産のアサリ3880トンが死滅。》(船橋市環境保全課水質・地質係「きれいな川と海を目指して」)
航路に堆積した貧酸素水塊混じりの土砂を浚渫して三番瀬の浅瀬に投入することは三番瀬の保全・再生に逆行です。
*航路も青潮の発生源
東京湾の青潮は、硫化物を含む無酸素化した底層水の湧昇によって発生するとされています。発生場所は湾奥中央域や浚渫窪地、航路です。このことは千葉県水産総合研究センターの研究報告でも明らかにされています。
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《東京湾では、赤潮の発生が1907年以降に確認されており、1940年代前半までの発生回数は年間2回以下程度であったが、1950年代以降に大きく増加した(野村 1998)。この赤潮の増加に伴い、内湾北部では貧酸素水塊の発生が見られるようになった。貧酸素水塊は毎年4、5月頃に発生し、8月から9月に最大規模を示した後11、12月に消滅する(梶山・宇都2016)。この経過の中で、北東を中心とする離岸風の連吹があると、湾奥から北東部沿岸に貧酸素水塊が湧昇し青潮が発生する(柿野ら 1987)。
この青潮の発生機構については多くの報告が見られ、丸茂・横田(2012)が既往知見の整理を行っており、風呂田(1987)は、湾奥中央域や浚渫窪地及び航路で発生した硫化物を含む無酸素化した底層水の湧昇により青潮が発生することを示し、佐々木(1997、2007)は、大規模な青潮の場合には湾奥の平場(内湾北部沖合の海底が平たんな場所)起源の水塊の影響が大きいことを明らかにしている。》(梶山誠「東京湾における青潮の発生と漁業被害の状況」、『千葉県水産総合研究センター研究報告』2019年3月)
航路に堆積した貧酸素水塊も青潮の発生源となっています。そのような貧酸素水塊を浚渫して三番瀬の浅瀬に投入することは三番瀬漁業にも大きな影響をおよぼします。
青潮の発生源である航路浚渫土を三番瀬の浅瀬に投入することは犯罪的行為です。
人工海浜「幕張の浜」は惨たんたる状況
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*「幕張の浜」は砂補給を中止。海水浴、水遊びも禁止
県が造成した人工海浜「幕張の浜」は惨たんたる状況になっています。砂をいくら補給しても浸食が続くからです。
「幕張の浜」の砂補給と整地に要した費用は、1979〜2001年度の23年間で45億8000万円に上ります。それでも浸食が止まらないため、県はとうとう砂補給を中止しました。人身事故を防ぐため、海水浴や水浴びも禁止しました。
浸食によって砂がえぐり取られ、高さ2mを超える崖ができている箇所もあります。

千葉市美浜区の人工海浜「幕張の浜」は波浪によって砂浜が大きくえぐられ、高さ2m超の崖ができている。砂をいくら補給して
も侵食がつづくため、千葉県はとうとう砂の補給を中止した。人身事故を防ぐため、海水浴や水遊びも禁止した=2024年1月15日撮影

人身事故が危惧されるため、千葉県は「幕張の浜」での遊泳や水浴びを禁止した=同上

*市川市塩浜地区の護岸改修費は39億円
市が市川市塩浜2丁目の護岸前で造成する人工干潟も浸食される可能性が大です。ところが市川市の担当部署(行徳支所)はこう述べました。
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「塩浜2丁目の護岸前は幕張の浜と向きが違うので大丈夫だ」
市川市はそのような事実を知らないようです。いい加減なことをその場しのぎで答えています。

千葉県は市川市塩浜地区の護岸護岸を改修する際、「台風や高潮が襲来すれば浸食の恐れがある」とし、
2004年度以降、約39億円の巨費を投じて頑丈な石積み護岸を建設した=改修後の塩浜2丁目護岸
詭弁を弄する市川市
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*塩浜地区を埋め立てたのは市川市だ
田中甲市川市長は、人工干潟造成の目的についてこう強調しています。「人間が破壊した自然環境を私たちが取り戻します」。 しかし、埋め立てによって市川市行徳地区の干潟や浅瀬を破壊し、市民から海を奪ったのは市川市です。
かつて、行徳地区の海岸は新浜(しんはま)と呼ばれ、広大な干潟や浅瀬が広がっていました。国内最大級の野鳥の生息地でした。ところが、その干潟や浅瀬を市川市が埋め立てました。「新浜を守る会」の反対を押し切ってです。
市川市が強行した埋め立ての名称は「市川地区土地造成事業」。埋め立て面積は195ha。現在の塩浜1丁目から4丁目です。着手は1969年4月。埋め立て免許は千葉県が取得しましたが、実際の埋め立ては市川市がおこないました。造成後の埋め立て地は、県が必要とする公共用地(湾岸道路用地など)を除いて市川市が取得し、市が分譲しました。
千葉県と市川市が1969年4月9日に締結した「市川地区土地造成事業および分譲に関する協定書」の第1条にはこう記されています。
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《甲(千葉県)は市川地区土地造成事業について、別添「市川地区土地造成事業委託計画書」に定める全事業を乙(市川市)に委託する。》
ようするに、行徳地先に広がっていた自然の干潟や浅瀬の大部分は市川市が埋め立てたということです。
ちなみに、2025年6月1日の『朝日新聞』(千葉版)は、市川市の人工干潟計画を積極的に後押しする記事を載せました。市の詭弁を垂れ流しです。「現在のJR市川塩浜駅付近から同公園の一帯は、県の埋め立て事業で整備された」と記しています。これは史実と違います。

