危うし三番瀬!(2)

古井利哉



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 三番瀬問題については、前回、円卓会議でまとめられた再生計画案がどのようなものであり、堂本知事や県がその後どのようにこの問題に対処してきたかを述べてきました。
 あらためて簡単に要点を示しますと、次のようになります。
  1. 2年の歳月と3億円を費やした「円卓会議」が04年1月に三番瀬再生計画案を堂本知事に提出したが、この計画案の目玉とも言うべき「再生計画条例」について堂本知事は全くやる気がなく「任期中に県議会に諮ることはしない」と断言した。
  2. 再生計画の具体化を検討すべく、円卓会議の後継組織がただちに発足する予定であったが、県はなかなか腰を上げようとせず、環境団体の強い要望などに押されて、半年以上経過した8月末にようやく「三番瀬再生会議準備会」が開催された。
  3. 8月と9月に開催された「三番瀬再生会議準備会」では、県当局の作成した再生計画先発事業が提案されたが、その内容は三番瀬の再生とは直接関係のない「塩浜護岸改修工事」「市川漁港の整備」など単なる公共工事に過ぎないものであった。
  4. 「三番瀬再生会議」の位置づけも単なる知事の諮問機関に過ぎないことが明らかとなり、計画事業については県当局が部門別(縦割り)にそれぞれの検討委員会を立ち上げて、ここで具体的に詰めていくことが明らかとなった。
  5. ラムサール条約への2005年登録について環境庁が三番瀬をノミネートし、また円卓会議の再生計画案の中で早急に登録を目指すと謳っているに関わらず、県の計画案ではまったくネグられており、登録に反対する漁業関係者は再生会議準備会に出席することすら拒否している状態である。
 以上が昨年10月までの三番瀬をめぐる動向であり、三番瀬問題は本来の目的であった「保全と再生」から大きく逸脱し、防災のための護岸工事や漁港の移転新設といった公共工事に流れが移ってしまったことをお伝えした次第です。
 今回は、三番瀬をめぐるその後の動向をお伝えしつつ、本問題の行く先を考察してみたいと思います。


(1)ようやく開催された「三番瀬再生会議」

 昨年12月27日にようやく第1回「三番瀬再生会議」が開催された。
 そこでは、会議の所管事務は「知事の諮問に対して答申をし、三番瀬再生にかかる事項について意見を述べる」とされ、有力専門家委員の意見「知事の諮問を受けて意見を述べるだけに限定し、県が行う事業に対して意見を述べたり、議会で予算化された事業に口をはさむべきではない」が声高に叫ばれた。
 つまり「再生会議」には何の権限もなく、知事の諮問に応じて答申したり、知事や県当局の説明に対して意見を述べるだけであり、しかもそれは何の拘束力も持たないことが明らかとなった。


(2)着々と進む事業計画

 (1)の再生会議が開かれる3日前の12月24日に「三番瀬漁場再生検討委員会」が開催された。
 これは三番瀬再生計画の具体的内容を部門別に検討する検討委員会のひとつであり、漁業関係者、海洋・漁業専門家などで構成されている。
 当日の会議では、漁協委員が「三番瀬は瀕死の状態にある」と声高に叫び、早急な対策を求めた。
 この会議は今年の5月をめどに漁場再生の具体的事業目標を策定することになっているが、10人の委員のうち7人は人工砂浜の造成を求めている面々であり、遅かれ早かれ、さきに円卓会議に提案した漁協案「100ヘクタール規模の人工砂浜を猫実川河口域に造成する」を提言するものと思われる。


(3)第二湾岸道路は?

 堂本知事は第二湾岸道路を積極的に推進すると断言しており、「三番瀬に影響を与えないで……」と説明している。
 しかし三番瀬に設定せざるを得ないジャンクションは、県の青写真によるとその規模は「高さ65m(25階建てビル程度)、面積で21万平方メートル以上」(県企業庁の説明)が想定されており、三番瀬に壊滅的な破壊をもたらすことは歴然としている。


(4)三番瀬再生とは名ばかりの単なる縦割り公共事業

 さきに、三番瀬再生とはまったく関係のない公共事業「塩浜護岸改修工事」「市川漁港移転整備」が担当部門ごと(縦割り)に着々と進められていることを述べた。
 このような状況に危機感を抱いた千葉県自然保護連合など7団体は昨年11月11日に堂本知事あてに「事業計画は三番瀬再生会議で十分慎重審議せよ!」「再生会議で議論・検討しないまま調査事業など行わないこと。」「ラムサール条約登録を優先事業に加えること」などを要望書として提出した。
 これに対して主管者「三番瀬再生推進室」は、「三番瀬再生事業はそれぞれの関係部局が推進するので、三番瀬再生推進室は調整しかできない。個別の要望は関係部局に言ってほしい」と逃げた。
 これが三番瀬再生事業に対する県の対応の本質であり、知事直属の推進室には何の権限もないことが明らかとなったのである。


(5)ラムサール条約は?

 第1回三番瀬再生会議で県は平成16年度として次の5項目を報告した。
  • 三番瀬漁場再生調査事業
  • 市川海岸塩浜地先護岸改修に係る調査
  • 三番瀬の「自然環境の科学的な情報の集積事業」
  • 環境学習および利用・管理に関する検討
  • 市民参加による現地調査事業
 これを見ても明らかなように、ここにはラムサール条約のラの字も見当たらない。
 環境庁が05年ラムサール条約登録候補地として三番瀬をノミネートし、県の要請を待つばかりであるに拘わらず、また円卓会議の再生案で早急に手がけるべきアクションプランの1に掲げたにもかかわらず、この始末である。
 県は漁業関係者の反対を理由にこの問題を先送りしてきたが、漁業関係者への働きかけはまったく行っておらず、むしろラムサール条約登録が当面の「塩浜地先の人工砂浜造成」や将来の「第二湾岸道路」に支障をきたすことを懸念して、漁業者の反対を隠れ蓑にしているように思われてならないのである。

◇           ◇

 以上ざっと昨年10月以降の三番瀬をめぐる動向を概観してみましたが、事態は急速に悪化の一途をたどっていると言っても過言ではありません。
 2年の歳月と3億円を費やし、市民参加で開催された「円卓会議」の提言「三番瀬再生計画案」は堂本知事と県当局により完全に無視され、己に都合の良い部分のみが採用されることとなりつつあります。
 各種再生事業計画は県が各担当部局に設置する「検討委員会」でその具体策を策定することになり、先に見たように「塩浜護岸工事」や「漁港移転」など公共事業は着々と進められることになりましたが、同じように先発事業計画に盛られた「自然環境調査」など3項目はつけたにしか見えません。
 「三番瀬再生会議」はこれら検討委員会で策定される具体的事業計画に対しては意見を述べるのみで、その意見はまったく拘束力を持たないことが明らかになっております。
 つまり「円卓会議」がかろうじて確保していた市民参加と、行政に対する拘束力は完全に骨抜きにされたと言わざるを得ず、「再生会議」はすでに形骸化してしまった観があります。

 さて、このような事態に対処する選択肢はそれほど多様であるとも思われません。
 海を愛し、自然環境保護に関心を持ち、三番瀬の名を一度でも聞いたことのある人々が、この問題について自問自答し、友人・知人と語り合い、一人ひとりができる範囲で行動を起こすことが求められているのではないでしょうか。

(2005年1月) 





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