市川市が自然の干潟・浅瀬を埋め立てた区域

千葉県企業庁発行『千葉県企業庁事業のあゆみ』(1987年)から
*県が砂付け試験で用いた砂は、航路浚渫土ではなく君津の山砂だった
市川市は、人工干潟造成計画を説明する「塩浜親水事業パネル展」において、千葉県が塩浜1丁目と2丁目護岸の境の隅角部で実施した砂付け試験についてこう記しています。
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《その場所にはアサリなどの二枚貝の生息が確認されました。砂底や水たまりにはヤドカリ類などの甲 殻類やゴカイ類、ハゼ等の魚類を確認しました。》
市川市はこうした経過や事実を隠し、県が砂付け試験で用いた土砂も航路の浚渫土であったかのように印象づけています。

千葉県が塩浜1丁目護岸と2丁目護岸の境で実施した砂付け試験。
試験に用いた砂は、航路の浚渫土ではなく君津地域の山砂だった
*「政治生命」ではぐらかす
山崎雅弘さんは『詭弁社会─日本を蝕(むしば)む“怪物”の正体』(祥伝社新書)でこう書きました。
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《いま日本の社会には、二匹の怪物がうろついています。一匹は「ウソ」、もう一匹は「詭弁」です。国会議員や高級官僚などの立派な肩書を持つ大人の態度を幼稚な子どものそれに変えてしまう不思議な力をこの二匹の怪物は持っています。》
昨年(2024年)5月の記者会見で「人工干潟が失敗したらどうするのか」という質問がだされました。田中市長はこう答えました。
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「人工干潟造成に政治生命をかけている。反対なら市長選で対立候補として出ていただきたい」。
*根性論で強行
環境省の野生生物課は市川市の人工干潟計画についてこう述べました。
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「人工干潟造成の必要性は理解できない」「人工干潟の成功例は把握していない」「人工干潟をつくることよりも、いま残っている干潟や浅瀬を保護することのほうが大事だ」。
市川市は根性論で人工干潟造成を強行しようとしています。威勢ばかりでカラッポなところは、戦争中の「一億玉砕」とそっくりではないでしょうか。
*現実を見ようとしない
幅100m×奥行き50mの人工干潟をつくれば三番瀬の自然環境や漁場環境を再生できるというのは幻想です。実際に県は、漁場での覆砂やアマモ場の再生植、エアレーション(エアーパイプを使って海中に酸素を送りこむ作業)など、三番瀬再生事業を約20年間進めていますが、三番瀬の自然環境や漁場環境は思うように再生できません。
ようするに、自然は人間の思いどおりにはならないということです。田中市長や行徳支所はそういう事実を知ろうとせず、その場しのぎの答弁を繰り返しています。
人工干潟計画の中止を求めます
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千葉県三番瀬再生計画(基本計画)は三番瀬再生の目標として5点を掲げています。
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(1)生物多様性の回復
(2)海と陸との連続性の回復
(3)環境の持続性及び回復力の確保
(4)漁場の生産力の回復
(5)人と自然とのふれあいの確保
市川市は人工干潟造成計画を直ちに中止するよう求めます。
★関連ページ
- 市川市の人工干潟計画 何が問題か
- 人工干潟計画中止を要請〜市川市長へ 三番瀬7団体(2024/8/19)
- 市川市の人工干潟計画はノー〜BS-TBS「噂の!東京マガジン」で訴え(2024/7/14)
- 人工干潟造成計画に批判相次ぐ〜千葉県主催の三番瀬ミーティング(2023/11/25)
- 市川市長選候補者が「三番瀬」公開アンケートに回答〜市川三番瀬を守る会が実施(2022/3/24)
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